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情欲*性描写

 絶頂を迎えた後、深く息を吐いて呼吸を整える王の視線が、ふたりの間で緩やかに主張している屹立へと落とされる。そして対面座位の姿勢でわずかに目線の高いブラッドを、下から覗き込むようにして上目に見上げてくる。 「っ、もう終わりだ」  暴くような視線から逃れたくて身体を離そうとするが、尻を掴むクバルの手にはいまだ力が込められたままで一物を抜くこともできない。そればかりかクバルは、ブラッドの身体を揺らして萎えた一物で中を擦る。硬さの足りないそれが腸壁へ刺激を与えることはないが、男の精液でしとどに濡れた中はくちゅりと淫猥な音を立てる。  やめろ、と制止の声を上げるが、王は緩慢な仕草で腰を揺らしながら、尻から手を離しブラッドの下履きの縁に指をかけた。少しずり下げただけで、窮屈さを訴えていた屹立が勢いよく頭を出す。充血した亀頭の先端の切れ目に透明な液体がぷっくりと浮かび上がったぺニスを、王の目がじっと見つめている。首筋と耳の裏がかっと熱くなる。 「違う、これは」 「何が」  王は冷静に反問しながら、ぐっと腰を動かした。思わず中に埋まった柔らかいそれをきゅっと締めつけてしまい、顔に上る熱と羞恥が増す。  中を穿たれて勃起するなんて。今まではただ痛くて苦しいだけだったのに。緩やかに下から揺さぶられるだけで、下腹部に得体の知れない熱が集まってくる。 「何が違う」 「ゥ、あ!」  潤んだ先端を王の掌に包まれて、たえきれず声が出る。所々にマメのできた硬い掌で皮膚の薄い亀頭をぐるりと撫でられて、ぞくぞくと腰が震えた。  ぺニスを硬く勃起させて密かに先走りまで滲ませていることを咎め立てするように、竿を握った手が親指で鈴口を擦り、ぐっと押し込むように刺激する。ヤミールたちの絹のような滑らかな肌とは違う、少しざらついた感触の指先で敏感な場所を擦られると堪らない。喉から零れる声をこらえるようブラッドは必死で息を飲み込んだ。 「やめろ、……ッ離せ」  前に与えられる刺激を我慢しようとすると、肛門がぎゅっと収縮する。ゆるゆると内臓を押し上げるクバルのぺニスが、いつの間にか硬さを取り戻していることに気づいてしまった。  クバルの歪んだ表情を拝むだけで良かった筈だ。それで終わりにするつもりだった。しかしクバルの方に、昨夜までと同じ、射精したらすぐに天幕から去る素振りはないのだ。  十分な硬度を取り戻した熱塊が、ずん、と質量を押しつけてくる。 「ひ、っ! やめろ、抜け……ッ」  ぐちゅ、ぐちゅ、と粘着質な音を接合部から立たせながら、内壁がゆっくりと擦り上げられる。クバルの手は再びブラッドの尻たぶを広げるように持って上下させながら、下から突き上げる。  大きな亀頭が肉を削る度に、甘い痺れが下腹を苛んだ。ヤミールとカミールに中を解されている時の、男のものではない快感に熱が灯される。  クバルのものに突かれてそれを感じてしまうなど、あり得ない。 「ふ、……ッ、ぅ」  せめて声だけは上げるまい。今夜、主導権を握ってクバルを下に組み強いているのはブラッドなのだ。情けない喘ぎ声など上げてたまるか。  フー、フー、と獣のように息を押し殺して奥歯を噛むブラッドを、クバルの赤い瞳が見上げてくる。暗闇の中でもわかる鮮烈な血色の中に、底冷えするような冷酷さや無情さの影は、今は見られない。その代わりに情欲が浮かんでいる。褐色の肌にはいくらか赤みが差しているように見える。  貫いて犯して支配するだけではない、紛れもない劣情。今まで見たことのない、クバルの剥き出しの欲望を正面からぶつけられ、首の裏側がぞわりと粟立った。とても直視できない。  顔を背けると、クバルの右手が伸びてきて顎を掴んだ。視線を逸らすことは許さない。そう言っている。 