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君は俺のモノ_02

「大したことじゃねぇから。それよりも、部活は良いのか」  この話は俺にしたくはないようで、部活の話をして話題を打ち切ろうとするが、秀次が落ち込むような何かがあったというのに引き下がるつもりはない。 「話を聞いたら戻る」  だから素直に吐いてしまえと話を戻した。 「本当、たいしたことねぇし」 「そんな訳があるか」  また、強がる癖。どうして秀次はそうなんだよ。素直に俺の胸に飛び込んではくれないのか? 「もういい。帰る」  苛立ちを含んだ声だ。それでも、もういいという言葉で終わらせてはやれない。  腕を掴んで引き止めると、 「いいから、俺の事なんて放っておいてくれよ」  とその手を振り払われる。 「放っておけるか。そんな顔をしているのに」  いまにも泣き出しそうな顔をしている。 「強がるな。辛いときは辛いと言え。悲しいときは俺の胸をかすから頼れよ」  さきほど俺の背中をさすってくれたように、今度は俺が秀次を落ち着かせようと頭を撫でる。  するとかたかった表情がすこし和らいできた。 「総一さん……」  俺に手を伸ばしかけ、それを掴もうとしたが、手は止まり元の場所へと戻っていく。  何故だと秀次を見れば、 「ごめん、やっぱり大丈夫だから」  と俺から離れていく。 「秀次っ」  何も俺達の邪魔をするものなどないんだ。頼む、もう一度、俺の手を掴んでくれ。  だが、その願いは無残に打ち砕かれた。 「あのさ、俺、男の人と付き合うのは無理だから」  その言葉と共に、秀次は全てを終わりにしようとしている。 「恋人として無理でも、友達でいてくれ」  つなぎ止めておくために、そう言うけれど、 「ごめん」  拒否するよう俺から離れていく。 「秀次」  必死に名を呼ぶけれど、秀次は立ち止まらず走り去っていく。  何があったのか、理由を知らなければならない。そしてもう一度、話をしなければ。  そう思うのに足は動かず、椅子に座りこむ。  流石に混乱している。だって、意味が解らないだろ?  何かに落ち込んでいるようだった。理由を聞いてもこたえてはくれず、挙句の果てには付き合うのは無理と俺の前から去ってしまったのだから。  息を深く吸いこんで吐きだす。少しだけ頭が回ってきた。  納得できる理由を聞いていない。それで俺が諦めるとでも思っているのだろうか。  甘いな。俺という男の全てを知らぬ癖に。逃がしてなどやるつもりはない。   

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