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第81話 ヤドリギ

 監督がしばらくして戻ってきました。  「オミちゃん、この時期やっぱり本物のポインセチアは無理。どうこの造花でいけそう?」  発泡スチロールの雪と緑のリースが次々と運び込まれ、すっかりスタジオはクリスマス仕様になりました。  香月さんはかなり怒っていますし、どうしていいのかわかりません。  監督とオミさんだけがにこにこしてします。  僕は……..一体何に巻き込まれてしまったのでしょう。  「カレンダーの撮影も引き受けてててさ。なのに納得できるモデルの子がいなくて、特に12月は艶っぽく仕上げたいじゃない?」  じゃない?って言われても返事に困ります。  「監督にもモデルの紹介頼んだけど、さっきの将生のような表情できる子がいなくてね。……ということでよろしくお願いします!」  ……え、カレンダーですか?さすがにそれはまずいでしょう。  書店にでも並ぶようになったらもう隠れられなくなってしまいます。  ああ、斜め後ろから怖い、痛い視線が飛んできます。  ぞっとします。香月さん黒いオーラ出てますよ。  組んだ腕の上で指先がトントンと動くのさえ見えないのに分かります……。  あれは香月さんがイラついた時の仕草ですね。  まずいことになっていませんか?  オミさん、絶対に気がついていますね。  これワザとでしょう。  ……そんな不穏な空気の中、オミさんがすっと近づいてきました。  「ねえ将生、これ知ってる?」  いきなり赤いリボンでぶら下げられた薄緑色の葉っぱのついた木の枝を指さされました。  「……なんですか?」  そう答えるのと、ほぼ同時にオミさんの唇は僕の口を覆ってしまいました。  ……全く同じと思っていたのに、キスのやり方はちょっと違うのですね。  あ、香月さんより深いかもしれません?  つい、離れていくオミさんの口元を目で追ってしまいました。  「オミ、何してんだ!将生っ、離れろ!」  殴りかかろうとする香月さんは監督に抑えらこまれてしまいました。  ああ、何故か一瞬うっとりしてしまいました。どうしましょう。    「これね、ヤドリギ。この下に立つ人は誰にキスしてもいいんだよ、ごちそうさま将生」  ……えっ???でも、それってクリスマスの日のことですよね。  「さっきの顔、その表情をカメラに向けてね」  そう言うとオミさんは、服のボタンを器用な手つきで外してくれました。  あ、指の形は香月さんと一緒ですね……。

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