44 / 75

恐怖*性描写

※挿入の描写はありませんが主人公が性的に凌辱されていますので苦手な方はご注意ください。  男はブラッドを見下ろしながら、裂けた唇を開いた。 「私のことは記憶にございますか、殿下」 「これから俺を犯す男の正体なんかどうでもいい」 「相変わらず傲慢な方だ。下々の者の顔など覚えてもいないのでしょう」 「傲慢はどっちだ。貴様らがこれからしようとしていることは……、ッ」  男の手が足を掴み、関節が軋むほど大きく開かされる。先程使われた潤滑剤とぺニスの先から零れた先走りで濡れた孔の縁を、指先でぐるりと撫でられ息を飲んだ。 「涼しい顔をされていましたが、薬はまだ効いているようですね」 「ぐ、……っ」 「まともな意識があるうちにお話します。私の父はあなたに処刑された。六年前のアーリス家の当主だった。王国の財務大臣を務めていたことは記憶にあるでしょう」  アーリス家は、王都の東に城を構える貴族だ。六年前の当主は、男の言う通り財務を管理する大臣として王城へ出仕していた。父ということは、この男は当時の当主の息子で、現当主だ。 「……お前は、あの時の槍試合の男か」 「そうです。この顔の傷はあなたがつけたものです」  唇の横の裂傷を撫でた手で、アーリス候はブラッドの内腿に触れた。ぞわりと肌が粟立ち、震える。冷たい指先が濡れた窄まりの中へ侵入し、内側の肉壁をぐるりとなぞった。 「っ、……!」 「六年前、王国の金が何者かに不正に使用された事件がありました。事が発覚した時、真っ先に私の父が疑われた。父は弁明したが、先代の王は不貞の輩を見つけ出し証明しない限り、父を罪人として断罪すると仰られた。父は、大金が動いた形跡を王都内で調べ、王の従者のひとりが罪人であることを突き止めた。だが真実を申し上げても王は激昂し信じず、父の処刑を下された。……あなたは父君である王に提案した。槍試合で決着をつけてはどうかと」  アーリス候は冷えた瞳で見下ろしながら、感情を抑えた声音で語った。 「財務大臣が盗んだという証拠もない。公正に槍試合を行い、勝てば罪を免除しようと。しかし父は足が悪く、長年に渡り戦いからは遠ざかっていた。しかも相手はあなただという。勝てる見込みなど最初からない。父の代理に私が試合をすることになった。それでも勝算などなく、顔に深い傷も受け、呆気なく私はあなたに負けた。大人しく殺されようとした時、父が私とあなたの間に入って地に額をつけた。息子の命は見逃してくれと、あの厳格だった父が泣いて喚いていた。……恩赦を与えてはどうかという周囲の声を無視して、あなたの槍は父の喉を貫いた。王は、罪人を弔うことは許さないと仰り、父の遺体を城門へ磔にした。腐敗して骨に変わるまで」 「俺は……、間違ったことはしていない。お前の父が、王国の金の管理を怠ったことは、事実だ」 「そうでしょう。そして、真の罪人を許し罪のない男を殺したことも事実だ」  二本の指が根本まで捩じ込まれ、ブラッドは喉から出そうになる悲鳴を飲み込んだ。 「先王が死に、あなたもダイハンへ追放されたと聞き、溜飲が下がりました。新王即位の式典のためにアトレイアを訪れると聞き、チャンスだと思った。そしてアンバー候たちがそれを与えてくれた」 「っ……」 「私の父と同じように、あなたの泣き喚く姿が一度でも見られたらと思った。まさかこのような形になるとは予想もしませんでしたが」 「ァ、っ……!」  ぐり、と腹の中の一点を抉られ、爪先が魚のように跳ねた。平常時でも、クバルに触れられれば反応を示す場所。普段よりも敏感になった身体には刺激が強く、勃起したぺニスは腹につくほど反り返って先端からとろりと蜜を垂らした。 「……っ貴様らの、前なんかで……泣き、喚いたり、しない……」 「この状況で虚勢を張るのか、流石ですね」  中に埋まった指が抜けて行き、詰めていた息を漏らす。しかし快楽を求める身体は意思とは関係なく、刺激を失った肉壁は収縮を繰り返す。 「あの獣のような蛮族の男に犯されているのなら、私の細い指などでは到底満足できないでしょう。見た目と同じく下半身も凶暴そうだ」 「わかってる、じゃねえか……」 「なら違う方法であなたを喚かせよう」  アーリス候が軽く身体を起こし、自身の胸元に手を滑らせる。注目した先で男の手が取り出したのは、護身用の短剣だった。