50 / 72
気づかされること
彰正に昨日のお礼を言い、少し話をした。
それを面白くない目で見る、二人の目。それは少し前から気が付いていた。
そう、俺が彰正に話しかけたあの日からだ。
全て俺がしたことで自分達は関係ない、そんな態度をとってシカトしていたくせにな。
とうとう向こうから話しかけてきた。
「田中、調子に乗るなよ」
「あぁ? てめぇらに何か関係あるか」
俺が矢面に立てば、今まで通り、お前等は目立たなくて済むからな。
以前の俺は自分が目立つことばかり考えていたから、それで構わないと思っていた。
だけど、今は違う。そんな自分が馬鹿馬鹿しくて痛い。
「葉月にあんな真似してさ、その友達と仲良くなるとか、どんだけ図々しいんだよ、お前」
あぁ、これって、俺が葉月にした事のまんまじゃねぇか。随分と下らねぇことをしていたんだな。
気にくわないから食ってかかる、こいつらもあの時の俺と同じ気持ちなんだろう。
「俺に構うな」
以前の俺なら、何を言われても気にする事は無かった。鼻で笑いあしらっていただろう。
だが、今は違う。やられたら心が痛むのだと知ったから。
「俺らを巻き込んだように、また同じような事をするんじゃねぇの? なぁ、お前みたいのは友達を作る資格はねぇよ」
俺の肩を強く押し、二人は離れていく。
こんなに嫌な気持ちになるなんて。同じことをされて、やっときがついた。
嫌だったろうな、葉月。ただ気に入らないというだけで俺に嫌味を言われたり、喧嘩を吹っかけられたりしてきたのだから。
全てはなかったことになどできないのに。周りの人の優しさに俺は甘え過ぎていたんだ。
美術室へと行く気になれず、屋上へと向かう。何度もラインの通知音がなるが、俺は無視して目を閉じた。
ともだちにシェアしよう!