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第7話 一挙両得
「お疲れ様でした、はいこれ約束の出演料」
下半身に残る気だるさと腰の痛みと引き換えに、もらったお金は三万ではなくて、三十万。たった数時間で稼げる金額じゃないでしょう。
「えっ?こんなに……」
「香月ちゃんの分まで乗せるように言われたしね、今回は特別」
驚いて目を白黒させている僕に香月さんが微笑みながら声をかけてきました。
「ねえ、気持ちいい事してお金もらって一挙両得でしょう?」
それは……最後はつい変な声が出てしまいましたけれど、怖かったんですよ本当に。両得と言えるかと聞かれれば微妙です。
まあ、あそこにあんなものが入るって事自体に驚いてしまいましたし。まだ体は少しムズムズするしていますし……。
「で、さっき契約してもらった通り、斎藤ちゃんはうちの専属だからね」
えっ?専属?契約って何のことでしょうか?
笑いをこらえきれずに吹き出した香月さんが一言。
「何も読ませないで契約書にサインさせるのって犯罪じゃないの監督?」
「社会ってそんなに甘くないよねえ。という事で、次回作決まったら連絡するから、携帯の番号登録させて」
言われて素直に番号を答える僕もどうかしています。
番号を言った途端に知らない番号から着信が。横にいた香月さんがにっこりと笑いながら「それ俺の番号だから、登録して」と言っています。
「あ、香月ちゃん。プライベートと仕事は分けてよね」
監督は少し困った顔をしています。
「将生君、俺君の事かなり気に入っちゃった。次もよろしくね」
そう言って香月さん優しく髪に触りました。その笑顔を見ながら、次もってことはまた会えるのかな…ん?違う、決して会いたいわけじゃないよね。
頭を左右に大きく振って変な考えを追い払わなきゃと焦りました。
駅までタクシーで駅まで送るから待っててと、香月さんに言われ、そこに何故かはにかむ僕がいました。
[ デビュー作 おしまい]
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