26 / 122

第26話 研究室

 それでも助かったような助からないような。  この人は本当に日本語も通じませんよね、空気も話も読み取れない聞き取れない。上機嫌の柾木さんと並んで歩いていると、何故かどんどん落ち込んでいくようです僕。  東棟から出て校門へと向かいます。今にも走り出しそうな勢いの柾木さん。  その横を、僕はとぼとぼと歩ています。本当に対照的な足取りではないですか。  「お、マサキ!」  呼ばれて二人同時に振り返ってしまいました。考えたら僕の事をマサキと呼ぶのは香月さんだけでした。ここにはいません。振り返った先には知らない人がこっちを見て立っていました。  「お前さ、研究室で呼ばれてたぞ。ゼミ、嘘ついてすっぽかしたろ。かなり教授ご立腹。すぐ行った方が良いって。お前、教授に睨まれたら卒業ヤバイぞ。」  ああ、三年生ですね。僕には関係のない話でした。  「ええっ。今さぁ、俺ちょっと用事あって。うーん。教授呼んでるって?まずいかなあ。将生君、悪いけどすぐに行くから校門のところで待ってて。ねっ?」  「え、えっ?……はあ」  踵を返すと、足早にまた東棟へと戻って行く柾木さん。仕方ないので、取り敢えず校門へと急ぐ事にしました。僕の足取りがなぜか急に軽くなったのはなぜなんでしょうね。  「将生、こっち」  微笑んでる香月さんは素敵です。あれ?僕なぜかドキドキしているのですが!  「大学かあ、ここで見る将生は、なんだか新鮮」  そう言う香月さんは、いつどこで見ても素敵です。

ともだちにシェアしよう!