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抱かれる*性描写
緩く波打つ黒の前髪が、はらりと落ちる。秀でた額と、目頭から緩く弧を描く眉。その下に埋まる、他のどのダイハンの戦士よりも強い輝きを放つ赤い宝石が見下ろしている。
大きく脈打つ心臓が握り締められたように苦しく、交錯した視線を外すことができない。目を逸らしてしまったら、美しいと思える光景が終わってしまうような気がして。
クバルの片腕がおもむろに動き、衣擦れの音がした。片膝を胸につけて露にされた秘孔に、熱い塊がぴたりと触れる。直接目に見えずとも、十分すぎる大きさと質量は容易に想像できた。
柔らかく解れた肉の中に入る許可を得たがるように、濡れた先端が窄まりの周辺をずるりと擦る。入りそうで入らない、微妙な動きに、期待した肉襞が浅ましく収斂する。
「入れていいか」
「……っ」
そんなこと、聞かなくてもいい。王は許可を取る必要はないのだ。何も言わずに乱暴に突き入れて、腰を振って、射精を済ませる。それが、ブラッドの知っているヘリオサ・クバルだ。
「勝手に、しろよ。入れたきゃ入れろ。今までそうだっただろ」
「アステレルラの意思を聞きたい」
互いの吐息が触れそうな距離で囁いたクバルの声は掠れていた。静かな昂りの滲んだ聞きなれない声音に、息を詰める。クバルの大きく張り出た亀頭がぴたりと穴に触れて、少しでも腰を押し進めたら、柔らかく解れた入り口は容易に招き入れてしまいそうだった。
「――っ」
「入れていいか」
「……入れても、いい」
答えを口にした瞬間、押し広げられた入り口に硬い熱塊がゆっくりと侵入してきた。濡れた柔肉はその大きさを拒むことなく、多少の窮屈を訴えながらも飲み込んでいく。
ぞくぞくと、歓喜にも似た震えが足裏から伝わってくる。何度も犯された筈なのに、まるで初めて受け入れたような、不思議な感覚に支配されていた。
「あ、……」
入り口は皺が伸びきるほど広げられ、下腹は呼吸が浅くなるほど苦しいが、同時にこれまで感じたことのない充足感があった。息を吐きながら、それが恍惚と呼ばれる感覚なのだと気づいた。
収まったのはすべてではないが、ゆっくりと腰を押し進めるクバルの動きが止まった。大きさを慣らすように制止したまま、深く呼吸をする。
「少し、このままで」
クバルらしくない気遣いだった。身体を気遣われたことなど一度もなかった。痛かろうが苦しかろうが、無理矢理抉じ開けて抜き差しするのが常だった。
ブラッドのペニスは興奮したままで、今にも果ててしまいそうに怒張したものは先端から蜜を溢し下腹を濡らしている。
早く、出したい。そう思えば思うほど、肉襞は勝手に蠢いて、中に埋まったクバルのものに絡みつく。
「待たなくてもいい」
躊躇いながらもブラッドはクバルを仰ぎ見た。繋がった部分、広げられた穴の縁と、まだ入りきらない竿の根本に手を触れると、溶けてしまいそうなほどに熱く、大きく脈打っていた。
「辛くはないか」
「いいから、続けろよ」
促すと、クバルは一度腰を引いた。抜け出た王のペニスは再び入り口を押し広げて粘膜の中へ侵入し、腸壁の入り口から浅い部分を小突いた。
「ゥ、あ」
そこを突かれると、下腹部からじんじんと快感が押し上げてくる。排尿感に似た気持ち良さがペニスの先まで突き上げ、剥き出しになった亀頭が膨らんでいく。
「ここだろう。感じていた場所は」
「ぁ、…う、……っ」