黒地の鞘には凝った金の装飾が施され、傾けるときらりと輝く。 「これは父の形見です」  鞘から抜かれた剣身が、アーリス候の手の中で煌めく。尖った刃の先で、上着の留め具がひとつひとつ外される。行き先の予想できない短剣はブラッドの服の裾へ忍び込み、冷たく硬質な感触に触れた腹筋がびくりと揺れた。反応を嘲笑うかのように刃は内側からシャツを突き破り、そのまま胸の方まで裂いた。 「服を裂かれたくらいではあなたはたじろぎもしないでしょうが、間もなく到着される従妹のお嬢様は泣いてしまうでしょうね」  深く呼吸を繰り返しながら、ブラッドは無言で男を睨みつけた。アーリス候は軽く鼻で笑い、刃の尖った先端を無防備になったブラッドの胸元に押しつけた。紐に繋がれた小さな白い石が肌の上を滑り落ちる。 「随分と不似合いなものをつけていますね」 「……貴様には、関係ない」  男は大して興味がなさそうに刃の先で小石を弾き、鎖骨の窪みをなぞった。ぞわりと、鳥肌が立つ。息を潜めてじっと押し黙ると、刃は肌を傷つけはせずに下方へと下りていく。逞しい胸の盛り上がりを下り、硬い腹の割れ目をなぞり、薄く血管の浮き出た下腹を撫で、さらにその下へと辿り着く。曖昧に肌へ触れる冷たい刺激はもどかしく、小さく息が漏れた。監視するようにじっと見つめてくる男からは、ブラッドも目線を外さない。冷たく鋭い金属が、勃起したぺニスの根本に触れた瞬間、たらりとこめかみを汗が流れた。 「もう要らないものでしょう。切り取って差し上げようか」  今感じているのは、恐怖ではないとブラッドは己に言い聞かせた。こんな男の下で乞うことは何もないと。ぱんぱんに膨らんでいた双珠が縮み上がる感覚に知らぬふりを押し通し、口を開いた。 「……好きにしろ」  硬い声音で言い放つと、アーリス候は不愉快そうに唇を歪める。 「それとも、こちらに入れましょうか」  刃が濡れた肌をずるりと滑り、会陰の先の窄まりへ辿り着いた。ひくひくと収縮する孔の縁を短剣の面で触れる。見下ろす男の目が冗談ではないことに、ぞっとした。熱を持っていた身体が冷え、代わりに心臓の鼓動が異常なほど早鐘を打つ。 「アーリス候、身体に傷はつけるなよ」 「……わかっています」  ブラッドの肌から短剣を離し、男は刃を鞘に収める。硬直していた身体から力が抜け、毛穴から吹き出る汗の冷たさを感じた。 「本当に身体の中を裂かれるかと思いましたか?」 「……っ」 「流石に刃は入れませんよ」  男は手の中の短剣をくるりと回転させ、装飾の掘られた鞘を握った。まさかと思うと同時に、短剣の柄をブラッドの秘孔へ押しつけた。 「ん、な……!」 「これくらいなら飲み込めるでしょう。男根よりも細い」  柄先の銀の球体部が、ぐぬ、と入り口を広げて中へ押し入ってくる。金属の冷たい温度に、熱を持った身体は鳥肌を立てた。最も太い柄先を越えればその先は細く、男は容赦なく短剣の柄を奥へ進めた。 「ぁ、あ……、は……っ」  ぞくぞくと、悪寒とともに快楽が這い上がってくる。拘束されて自由を奪われた手では口を塞ぐこともできず、たえきれない声が引き結んだ唇の合間から零れ落ちる。  感じていることを証明するその声を、聴かれてしまうことが苦痛だった。自分の意思に関係なく受け取ってしまう快楽にわずかでも抵抗しようと歯を食い縛るが、中に埋まった短剣の柄は硬い先端で肉壁をごりごりと削った。 「ひ、アぁ、あっ!?」 「こんなものに尻の中を突かれて喜んでいる」  一度引き抜かれた短剣が、水音を立てて再び突き立てられる。硬い柄先で敏感な場所をぐるりと押しつぶされると、下腹とペニスがじんじんと痺れ、先端からとろりと溢れた先走りが震える腹の上を濡らした。  陰嚢は張り、尿道が痺れ、鈴口はくぱりと開いて、射精したいと主張している。射精しないと異常をきたしそうだと主張する身体を、頭に残る理性は必死に押し止めている。  アーリス候の指先が、濡れそぼったペニスの裏筋をぴんと弾いた。 「――ッ!」 「おや、たえましたね」  感心したように息を吐く男を滲む視界で睨め上げた。涙で歪むが、男の口元が愉快げに笑んでいることはわかる。  射精を我慢して震えるペニスの先に、指先が這う。短剣をぐちゅぐちゅと前後に動かしながら、アーリス候の指先がびしょ濡れになった亀頭の先端を擦った。 「や、あ……っさわ、な……!」 「射精していいのですよ。