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放課後デート_03

 半分、上の空の授業が終わり、昼休みにいつものように美術室へと向かう。  いつもと変わらない光景。だが、総一さんの笑顔はキラキラとして見えて、目を細めた。 「待っていたぞ」 「おう、どうも」  席に座りコンビニの袋を置く。  弁当を開くよりもさきに、 「秀次、モデルの件なんだが」  と話しだす。しょっぱなからそれか。身構える俺に、総一さんは笑う。 「今日からと言ったけれど、土曜か日曜、どちらか俺の為に時間をくれないか」 「別にかまわないけれど、ここで描くんじゃねぇの?」 「いや、家に来てほしい」  え、それって、部屋で二人きりってことかよっ。  総一さんは絵を描く為に俺を呼ぶのであって、別に変な意味ではない、よな? 「昼休みは時間が足りないし、秀次の事、他の部員に知られたくないし」  そう言われて、一気に冷めた。  あぁ、なんだ、そういうことか。昨日は俺のだと知らしめるとか言っていた癖に。  やっぱり俺みたいなやつがモデルとか、知られたくねぇよな。  勘違いな事を言う前に気が付けて良かった。恥ずかしい思いをするところだった。 「わかった」  落ち込むな。俯いた途端に、手の甲にポタリと雫が落ちて、あわててそれを拭い取る。  情けねぇなぁ。なんか、総一さんと出逢ってから泣き虫になった気がする。  総一さんの指が俺の顎をとらえて顔をあげられてしまう。 「不安になるような事を言ってしまったのか、俺は」 「べつに、なんでもねぇよ」  そっと頭を抱きしめ、よしよしと言いながら撫でてくれた。 「秀次、何が気になったんだ。話してくれないか」 「他の部員に知られたくないって」  それがすごく胸に刺さったんだ。 「勘違いさせたか。そういう意味じゃない」 「じゃぁ、どういう意味だよ」 「俺以外の奴に、ちやほやさせたくない」  なんだよそれ、恥ずかしいなっ! ぶわっと熱が一気に上がる。 「まったく、お前は可愛い奴だな」  とキスをされた。 「んぁ、そういちさん」  キスをしながら手が脇腹を撫で、腹筋へと触れる。  ちょ、それはっ。身体がぞくぞくして、このままじゃヤバい。 「やっぱりいい筋肉している」 「駄目だって」  胸を強く押すと、唇と手が離れた。  俺は自分自身を守るように身体を小さくしする。 「油断も隙もねぇ」 「好きな子にさわりたいと思うのは普通だろ」  そりゃ、わかる。でもさ、俺の気持ちがもたねぇよ。 「学校ではやめてほしい」 「我慢できたらな」  と言った口で頬にキスをした。マジで、手が早ぇ。 「我慢する気なんか、全然ねぇだろ」  俺の言葉に、総一さんが不敵に笑う。  くそ、勝てる気がしねぇ。  俺は悔しくて、総一さんの分厚い胸板に、パンチを一発くらさせた。

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