硬いもので何度も同じ場所を刺激される。血管の張り巡ったブラッドのものは、先端の切れ目から透明な液体を滴らせている。びしょ濡れになったペニスの先に、硬い指の感触が触れた。
赤く腫れた亀頭の先をぐるりと撫でた厚い指の腹は、切れ込んだ秘肉を剥き出しにさせるように強く擦り、そこから溢れ続ける蜜を丹念に塗り込めた。些細な刺激も過敏に受け取り、双珠がきゅっとつり上がる。
直接的な快感に漏れ出そうになる声を押し殺しながら、腸壁を通して前立腺へ与えられる刺激にたえる。浅い部分を突いていた熱塊は、突然その奥まで肉を切り開いて入り込んできた。
「あ、――っ?」
大きく張り出たクバルの亀頭が、敏感になった粘膜をずるずると擦る。その間も、前への愛撫は途切れなかった。先走りで濡れた手でブラッドのペニスを掴み、容赦なく擦り上げる。
「クバル……っ、離せ……」
「出そうか?」
「う、……ぁ、いく……ッ」
「いいぞ、出せ」
射精を促すように、クバルの手がペニスを扱く。ひくつく鈴口を軽く引っ掛かれ、奔流のように精液が吹き出した。どくどくと吐き出す間も、添えられた手はあやすように愛撫を止めない。絶頂と同時に後蕾がぎゅっと引き締まると、クバルはわずかに息を詰まらせる。
胸を喘がせながら解放感に浸っていると、クバルの手で絶頂を迎えさせられたという事実がじわりと頭をもたげる。
身体を押さえ込まれ犯されたことはあっても、抱かれたことなどないのだ。
ブラッドが息を整える間、じっと待つようにしてクバルは見下ろしていた。ブラッドの中に埋まったペニスははち切れんばかりに膨張してどくどくと血液が脈打っている。今すぐにでも激しく穿って射精に至りたいだろうことは、同じ男であるから察するに容易い。
「平気か」
不意に落とされた短い問い。問うた本人はブラッドを見下ろしながら、零れた前髪を掻き上げた。額に細かな汗を滲ませ、わずかに眉根を寄せる。
「もっと乱暴にしたって壊れねえよ。知ってるだろ」
「乱暴には、しない」
中に埋まったものがずるりと外へ出て行き、排泄に似た感覚に息を漏らす。今度は両膝の裏に手をかけられ大きく脚を開かされた。再び秘部に宛がわれたものは血管が浮き出るほど硬くなって反り返り、先走りや腸液に濡れていた。
失ったものを求めるように収縮する秘孔に、太い亀頭が侵入してくる。
「っあ、――……」
腸壁を削りながら、奥深くまで。随分奥まで届いて中を圧迫しているのに飲み込んだのはすべてではないとわかるのは、尻にクバルの肌が触れていないからだ。中の粘膜は太い熱塊にぴたりと沿って包み込み、亀頭やカリの形や硬く張り巡った血管の硬さまでわかるほど吸いついている。改めてその大きさと太さを実感すると、クバルの上体が近づいてきた。
ブラッドの身体の両脇に肘をつくと、わずかに離れていた下肢が密着する。ぐ、ぐ、と長い幹が根本まで埋まって、腹の中すべてがクバルに満たされて苦しく、ブラッドは浅く呼吸を繰り返した。
「辛いか」
「平気だ……気にせず動けよ」
「俺はお前を抱いている。苦しませたくない」
吐息が触れ合う距離で赤い瞳に見つめられる。口の中で舌が言葉を探すが、何も言い返すことができなかった。
王と女王の初夜は、早く終わらせるのが互いのためだと言って、あまりの苦痛に制止をかけるブラッドの言葉は耳にも入れずに無理矢理穿ったくせに。今のクバルは、組み敷いているのは本当に同一人物かと疑いたくなるほど、あの時の底冷えするような冷酷な視線は欠片も姿を現さない。
こんなのは、調子が狂う。いっそ手酷く犯された方がいい。そう思い始めた時、緩やかに突き上げが始まった。
