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友情か、それとも恋情か_05

 俺の想いは告げた。それに対しての返事はないが、断られてないのだ。それを前向きに考えよう。  一人の男として秀次に意識して貰えるように。 「そう言う訳で、早速、デートに誘おう」 「買い物には付き合って貰おうと考えていたが……」  デートとしてではなく、秀次と冬弥に一緒についてきてほしいと思っていた。 「お、そうなんだ」  じっと俺をみている。冬弥の目の前で送れと言いたいのか。  まぁ、イイか。デート気分で行くのも。 「わかった。ライン送るから」  文章を打ち込んで送信。すると返事が直ぐにくる。 「了解だって」 「良かったな。教室まで迎えに行ってやれよ」  きっと驚くぞと冬弥が口角をあげる。 「そうだろうな。あ、冬弥は画材店の前で待ってろ」 「は? 何言ってんの、デートだよ。俺は邪魔なだけじゃん」  嫌だよと本気で断られた。 「デートは画材店まで。今日は二人に付き合って貰おうと思っていたんだ」  美術部に復帰したのだから、スケッチブックばかりではなく、キャンバスに絵を描きたい。  だが、あの日の事を思いだすのではと、少し怖くもあり、俺を救ってくれた二人に勇気を貰いたい。 「どうしても?」 「あぁ。頼むよ」  理由は合流した後に話すからと言う。 「わかった。画材店の前で待ってる」  冬弥のそういう所は助かるよ。 「ありがとう」 「おう」  チャイムが鳴り、冬弥は席へと戻っていく。  どんなに浮かれていても授業になれば集中できた。  だが、今日は駄目だな。秀次の事で頭がいっぱいだから。  早く会いたい。俺を見て嬉しそうな顔をする姿を思浮かべ、口元が綻ぶ。  やばい、それでなくとも俺は目立つんだ。先生に見つかったら、何を言われる事か。教科書を見ているふりをして俯き、口元を隠した。  クラス担任の良い所はホームルームが短いというところだ。  大抵、俺らのクラスは一番に終わり、秀次を迎えに二年の教室がある、向かいの棟へとむかう。  途中で知り合いの下級生に声を掛けられ、軽く挨拶を交わしながら来たのだが、それでも秀次のクラスはホームルームの最中だった。 「先輩、二年の教室にくるなんて珍しいっすね」  同じ部活の男子が俺に声を掛けてくる。 「待ち合わせ」  と教室を指さす。 「あぁ。聞きましたよ、三芳先輩に」  彼女っすよねと、顔をにやけさせる。 「えっ、三芳の奴」  勝手に何を話しているんだ。 「彼女じゃない。友達」 「そうなんすか。てっきり彼女かと。なぁ」  同じく部員の彼女たちに男子が話を振る。 「私たちもそうだと思ってました」 「あ……、誤解だから」  彼女ではないし、告白の返事を貰っていない。まだ友達という関係でしかない。 「そうだったんですか」  何故か部員の子達がガッカリとする。そんなに恋バナが聞きたかったのか。  そうこうしている間に、秀次のクラスのホームルームは終わったようで、ざわざわとしはじめる。  出入り口に秀次の姿を見つけ、 「秀次」  と名を呼んで手を振るうと、俺が待っていた相手が気になったか、一斉に秀次の方へと顔を向けた。

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