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第36話 腹痛
「あ、ここが覗き穴ね」
実際にこんな事があるのでしょうか?
単に僕が知らないだけでしょうか?世の中は不思議で一杯です。人のセックスを覗いて、それで僕が自慰行為をする。それを作品にして、売る?覗きの覗きですね……それが誰かの需要になるのは本当に驚きです。
「大丈夫、最終的には君が犯られて終わるから」と監督に言われましたが全く大丈夫な気がしません。そして、さらには現場には約束の香月さんがいません。どうしたという事なのでしょうか。
代わりにあの香月さんに似ている外国の方と……なぜか征木さんです。嫌な予感がします、と言うより嫌な予感しかしません!
「監督……あの、お腹の調子が今日は悪くて、帰りたいんですけれど……」
多分、無理ですよね。この監督さん強引さが売りのようなものですから。
「大丈夫だよ、腹痛なんて突っ込んでもらえば治るって!」
肩をばんっとたたかれました。いえ、この前は中出しされて、お腹下しました。僕は結構繊細なんです。けれど現場のこの空気、やはり帰れません。無理ですよね。
それで、誰が誰とがどうなるのでしょうか。覗く役はやはり僕ですよね。
あれ?それとも覗かれる方ですか?
お願いですから、喘ぎ声以外の指示をしっかり台本に書いてください。そもそも「アッハァン」なんて誰も言わないですからね。
もしかして、そんな声を出してしまっているのでしょうか?
そう言えば、人様のえっちなシーンを見るのは初めてかもしれません。あ、初めてです。間違いありません。まずは自宅AVが先だと思うのですが、本物が先で、更にそれが大学の先輩ってどうなんでしょうか?
「この前、勝手に帰っちゃったでしょう?待っててって言ったよね?」
いきなり柾木さんに声をかけられてドキッとしました。
「あの、撮影があって……」
「監督から聞いたよ。男の娘だっけ、あれ見せてもらったけどいいよね、今日はよろしくね。監督に無理にお願いして将生に来てもらったんだよね」
僕はいつから呼び捨てになったのでしょうか。
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