「っ……ん、……」
肉壁を擦り上げられる度に快感の微熱が身体を巡り、下腹に重く溜まっていく。クバルはことさらゆっくりと抜き差ししながらブラッドから視線を外さない。観察されているような居心地の悪さと羞恥に、ブラッドはひくつく瞼を軽く伏せて王から逃れようとした。
「っ……?」
ぴちゃりと、首筋に温かく濡れた感触があった。肩口に顔を埋めたクバルが、ブラッドの強張った首筋に唇をつける。舌先で舐められ、柔らかく皮膚を吸われ、ざわざわと肩甲骨の辺りに震えが走る。
「な……ッ、あ!」
肌を滑って上った舌先が、耳朶を優しくねぶった。小さな水音を立てながら耳朶を吸われ、耳の縁を尖った舌先でなぞられると、腰元から得体の知れない震えが駆け上がってくる。
「ひ、……ゃ、あ、やめ……っ」
その間も、中を突き上げる腰の動きは止まらなかった。首筋を吸い、耳裏を舌で撫でながら、むしろ抽挿は激しくなった。
「あ、…ぅ、あ……っ」
意図的に腹側を圧迫するように、クバルは抽挿を繰り返す。ブラッドの感じる部分を刺激しながら、熱い塊が奥まで掘削する。
いつの間にか、密着した身体の間に挟まれたブラッドのペニスは再び硬さを取り戻して勃起していた。クバルが中を擦るように穿つ度に、敏感な先端が腹に擦れて強い快感を生む。鈴口から滲む先走りが、ぬるりとクバルの腹を濡らした。
「アステレルラ……」
耳をねぶりながらの熱を孕んだ囁きが、背筋を粟立たせる。自分の快感を追うのではなく、執拗にブラッドに快楽と恍惚を与えようとするクバルに「抱かれている」のだと、名を囁く声音で思い知らされる。
昂りかけたものが弾けてしまわないよう、ブラッドは唇を噛んでぐっとこらえた。縋らずにはいられなくて、しっとりと汗ばんだクバルの上腕を両手で鷲掴む。
「あ……は、ぁ……っ」
ずん、ずん、と最初とは異なって容赦のない突き上げの間隔が徐々に狭まり、クバルの限界が近いのだと悟る。耳元で呼吸をするクバルの息遣いは荒く、時折たえ入るように詰まらせる。
「っう、……ッ」
低い呻きとともに身体の中に埋まったクバルのものが震え、熱い精液が注がれる。これまで感じていた、男の子種を注ぎ込まれる寒々しさはなかった。そっと目線をやると、眉根を寄せて閉ざされていた赤い瞳が露になる。かすかに濡れているように見える赤い宝石が近づいて、熱く湿ったものが唇に触れた。
「ふ、っ……」
柔らかな唇が、ブラッドの上唇を啄む。ざらりとあわいをなぞられて無意識に口を開くと、熱い舌が口内に侵入して歯列を撫でた。
「……ん、……」
喉奥へ逃げるブラッドの舌を追ってクバルの舌が絡みつく。興奮の残滓を残すクバルに舌裏をなぞられ、舌先をぢゅう、と強く吸われると、いまだ燻り続けている快感の熱がぶり返す。勃起したままのペニスが腹の間に挟まれてびくりと震え、たえきれず先端から蜜が滴った。
唾液に濡れた唇を軽く吸い、クバルの吐息が離れていった。
以前にされたような、昂りに任せた衝動的な行為とは違う。ではこの口づけは何なのだと、問う余裕はブラッドには残っていなかった。
「アステレルラ」
掠れた声で名を呼ばれ、身体を起こされる。クバルの上に座るような体勢に変えられて、まだ終わってはいないのだと悟った。
「まだ満足しない」
濡れた肌を合わせ、クバルの愛撫は止まない。濃厚な熟んだ空気に頭の奥が痺れ、背中が引き攣りそうになりながら、抉られる快楽の波にたえ続けた。
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