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君は俺のモノ_04

 待つということが、こんなにも辛いものだったとはな。  連絡をしなくなってから三日たつが、気がつけばスマホを眺めていたり、他の人の着信音に反応をしてしまう。  しかも、秀次の声が聞こえたような気がして、その声の方へと顔を向けるが、勘違いとわかりため息をつく。 「お前、重傷な」  流石にこんな状態の俺に呆れて冬弥がぼやく。 「秀次不足だよ、俺は」  デカい身体を丸めていじけていると、クラスの女子が通りがけに慰めてくれる。  今欲しいのは女子の手ではなく、秀次のゴツイ手だ。  このままじゃ駄目だ。秀次を求めて教室に押しかけかねない。 「ちょっと癒しを求めに行ってくる」 「え、まさか秀次のクラスへ行くんじゃ……」  だから、そうならないように癒されに行くんだよ。 「ブニャの所」 「あぁ、猫か。行ってらっしゃい」  煮干しをポケットに入れ、ブニャの元へと向かう。 「おーいブニャ、餌だぞ」 「ぶにゃぁ」  煮干しを掌にのせ、ブニャの前へと差し出すと、それを咥えて食べ始める。  その姿を眺めていると、秀次と一緒に餌をあげていたころを懐かしく思う。  また一緒にブニャに餌やりをしたい。癒されにきた筈なのに、隣に居ない事が寂しくなってしまう。 「はぁ、ブニャも寂しいよな」 「なー」  掌をざりざりと舐められる。もしかして慰めてくれるのか?  だが、どうやら餌の催促だったようで、尻尾を揺らし待っている。 「わかった。待ってろ」  煮干しを取り出していると、電話の着信音が鳴る。  冬弥かな。それなら少しぐらい待たせてもいいだろう。ブニャが優先だ。  煮干しを取り出して掌にのせる。  それを咥えてブニャは奥へと行ってしまった。 「あ、うるさかったか」  わかった。今出るから。  ポケットからスマホを取り出すと、着信の相手は秀次だった。  連絡をくれるのを待っていたぞ。着信が切れぬ間にと急いで通話ボタンを押した。 「秀次」 「総一さん」  俺の名を呼ぶ声を再び聞くことが出来た。これって夢じゃないんだよな。  その後の言葉は途切れてしまったが、きっと、秀次も俺と同じ気持ちだと思う。 「美術室に来い。待ってるから」  会って、話をしよう。そう言いたいんだよな?  俺はそれだけを言うと通話を終え、美術室へと向かう。  ベランダに出ると、あの日、一人きりで座っていた秀次の事を思いだす。  あれから友達になり、それ以上の想いに気が付いて、告白して……。  秀次、お前が俺をこんなに夢中にさせたんだぞ。  暫くすると、ドアが開く音がした。 「総一さん」  不安そうな秀次の声だ。美術室内に俺の姿がないからだろう。  声を聴いた途端に、胸と目頭がじわりと熱くなる。  ぎゅっと拳を握りしめ、俺は立ち上がり、 「ここだ」  と窓から顔を覗かせる。俺を見た途端にほっとした表情を浮かべると、ベランダに出て隣に並んだ。

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