それともみなさま方に見られるのが恥ずかしい?」 「っやめ、ろ……っ」  身体の中と、ペニスへ直接与えられる強い快感に、視界がちかちかと暗く点滅する。いきたい。出したい。薬を盛られたことに気づいた時から蠢いていた、扱き上げて射精したいという欲求が頭の中を支配する。だがこの卑劣な佞臣の手で絶頂を迎えるなど、死んでもごめんだった。  限界を訴えるペニスから、刺激が離れていく。獣のように荒く息を吐きながら男の手元を視線で追うと、アーリス候は胸元から何かを取り出した。  真っ青に染められた上質な布は、ハンカチだった。細長く折り畳むと、男はそれをブラッドのペニスの根本に巻きつけた。 「な、……」 「射精したくないのでしょう」 「っ……ん、ぁア!」  ぎゅう、と根本を布で縛られ、尿道に溜まった粘液が強制的に押し出され、先端の小さな割れ目から溢れ出た滴が裏筋を辿って下り、深い青に染み込んで黒へ変色する。 「こうすればいくら感じても射精することはない」 「ひ、……ぅウ、っ」 「苦しいですか? 泣き喚いていいのですよ」 「誰、が……や、ぁ、あぁっ」  中に埋まったままの短剣が、身体の奥をぐり、と突いて押し潰す。酸素を求めて薄く開く唇から悲痛な喘鳴が漏れ、咄嗟に飲み込むも再びぺニスの先を刺激され、ブラッドは身を捩った。  ぷっくりと滴を溢れさせ続ける切れ込みに、男が爪を立てて押し込む。もはや痛みを感じることはなく、下腹と内腿を引き攣らせて喘いだ。 「ひ、ぁ……ああ、ンっ……やめ、ろ……抜けッ」 「私の短剣を咥え込んで離さないのはあなたの方ですよ、女王陛下」 「ん、っ……ちが、ぁ…」 「突かれる度にあなたの膣はぎゅうぎゅうと締めつけて喜んでいる。蛮族のけだものに抱かれてガバガバかと思ったが、案外と具合が良さそうだ」  前立腺を押し潰され、凶器のような快楽が襲う。下腹が引き攣り、ぺニスの先が痺れる。赤黒く充血して濡れた亀頭をぐりぐりと指先で擦られ、射精する寸前の強烈な快感が押し寄せる。だが達することはできない。戒めによって精液が塞き止められ、永遠に続くかのような苦痛から解放されることはない。 「アイリーン様がいらっしゃる前に失神などなさらないよう。面白味に欠けますからね」 「っく、……ぅウ、ん……!」  この苦痛から逃れられる時には、おそらくブラッドは罪人として捕縛されている。婚前の乙女を強姦したという、ありもしない罪で。真実ではないと主張したところで、信じる者はない。汚されたアイリーンが証言する内容が真実になる。彼女が脅迫に打ち勝ち、真実を告白する見込みはほとんどない。  この佞臣たちの望み通りに事が運んでしまう。アトレイアはダイハンと手を切り、そして敵と見なす。国境で小競り合いを続けるのではない、本格的に兵を差し向けてダイハンを滅ぼそうとするだろう。純潔の少女を犯すような獣が住む蛮族を滅ぼすことに、アトレイアの国民は異を唱えたりなどしない。  その前に、クバルやヤミールたちが無事に王都を出られるかもわからない。  意識が朦朧としてくる中で、ぼんやりと考える。クバルは、罪を犯したブラッドを憎むだろうか。それとも、その罪が真実ではないと信じてくれるだろうかと。 「ぅ、あ……っ」  中に埋まった短剣の柄が、ぐぽ、と濡れた音を立てて抜け出て行く。再び求めるように肉壁がひくひくと蠢き、自身の浅ましさに嫌悪しながらも高ぶった身体の衝動を抑えることはできなかった。アーリス候は嘲笑うように唇を歪め、震えるブラッドのペニスを弄った。 「腰が揺れていますよ、女王陛下」 「は、あ、っ……ぁ」 「物欲しそうに開いたり閉じたりして。別のものを入れて差し上げようか」  かちゃ、と軽い金属音がして、涙の滲む視界を差し向けると、男が自身の腰のベルトを外して下履きの前を寛げていた。露になったぺニスは軽く勃起していて、男は自身を片手で掴んで扱き上げた。 「入れる、つもりか……っ」 「構わないでしょう。あなたのここも、求めている」 「ふざけん、な……」 「まさか夫に操を立てているのですか?」  アーリス候が笑った。 「これから姦淫の罪を犯すあなたが、貞淑な妻を演じても説得力などない」  突き入れるのに十分な硬さを持ったペニスの先が、濡れて収縮する窄まりに押しつけられる。入ってくる。ぞっとして息を飲んだ時、こんこん、と部屋の扉が叩かれた。

ともだちにシェアしよう!