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第76話 パイン

 ええ、何か忘れている気がしてました。そう、香月さんの携帯がなって何を忘れていたのか思い出しました。  「はい?あ、そうでしたね。……ええ、30分後でどうですか?……はい、そうです。一緒です」  香月さんはニコッと笑うと、こちらを見ました。すっかり忘却の彼方で、思い出したくなかった現実がやってきました。  「将生、昨日の撮影って途中でギブアップして止めたよね。俺、すっかり忘れてたよ」  ええ、僕も忘れていました。と言うより昨日でしたでしょうか撮影?  結婚だとか、同棲だとか、急転直下、対応しきれていません。頭がついて行けてません。  「ん、じゃ、行こうか?」  やっぱり行くんですね。後は明日ねって確かに香月さん言っていましたが、それに同意した覚えはありませんが。  「あの……何の撮影が残ってました?」  おずおずと聞いてみました。  「ん?監督がパッケージ用の写真で後は終わりだって」  え……?僕は、パッケージにまでなってしまうのでしょうか?  そんな大人のお店に僕の両親が行くとは思えないのですが、親戚が……可能性はゼロではありませんよね。  「こ、香月さん!髪、髪染めて行きたいです!」   「んー?美容院による時間は無いな、なぜ?」  「僕だと分かると困りますから、お願いします」  「俺は自慢したいけれど、他でモテても困るからなんとかするかな……」  近くのドラックストアに立ち寄ると、何かを一生懸命探している香月さん。  「あ、これこれ!アッシュ・パイン」  「パイン?黄色ですか?」  「南国フルーツカラーだよ。将生はね、綺麗な色が似合うの絶対に、可愛いのそろそろ自覚して」  可愛いって言われて照れてしまいました。  「そうですか?何か香月さんに言われたらそんな気になってしまいます」  さあ行こうと、差し出された手を嬉々として取ってしまいました。  街の喧騒も人の視線も、もう気に…ならないわけないのに、僕は一体どうしてしまったのでしょうか?ね?

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