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第86話 生クリーム
「将生は、今までの子とは違うから。無理」
「へえ、ユズにそこまで言わせる?ふーん、そうなんだ。面白い。ねえ、将生君、俺と付き合ってみない?」
「ええっ?」
突然です。やっぱり突然です。ご兄弟なんですね。痛感しました。
「だから!将生は俺ともう付き合ってるんだってば」
え?そうでしたっけ???同棲だとか言ってはいましたけど、僕達は交際してますみたいなところ、無かったような気がしていますが。
オミさんは香月さんの話を無視してこっち見て微笑んでいます。やっぱり都合の悪い事は聞こえないんですね。
「ユズが、ローション苦いって言うからさあ。生クリームとかいろいろ試してみようかなあと、揃えたんだよね。他にもネットで見つけて、目新しいのも買ったけど、最近お呼びがかからなくて宝の持ち腐れ」
生クリーム……ケーキ以外では見たことありません。あ、原宿で食べたクレープにも入ってような気がします。そう言えば、シチューにも入っていたかも知れません。
多分、そう言う意味じゃないでしょうけれど……。
「オミさん、あの……何の話だかよくつかめてないのですが」
「メープル味のラブシロップ。食べらるローションってやつとか、生クリーム。甘くて、可愛いから将生君にぴったりだと思わない?で、ちょっと試しにこれから俺の家行こうかってお誘い……」
ちょっと何を試すのでしょう。まあ、想像つきますけど。最近、成長しましたし。
「兄貴……一人で帰れよ、もう」
「ユズうるさい、俺は将生君と話してんの。使ってみたいよね?」
だんだん事態が飲み込めてきましたが、香月さんと同じ方向性の恋愛なんですね。
「あの…僕は男ですよ?」
一応、確認はしておきましょう。そこは大切ですから。ん、あれ?僕の恋愛対象は男性で間違い無いのでしょうか?どっち?んん?どっちでしたっけ?
「え、女の子だったら誘うわけないじゃん」
やっぱりそうですか、まあ今も服着てませんし勘違えるはずないですよね。
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