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その者

「イーズ様、フレイ様がお呼びです」 「今行く」 壮年の男性に呼ばれ、青年はきらびやかな部屋の一角の椅子から立ち上がり部屋を出る。 濃い灰色の肩程に伸びた髪を揺らしながら廊下を歩く凛とした顔立ちの美しい青年は大きな扉の前に辿り着く。 その扉をノックすると中から入れと男性の声が聞こえ、中へと入る。 扉の向こう側はとても広く荘厳な雰囲気を漂わせている。 その窓際には威厳漂う壮年の男が待ち構えていた。 「伯父上、ご用件は?」 「イーズよ、此度の戦にアンバーの力を使うやもしれぬ」 「………伯父上、それは陛下のご意向ですか?」 「そうだ、この戦で成果を上げられたら我々アンバー家は安泰だ。 アンバーにしか無い力を使わぬとは罰当たりとは思わんかね?」 青年、イーズの目の前に立つ伯父のフレイは窓から外を眺め、異様な姿の獣を目に捉えた。 頭は狼、獅子の様な鬣を持つとても大きな化け物はグリムと呼ばれている。 「伯父上、これは両刃の剣ですよ。 使い方を間違えれば我々が滅びる。 どうかお考え直し下さい」 「ふん、貴様もあの女に毒されおって。 貴様こそ我々の存在意義を考え直すべきだ。 もう良い下がれ」 イーズはそう言われ一つ頭を下げ部屋を出た。 その足で屋敷の外へ行くと先程とは違うグリムへと歩み寄った。 「いい子だ、おいで」 するとグリムは吸い寄せられるように差し伸べられたイーズの手に擦り寄った。 猫のように甘えるグリムにずっと無表情だったイーズも頬が弛んだ。

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