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第29話 セーラー服

 代役で呼ばれた撮影……  あああ、最初に内容を聞いておくべきでした。今回の香月さんの相手役は男の娘のはずだったようです。  「こ、この服を着るんですか。せ、セーラー服ですよね」  「え、他の何に見えるっての?面白いこと聞くね齋藤ちゃん」  監督、相変わらず僕もちゃんづけですね、ブレませんね。  「ウイッグはアレね。唇は赤いほうが良いかな」  唇は、って誰が化粧するのでしょう。僕ですね、そうですよね。他にはいませんものね。あれ、なに納得してるのでしょう。  「将生は可愛いから、きっと似合うよ」  香月さん、やめてください。もう既に死亡フラグが立っていますから。  困惑する僕を他所に、作業はどんどんと進んでいきます。  こんなビデオの撮影なのにスタッフさんって黙々とお仕事としてこなしているのですね。ちゃんと自分の仕事に誇りを持っているのでしょうね。  しばらくして鏡に映ったのはどこからどう見ても女子高生。クオリティ高い、というか可愛い、お付き合いしたいです。あ、自分自身でした。  化粧の力ってすごいのですね。  「体毛薄いんだね、脚も綺麗」  香月さんに言われて照れてしまいます。ん?照れてるの僕って?なぜ?  スカートってこんなにスースーするんですね。心許ありません。ハイソックスにローファーです。  そして、下着は何だか大切なものがはみ出しそうなピンクです。  中身は完全な男性のはずですが、振り返った姿見の中には女子高生が微笑んでいます。  「はい、スタート!」  いつもの監督の声に撮影が始まりました。

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