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闘技場 2
剣闘士による決闘は歓声の中互いに譲らず互角の闘いが続き、ようやく決着が着いた。
左の男が剣を飛ばされてしまったのだ。
そこでこの闘いは終わるのかと思われたが、観客席からはさっさと殺っちまえとヤジがあちこちから聞こえてきた。
そして右の男が剣を振り上げ、フランは咄嗟にシュリの目を手で覆った__
その直後に周りから歓声と拍手が湧いた。
「悪趣味だな」
アディがボソリと呟いた。
この場で行われていたのは殺し合い。
しかも見世物として、娯楽として行われていたのだ。
「フラン……?」
最後の瞬間をフランに妨げられ見ていなかったシュリがどうしたの?と言う表情で見上げた。
「何でもないよ。」
フランはシュリの不安を和らげようと微笑んだ。
「さて、ここから出ようか」
フランはこれ以上ここに居るのは良くないと立ち上がったその時だった。
「さぁさぁ、今日のメインディッシュ!!
グリムの登場です!!」
先程の司会の男が放った言葉に観客は一層盛り上がった。
太く頑丈な鉄格子の奥から悠々と現れたグリム。
こんな間近でグリムを見たことがないフランとアディは思わず見とれてしまった。
「でけぇな」
そこへ放たれたのは剣を持った一人の男。
男はグリムを前に怯え、まるでライオンの檻に入れられた子ウサギのようだった。
「もう早く出よう」
フランがシュリの手を引きこの場から去ろうとしたその瞬間。
グリムの咆哮が響き、なんと剣闘士の男を飛び越えフラン達のいる観客席に入り込んできたではないか。
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