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初めての夜*性描写

 困惑しているクバルの上に乗り上げ、王が身を起こす前に褪せた白色の下履きをずり下げる。相変わらず凶悪な大きさの一物には興奮の兆しなど欠片も見られない。快楽を得るためではなく、ブラッドを屈服させ支配するためだけに使われていたものだ。  躊躇や嫌悪感がない訳ではない。しかしここまで来て後戻りなどはできないのだ。ブラッドは小さく息を吐き、上体を屈めて王のぺニスの先端を口に含んだ。 「ん、……っ」  粘膜で亀頭を包み込むと、クバルの褐色の太股がかすかに揺れる。  ――歯を立ててはなりません。  ブラッドに指南するヤミールの言葉を思い起こす。そんなことはわざわざ指摘されなくてもわかっていた。口淫くらいさせたことは何度もある。歯が当たると痛いのは男なら誰でも知っている。  行為の前はブラッドと同じく湯浴みをさせられているのだろう、不快な匂いはしない。不潔な蛮族と罵っていたが思えば、荒々しさはまるで獣のクバルが悪臭をさせている時は一度もなかった。  つるりとした亀頭を舌の表面で撫で上げ、上顎と舌で挟んでちゅうと吸う。男の一物だと意識すれば吐き出したいと喉が収縮するのを、息をぐっと飲み込んでたえる。  平常時でも重量感のあるクバルのペニスは、口内で愛撫を続けていると生理現象に従って質量を増した。勃起し始めた竿を右手で掴み、皮の部分を動かすようにゆっくり擦ると、柔らかかった血管が張り詰めて浮き上がるのが掌の感触でわかった。 「ふ、……っん、ん」  王城で働く下女に、外遊しに出た城下の娼館の女に、自身のものを咥えさせ快楽と優越感を得ることはあれど、自ら男のものを咥える日が来ようとは想像もしていなかった。嫌悪と屈辱を誤魔化すように、ブラッド自身が施された彼女たちの舌使いを必死に思い出そうとした。  すでに天を向いて屹立しているぺニスの上に、口内で溜めた唾液を垂らす。はあ、と生温い息を吐きかけ、さらに奥まで口の中に包み入れると、クバルの内腿がぴくりと引き攣る。  根本をごしごしと擦り上げながら、頭を前後させてぺニスを出し入れする。平均的な雄よりも大きいクバルのものはくびれが大きく張っていて、招き入れる度に唇に引っ掛かり、大きな亀頭が上顎をずるりと擦った。長さだけではなく太さも人並み以上の一物は咥えていると顎が疲れてくるほどで、口淫を施しながらも同じ男としての劣等感を刺激されるが、主導権を握っているのはブラッドだ。 「……ん、……は、ぁ」  口の中の味が苦く変わってきた頃、一度ぺニスを吐き出した。唇との間に銀糸を引き、赤黒く充血した亀頭は、ブラッドの唾液でてらてらと光っていた。一度上体を起こし、張り詰めて硬くなった屹立の先端から透明な液体が零れ溢れるのを見て、クバルに聞こえるよう鼻で笑った。  竿を扱いていた手を離し、唾液と先走りで湿った口内に指を差し入れ丹念にねぶる。腹と下履きの隙間から手を滑り込ませ、会陰を越えてその奥の窄まりへ辿り着いた。ヤミールやカミールに毎夜弄られている場所だが、自分の手で触れるのは慣れない。  表情だけは取り繕ったように冷静を保つクバルは、上がる息をこらえるように意識的に深く呼吸を繰り返していた。薄い暗闇の中、動向を探るように赤い両目でブラッドを見上げている。いまだ崩れない気丈な視線を感じてブラッドは再び上体を折り曲げ、尻たぶの縁をなぞりながらぺニスを咥えると、クバルが息を飲む音が聞こえた。 「ん、っ……」  濡らした指を突き入れるとやはり痛みが伴った。普段は十分な量の香油で濡らして解しているのだから当然と言えば当然だ。だが毎夜クバルを受け入れているそこは多少の滑りの足りなさでは異物を拒むことはせず、引っ掛かりを覚えながらも柔らかく指を飲み込んでいく。自分の身体の変化に辟易しながらも、後孔を広げる指を止めることはしなかった。  ここを使って、徹底的に焦らし、主導権を握ってください。ヤミールからはそう言われている。どのように動いて焦らせばいいのかも、昼間教わった。ふとした瞬間に頭が正気に戻りそうになるのを誤魔化しながら、後孔を広げる。  三本の指が出入りできるようになると、ブラッドは一度指を抜いた。ヤミールとカミールはいつも前立腺を刺激して快感を与えブラッドの気を逸らそうとするが、今夜はその必要はない。  口に咥えたクバルのぺニスには緩慢に微弱な刺激を与える程度に留まっていた。中途半端なまま亀頭だけを責められて先端から苦い先走りを滲ませ続けているものに、空いた右手を添えて親指と人差し指で作った輪で強く擦り上げると、頭上から低い呻きが聞こえた。 「……ウ、……っ」  ぺニスを咥えた唇が笑いそうになる。ブラッドを犯す時、王は最初から最後まで無言だ。喘ぐ声など達する時でも聞いたことがない。  久々に愉快な気分を味わいながら、愛撫を続ける。上顎と舌の表面をぴったりとぺニスに添わせ、ぢゅう、と強く吸い上げると、口内の苦味が増した。先走りの溢れ出る鈴口を優しく舐めた後に、尖らせた舌でぐりぐりと弄る。ヤミールに教えてもらった通りに愛撫すると、王のぺニスは今にも弾けそうに膨らみ、こらえた荒い息遣いが頭上に聞こえた。舌に合わせ擦り上げる手の動きも早めると、クバルの褐色の内腿がビクビクと震える。ブラッドは口からぺニスを吐き出し、竿を扱く手の動きを止めた。 「ッ……?」  眉根を寄せて快楽にたえるクバルの姿は愉快だった。快楽を与える刺激が達する寸前に消え、どういうことかと見上げてくる王を上から見下ろすこと以上に溜飲が下がることはない。  射精させてはいけません。僕の言葉通りに、熱を解放する直前に愛撫を止めたブラッドは、浅い呼吸を繰り返し見上げるクバルの腹に跨がり、下履きをずり下げて尻だけを露にした。  射精の直前まで上り詰めたクバルのぺニスは充血して太い血管を浮き上がらせ、唾液と先走りに濡れながらびくりと震えている。いつも背後から貫かれるばかりで、婚姻の日以来挿入する直前の姿を見たことはなかったが、きっとここまで興奮した状態ではなかっただろう。挿入できさえすれば後は腰を振るだけでよかったのだ、突き入れることができる程度に勃起させていただけだった。  クバルは何も言わず、じっと見上げてくる。ブラッドも何も言わず、いつも見下ろしてくる王の姿を見下ろしながら、後孔に屹立を宛がった。

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