「ぅ……、っ」  これまでの夜とは明らかに異なる。ゆっくり、深くまで、まるで探るように、肉壁を開き押し上げられる。クバルのその腰遣いに、射精するためだけに何も考えず強引に擦るだけの乱暴な動きは見られない。  体勢が違うと中でぺニスが当たる場所も違う。いきり立った熱塊は、ブラッドが快感を拾う場所を何度も触れて突く。腹と腹の間に挟まれたブラッドのぺニスは、皮膚に擦れる直接的な快感と、中で突かれる隠微な快感から、いつの間にか太く血管が浮き出るほど硬く反り返り、先端からはだらだらと止めどなく涎を溢れさせていた。 「も、…ッ、や……やめ、抜け……!」 「……ッ、終わるまで、抜けない」 「じゃあ早く、射精しろ……っ」  生理的な涙で霞む視界でクバルを見下ろすと王は、はあ、と艶っぽい吐息を零した。その直後に、太いぺニスが一際強く奥を突き上げ、ブラッドは漏れそうになる悲鳴を何とか飲み込んだ。剥き出しになったぺニスが、びくんと震えて涙を零す。  ずん、ずん、と突き上げる速度が早くなる。衝撃に体勢が保てず、ブラッドは王へ体重を預けるように上体を前に倒し、投げ出していた両手でクバルの肩を掴んだ。汗ばんだ肌と肌がひたりと触れる。身体が熱い。 「はぁ、ん、……ん、んっ」  繋がった下肢がこれでもかというほど密着して、中を突き上げられる度に、ふたりの間に挟まれたブラッドのぺニスが、クバルの硬い腹へ擦りつけられる。とろりと濡れた亀頭と裏筋が摩擦するのが堪らず、太腿でクバルの腰をぎゅっと締めつける。  クバルも荒い息を繰り返していた。絶頂を求めて、きゅうきゅうと締め付ける粘膜の中を深く掘削する。その間隔がますます狭まっていることから、解放が近いのだと悟る。  秀麗な眉が顰められ、赤い宝石が薄い瞼に閉ざされる。ああ、と恍惚とした吐息混じりの声が王の厚い唇から漏れ、中に埋まったぺニスが痙攣する。  やっと終わった。  安堵したのも束の間だった。 「いった、か……っ、――!?」  口が塞がれ、言葉をなすことはなく、ブラッドは両目を見開いた。  唇に、熱くて柔らかいものがねっとりと吸いついている。 「な、ん……ッ、ふ」  無防備だった唇のあわいから、濡れたものが口内に侵入してくる。舌だ。舌はブラッドの舌を絡め取り、唾液を奪うようにぢゅう、と吸いつく。 「ふぅ、う……んッ、んん……ッ!?」  ガチガチに反り返って涎を垂らしていたぺニスの先端が、ぐりぐりと弄られる。一番濡れている鈴口を掌全体で撫で回され、指先で亀頭の周りをきゅっと摘ままれる。足裏から痺れのような強烈な快感が走り、ブラッドの欲望は弾けた。震えるぺニスが白濁を吐き出す間、喉から漏れる声は合わせた唇の中にくぐもった音として吸い込まれていった。 「んーッ……ぅ、ん……ふ、はぁ、あ……」  射精した後も焦点は定まらず、頭がぼうっとしていた。わずかに離れた唇の端から零れた涎が伝い落ちるのも構わず、呼吸を繰り返して酸素を脳に取り込もうとする。  何だ、今のは。  口に出して問うのも憚られる。王がどんな表情をしているのか目に映すことさえ、躊躇われる。  顔を逸らしたまま、ブラッドは中に埋まったままの一物を抜くために腰を上げようとした。だが、脚にまるで力が入らないのだ。ぐちゅりと濡れた音が接合部から聞こえるだけで、クバルの上から動くことができない。 「おい、抜け……っ」  震える脚を叱咤しながら動こうとすると、クバルの腕が背に回って、ブラッドは王の肩口に顔を埋めることになる。密着した胸から、とく、とく、と昇りつめた鼓動の音が伝わってくる。そして自分の心臓の音も同様にまだ早鐘を打っている。 「……ッ」  クバルの表情は見えない。  身体が動くようになるまで、ブラッドは王に体重を預けたまましばらく息を整えていた。

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