62 / 72
君は俺のモノ_06
今度は消えぬように、学校で女子に刺繍の指輪の作り方を教えてもらう。無論、赤い刺繍糸で編んだ物だ。
「何編んでるの、総一」
「赤い指輪」
「なるほど」
秀次に贈るものだという事に気が付いたようだ。
恋人同士になった事は、電話で冬弥に伝えた。色々と心配を掛けてしまったからな。
「で、なんで赤い指輪よ」
さっき、指輪の作り方を教えて貰った女子にも言われた。
「赤が好きなんだよ」
と女子にこたえた同じ言葉を口にする。
「へぇ、そうなんだ」
色については納得していないな。だが、メールでのやり取りは俺と秀次の秘密にしておきたいから教えてはやらない。
「まぁいいや。総一が幸せなら」
しつこく聞いてくることもなく、大事にしろよと肩を叩き、冬弥は自分の席へと戻っていく。
ありがとうな、冬弥。話を聞いてくれたし、報告をしたときも少し泣いていたよな。
そういう優しいところに、俺は心をすくわれている。
大切にするよ。秀次も、それに冬弥との友情も。
昼休みになり、美術室へと向かう。
ポケットには手作りの赤い指輪が入っている。秀次が来たら一番にこれを贈ろう。
椅子に腰を掛けて秀次が来るのを待っていたら、すぐにコンビニの袋を手に美術室へとやってくる。
俺は秀次の側に向かうと、手をとって小指に手作りの指輪をはめた。
「これで消えないだろう?」
と口角をあげた。
「消えねぇけど、恥ずかしいだろ」
小指を動かし、照れながら俺を見上げた。
「お揃いのリングを買うまで、それで我慢して」
いつか本物を、秀次の薬指にはめたいと思っている。つなぎあいたいしな。
「はめねぇからな」
「えぇ、秀次好みの、見つけたんだけど」
とスマホの画面を秀次に向けると、気に入ったか、画面を食い入るように見つめていた。
やはり好きか、それ。
「利刀さんから、お勧めの店を教えて貰った」
「え、利刀? なんで」
利刀さんに教えて貰った事が不思議なのだろう。そういえば、秀次にはまだ話していなかったな。
「実はさ、従兄が利刀のメディカルトレーナーをしていてな。昔は練習を見学しにつれていってもらっていた」
羨ましいって顔をしている。まぁ、プロレス好きからしたら、そういう反応を見せるよな。
「教えてくれてもよかっただろ」
「悪い」
前は会わせろと言われるのが嫌だったが、今は利刀を見て目をキラキラさせる姿を見たくない、と思ってしまうが……、恋人を喜ばせたいと思う気持ちもある。
「今度、従兄に頼んでみるから」
「期待してっからな」
期待している、か。なんか、つまらない。
「嬉しそうだな」
拗ねる俺に、
「言っておくけど、会えるのは嬉しいけど、総一さんが一緒だから、だぞ」
秀次が、気持ちを浮上させるような事を口にする。
「まったく。お前は可愛い事を言ってくれるなぁ」
秀次を後ろから抱きしめ、首のあたりに顔を摺り寄せると、そのまま身を預けてきた。
それが嬉しくて、喜びをかみしめる。
「イチャイチャタイムだな」
「なんだ、その恥ずかしネーミング」
「いいだろう、二人きりなんだし」
秀次の温もりと匂いをかいでいたら、もっと触りたくなってきて、ボタンのシャツを外し始めた。
「で、なんで俺のシャツのボタンを外すんだ?」
手を掴まれて、止められてしまう。
「上半身を描こうかと」
本当は触りたいだけなのに、そう言えば大丈夫かとズルい考えをしつつ、傍に置いてあるスケッチブックを広げて見せた。
ともだちにシェアしよう!