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第17話 Awesome

 僕は典型的な昔の日本人で、さらに臆病なのだと思います。Jeffという外国の人に対して既に卑屈になっています。見た目に既に負けている気しかしないのが情けなくて仕方ありません。  つつつっと手が太ももの内側を辿って行きました。  あれ、この人の手大きくて滑らかで、気持ち良いかもしれません。目を閉じて皮膚にあたる指の感覚だけを追いかけていくと……。  「うっ、はぁあ」  あ、これはまずいですね。この人の手で掻き回されることを想像して既に違う世界にイってしまいそうです。  ん、あれ?僕ってそうでしたっけ……。  隣に座った香月さんもどきの外国人が、何か囁いています。残念ながら、何を言ってるかさっぱり分かりません。ただ耳や首筋にかかる息は気持ちいいという事だけはわかります。  撮影の最初から、無表情な通訳さんが、睨むように見ています。冷静と言うより怒っているような表情です。あ、あの通訳さん慣れてるんですね。だって男同士が絡んでいるのに、とても冷静ですから。  もう僕にとっても珍しくない世界です。男であれ何であれ、気持ちいいものは気持ちいいのです。目を閉じて感覚を研ぎ澄ますと、もうカメラさえ風景の一部です。……本当にこれで、大丈夫なのかなと、賢者になるまでは考えないようにします。  香月さんのコピーさんは、優しい声で何かを囁きながら全身を弄るように手を動かしています。最中にずっと話す人もいるのだと勉強になりました。それでも甘い声のトーンに不思議な気持ちになっていきます。  「んっ、あ」  知らず知らずに声が出て反応してしまいます。上手だよと香月さんならほめてくれるでしょう。香月さんとは違うけれど優しい動きです。この前の海岸での散々な思いに比べると、いい……ついうっとりとしてしまいました。まずいですね。    確か僕は脅されてバイトしているはずです。多分……そうです。  閉じていた瞼に頬に鼻先に次々とキスの雨が降ってきました。軽く唇に触れたと思ったらそのまま頭を押さえ込まれて何度も深いキスをされました。  ああ、もう溶けそうです。心地よくて口角が上がってしまいました。離れていこうとする舌を自分からなぜか追いかけてしまいました。  "Awesome"  口元を舐めながら漏れ聞こえて来た英語に首を傾げると、「スバラシイ」と、色っぽく微笑まれてしまいました。

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