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友情か、それとも恋情か_02

 出会った時から俺は秀次を気になっていた。そして知るにつれて可愛いと思うようになった。  それは弟に感じるようなもの、そう思っていた。同性だからという理由で。  だけど違った。可愛がりたいのも、甘やかせたいのも、秀次が好きだからだった。  秀次がしてしまったこと、そして俺が秘密にしていたことを告げた日。  本当の意味で友達となった。だが、俺の方はその枠だけでは収まりきれなかっただけだ。  気持ちに素直になれば、答えなんて簡単にでるんだな。  はやく秀次に会いたいけれど、今日は少し来るのが遅い気がする。先生にでも呼び止められたのだろうか。  そわそわと気持ちが落ち着かず、あと少ししたら連絡をしてみようかと思っていた所に、秀次の姿が見える。  来たなと秀次を呼ぼうと口を開きかけて、そのまま止める。  視線の先にはもう一人。秀次よりも上背がある、あれは冬弥のようだ。しかも美術室の入口の所で二人は見つめ合っていた。  一気に血が上がる。  何故、二人が。俺は邪魔をするように、どうしたんだと声を掛けた。 「自動販売機の所で会ってな」  今日も女子と一緒に食堂へ行ったはずだよな。なのに自動販売機で出会う事があるのか?  本当は秀次を待ち伏せしていたんじゃ、俺にばれないように。  どうしてそんな事をする必要があるんだ。だいたい、冬弥は秀次をあまり良く思っていなかったじゃないか。  いや、違う、俺は何を考えているんだ。嫉妬にかられて、冬弥を悪者にしようとしていた。 「そうなんだ。冬弥も一緒に飯食う?」  もやもやとした気持ちを振り払い、冬弥に入れと席を指差すが、教室で食べるからと断られた。  そうかと残念そうに言いながらも、心の奥では安心していた。 「またな、田中」  秀次の肩へ触れ、その後に俺の方へちらりと目を向け、行ってしまった。  笑ってたな、冬弥の奴。心の奥底を見透かされた気分だ。 「随分と仲良くなったな」  仲良くなれたら良いと思ってはいたが、俺が居ない所でなるのは嫌だ。  それも見つめ合いながら名前を呼ぶとか、どういうわけだ。 「あ……、うん」  何か隠し事でもあるのか、そんな表情をしている。  二人の秘密とでも言いたいのか。 「見つめ合うほど仲良しになったんだなぁ」  俺が一番じゃなかったのか。それとも冬弥にも同じくらい気を許し始めたのか?  隠されると余計に胸がむかつく。 「大丈夫。総一さんが一番だから」  その言葉を聞いた途端、ハッとなり、目を瞬かせる。  現金な俺は、その言葉を聞いて胸のむかつきがなくなった。  秀次が俺の頭を撫でる。くすぐったいなと頭を振るうと、手が離れてしまう。 「わるい」 「嫌じゃない。もっと撫でてくれ」  首のあたりに顔をおしつけ、スンスンと鼻を鳴らす。  まるで犬みたいだなと、秀次が俺の頭を包み込むように抱いて撫でる。  その通りだな。犬は貴方に興味があるという時に匂いを嗅ぎに行くと、テレビで見たことがある。 「よい匂いだな」  フローラル系かな。優しく香るところが良い。 「あ……、香り付け専用ビーズの匂いじゃねぇかな」 「そうなんだ」  男臭いのが気になるのか。全然、嫌なにおいなどしないのに。  上はどんな匂いがするんだろう。鼻をくっつけながら、嗅ぎまわる。  耳のあたりはシャンプーの匂いだろうか、先ほどとは違う香りだ。 「ちょっと、総一さん」 「シャンプーは?」 「姉貴の……、んっ」  今、感じたのか? 「いい加減に」  もっと、聞きたい。秀次が欲しい。 「え?」  そう思った瞬間に、唇を奪っていた。

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