38 / 122

第38話 悪寒

 「じゃあ次のシーンいくよ、齋藤ちゃんはあっちね」  指差された先には椅子が置いてありました。バスローブ一枚で平気で撮影所をうろうろとする自分に気がついて、軽いショックを受けています。  僕って、もうこれ一枚で外歩けそうな気がしてます。ええ、立派な変態ですね。  その前に、ここのところずっと突っ込まれてイってますが、それって男としてどうなのって話ですが……。  更にまだ童貞という、哀しいレッテル貼られたままです、自分で自分の将来が不安になってきました。  考え事をしてたら"Oh, ohhhh!"と野獣のような雄叫びが聞こえてきました。驚いてベッドの置いてある方に目をやると、そこにはびっくりの光景がありました。    え?何でしょう、あの姿勢は。柾木さんって体軟らかいですね。あそこまで脚って開けるものなのでしょうか?スタッフの声が聞こえてきました。  「スッゲーなあ、あれで素人とか。いい拾いもんしたよな監督」  「素人って?誰がですか?」  「あいつ、柾木翔太ってさ、香月さんのストーカーでさあ。一回痛い目にあえば止めるだろうって、出演オッケーして……、そこになぜか齋藤ちゃん来ちゃったじゃん。覚えてない?」  「え、ストーカーですか?」  「そうそう、ストーカー。監督、齋藤ちゃんの素人っぽいとこ気に入って、すっかりあいつの事忘れてたんだよね。そしらた今度は直接ここに台本持ち込んできたってこと」  「まさか……今日の台本って……」  「そうだよ、あいつの持ち込みネタ」  「あ、あれっ?悪寒がしてきました。風邪かもしれません?僕……帰ろうっかなあ…って。へへ、無理ですよね」  「お、そろそろ出番じゃない?齋藤ちゃん、もう準備できてんの?」  完全に今日はアウトです、本当に心の底から今日は帰りたいです……。

ともだちにシェアしよう!