15 / 122
第15話 Jeff
"Oh, I love Asian boys!"
何か英語で大げさに手を振り回しながら、叫ぶさらさら金髪のアメリカ人が撮影現場にいます。ところで「えーじゃんボーイズ」って何でしょうか?
よく見ると香月さんに瓜二つ。え?そっくりさんの外国人の方がなぜかそこに。
「今回はね、海外版香月ちゃん?かな」
そんな変な電話が監督から来たのは一昨日の夜の事でした。よく見ると、香月さんを舘に10センチほど伸ばして、髪を金色に、目を青くしたようでした。
「大学生なんだから、英語くらい問題ないよね」
無茶振りですね。自慢じゃありませんが、英語の成績は低空飛行も良いところです。英語さえなきゃもっと良い大学行けたのにってレベルです。なのに英語くらいって……。
"Hi, I 'm Jeff."
そう言うといきなり抱きしめられました。そして、すっと離れると上から下までなめるように人の事を見ていました。あ、ふふんと鼻を鳴らしましたね。値踏みですか?
それから、指を下に向けて円を描くようにくるくると回しました。
えっと、回れってことかなと理解した僕は、ぐるっと一回転しました。すると、にっと笑って "perfect"と言いました。
あ、それくらいわかります。パーフェクトですね。何が完璧なのでしょうか。
その外国人の横には通訳のような人が……。二人で何か話していますが、まるで宇宙語ですね。小声でよく聞こえませんが、たとえ聞こえてもきっと内容はわかりませんから、大きな声でしゃべっていただいても結構です。
「すみません。少し、あなたの匂いを嗅がせてもらっても良いですか?」
通訳さん、お願いですから真顔でそんなこと訳さないでください。恥ずかしくて死にそうです。頷くとジェフと自己紹介をしてきた外国人は僕の首すじに高い鼻を近づけてきました。
すんすんと犬のように匂いをかがれいたたまれなくなりました。
"Okay. I like him"
どうやら、何らかの交渉が成立したらしいです。
ともだちにシェアしよう!