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君は俺のモノ_03

 秀次は美術室へとこない。電話もメールも着信拒否されている。  教室へ乗り込もうとも思ったが、それはやめておきなさいと冬弥と三芳に止められた。  二人には秀次との間に起きた事を話してある。  美術室でお昼を一緒に食べていない事も、連絡が取れない事も、冬弥には直ぐにばれることだし、三芳には部活の事を頼んだのだから。  それで美術室に秀次ではなく、冬弥と三芳がいるようになった訳だ。 「橋沼君ってそういう事に慎重そうに見えて、暴走するタイプだったのね」  それは自分でも驚いている。今までそんな事は無かったのにな。 「それだけマジなんだろ、総一は」  今までだって本気だぞ、俺は。 「橋沼君がそんなになる相手って、どんな子なのよ」  教えてと冬弥に聞くが、駄目だと言って口を押えた。 「ちょっと、教えてくれてもいいじゃない」 「駄目」  秀次の事を聞いたら絶対に興味をもつだろうし、会いたいと言いかねない。 「やだ、独占欲かしら」 「そうだ」  素直に認めればしつこく聞いてはこないだろう。  思った通り、三芳はわかったわと引き下がる。 「なぁ、暫く待ってみろよ。冷静になれば秀次も考えがかわるかもしれない」  それも手かもしれない。だが、そのまま何も変わらなかったらどうする?  動かなかった事を後悔して過ごす事になる。 「焦るよね」  俺の気持ちに気づいたか、三芳の手が肩に触れる。 「悪い。こんなに余裕がないのは初めてだ」 「そうだな。今、攻めても秀次は意地になって殻に閉じこもるぞ。お互いに時間が必要だ。な」 「そう思うよ」  そうだな。いつものように攻めても、今は逆効果だな。 「わかった。待つよ」 「もし、何かあった時は手伝っても?」 「あぁ、よろしく頼む」  冬弥と三芳の手に自分の手を重ねる。  焦っていたが、友達のお蔭で落ち着くことができた。  後は秀次しだい。俺はどんと構えて待っていればいいんだ。  答えがもし、最悪な方へ向かったとしても、いちからやり直す。  俺が諦めなければいいだけだ。

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