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第8話 ドライブ

   バイト先の店長に健康診断をすっぽかしたとかなり叱られましたが、どこで何をしていたのかはとても言えません。  結局、あの日家に帰ってシャワーを浴びたら髪はまた黒く戻り、顔の上に以前のように覆い被さり、いつもの根暗な僕に戻ってました。あれは多分悪い夢だったのかな…と思う日々です。  男同士が絡むAVなんて見るのは俺の周りにはいないよね。少なくともいないと信じたいです!  何事もなく過ぎる平和な日々に、もう忘れようと思い始めた頃、知らない番号から着信がありました。  「あ、もしもし斎藤ちゃん?明後日の土曜日、夕方から明け方まで開けといてね。駅の北口でいいかな。4時に迎えに行くね。相手はこの前の香月君だから大丈夫だね」  「あ、はい」  ……なんで僕は普通に受けてしまっているのでしょう。  田舎の両親が知ったら卒倒するよね。未だにDVD プレイヤーもないから大丈夫かなあとは思うのだけれど。  律儀な僕は言われた通りに土曜日の3時45分には駅の北口に。そして黒いバンを探していました。すると目の前にすーっと赤いセダンが停まりました。  「将生、久しぶり。早いね」  あれ?何で香月さんですか?それより、いつの間にか呼び捨ての関係になりましたっけ?巻き戻して考えると、確かにこの前もそう呼ばれていたような……。  「今日は海の方だから、そこまでドライブデートしよう。監督には断ってあるから大丈夫だよ。将生と二人きり楽しみだね」  一旦車から降りるとドアを開けてエスコートしてくれました。何だか少しだけドキドキします。え?どうしてドキドキしてるの?  「俺ね、将生が相手だと聞いて嬉しかったよ」  そう言われ、思い出さなくてもいい、この前の出来事を思い出して赤くなってしまいました。

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