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第28話 大学

   「俺も今だけは大学生な」  そう言って軽く音を立てて、頬にキスされました。  「香月さん、今日は何かあったんですか?」  こうやって会いに来てくれるなんて嬉しくて仕方ないです。もしかしたら……僕に会うためにわざわざ、そんな期待までしてしまいます。  「あ、そうだ。俺、監督に言われて将生迎えに来たんだった。戻んなきゃいけなんだ。今日の俺の相手の子インフルエンザで、ドタキャンなんだよね。代役はやっぱり将生が良いかなって思ってさ」  ああ、そうなんですね。    やっぱりそうですよね。無いですよね。あるはずがないですよね。僕に会いに来てくれるなんて、そんな幻想ありえないですよね。  今日は何だか疲れる、長い一日でした。  「それじゃあ、行かないとまずいですよね」  声のトーンが思わず下がってしまいました。香月さんがそんな俺を見てにっこりと笑ってくれました。  「でも、少しだけ学生カップルごっこしようか?」  そう言うと体育館の壁と香月さんの間に挟まれました。    これって……あれですね。壁ドンってやつですね!  んんっ?何喜んでるのでしょう。これは、ドンってってやる立場じゃなきゃいけないはずでした。  「んー、この状況も良いな。監督に学生もの提案しとこう」  そう囁くのが聞こえた後、額に、瞼に、頬にと次々とキスが降ってきました。  「どうしたの?すごく気持ちよさそうだよ、将生。さて行こうか、元気になった?」  僕が元気がないのを気にしてくれたんですね。これで元気になるなんて僕もかなり単純かも。  さて、お仕事頑張らなきゃいけません。  あ……、そういえば柾木さんどうしましょう。    ま、いいか。  うん、いいや。 [大学 おしまい]

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