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第79話 たんぽぽ
「何?目を白黒させて?かわいいね、こんな素朴な子どこでユズは見つけてきたんだろう」
「あっ、あの薔薇の様なオーラが同じですから気が付くべきでしたね。すみません!」
「オーラって……面白いこと言うね。撮影始めるけど、準備は良いのかな?」
「はっ、はい!でもあの……僕はどうすればいいのでしょうか?」
「動画専門?スチールは初めてなの?」
初めても何もありません。この業界ではぴかぴかの新人です。
「お兄さん」
「あ、オミでいいから。ん?お兄さんと言われてもピンとこないな。ところで、ユズと付き合ってるのかな?あいつの恋人だよね?」
くくっと小さく笑いながらカメラや機材を準備しています。話し上手で仕事はプロ、やはり同じようにプロなのですね。
「ち、違います」
まだ、違いますよね?結婚するの同棲するのという話はありましたが正式にお付き合いを申し込まれた気はしていません。恋人って跪いてお付き合いお願いしますというのが必要ですよね?
「へえ、ユズは髄分とご執心だったけど。そうか、まだユズのものじゃないのか」
あれ?何故かオミさんの目つきが変わってきているような気がします。
「まあそれはどっちでも良いか。ところで、何パターンか撮りたいのだけれど」
カメラを手にした途端、まるで甘い匂いまでしそうな雰囲気をかもし出しています。その見事な笑顔は香月さんと同じです。そっくりの顔に熱い視線を送られて、変な気持ちになってきました。
「……将生って、そんな顔もするんだね」
ああ、よく聞くと声も全く同じです。何だか、嬉しくてぞくぞくと変な気持ちになって来ました。
「そのままカメラ見つめてくれる?少しカメラに慣れてもらうだけだから」
カシャッ、カシャッとシャッター音が響きます。不思議なリズムです。
「将生…上手だ……かわいいよ、いい子だね」
香月さんと同じ声で、いつものように褒められて、何故かきゅんとしてしまいます。
「野に咲くたんぽぽみたいな素朴な子って監督言ってたのに。最初は田舎っぽい感じの子だと思ったのに。やれやれ、これじゃあユズがやられるはずだな」
ん?何の事でしょう?
「さてこれから本番、服を脱いでこっへおいで」
ああ、そうでした。今日はお仕事なのでした。
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