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第64話 エントランス

 ドアを開けると同時にエントランスに押し倒されました。  「こっ、ここ、玄関ですよ!」  「知ってる、だってここは俺の家だよね。見てみたいって言ったのは将生でしょう、ちゃんと案内させてよ」  案内っていきなり玄関の床にご案内されたのですか?ここが目的地なのでしょうか。取り敢えず部屋にあげて下さい。  それでも香月さんの優しいキスで驚きもあっという間に溶けて無くなりました。  「そんな気持ちよさそうな顔するとこのままここで挿れちゃうよ」  いえ無理です、撮影と称して玩具でさんざんイタズラされてフラフラです。そして意識のおかしい時に現場でプロポーズされました。あまりにも強すぎる興奮に身体も心もついて行けなくて、呆けてしまっていたら香月さんが軽く頬にキスしてきました。  今その時の会話を一生懸命に思い出してみています。たしか……  「将生、本当に結婚してくれるよね、俺は真剣なんだけれど」  「え、ええっ?僕はまだ二十歳です。結婚とかそんな早すぎます」  いやいや、冷静になろう自分、否定するのは年齢じゃなかくて、そもそも結婚ってところのはずです。  「取り敢えずお試しで、同棲からスタートかな」  鼻歌を歌ってますけれど、まだ何も返事はしていません。  「一緒に住むって……」  「ああ、そうか。俺の家に来てみて、きちんと案内して気にってもらわないとね」  ……確かこの流れで、今ここですね。  思い返してみたのですが、僕が香月さんの部屋を見たいと言ったのは、どのあたりのことでしょう。反芻してみてもやはりありません。香月さんいつものようにご自分の頭の中で全て完結してしまいましたね。  「んー?こうやって抱き合っているのも日常と違って楽しいけれど、入り口でつまづいてたら部屋回れないよね。仕方ないか、後にしようね」  後に?……後って……たった今撮影から解放されたところですよ。またまたナニかいたすのでしょうか。

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