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第88話 はちみつ

   「あの、オミさん?僕はどうすれば……」  香月さんが出ていくと途端に心細くなりました。オミさんは真剣な目です、お仕事モードなんですねきっと。  「将生、こっちへおいで」  双子って同じ声ですよね、いつものように呼ばれて香月さんに呼ばれた時と同じようにどきどきしてしまいます。これは仕事だと自分に言い聞かせました。  「ねえ、これでやっと二人っきりだね」  微笑むオミさん。なれ?なぜか色っぽいですね。そんな?え……そういう展開ですか?そんなはずはありませんよね。これはお仕事ですよね。だから人払いしたのですよね?  「ユズがいたんじゃね、保護者つきだだし何もできないしね。少しはお楽しみも必要だし、遊びも必要だよね?」  お楽しみ?遊び?それは何をして楽しむということなのでしょうか。  それに香月さんは保護者ではなくて、恋人?あれ?僕はいつから香月さんのことが好きなのでしょう?何だか順番がいろいろ間違ってるようです。真剣に考えていたら、オミさんにつつっと、腰を撫でられて身体がビクンと反応してしまいました。  「そうだね……とりあえず……」  オミさんが周りを見回しています。  え!?ええっ?やっぱりそうなんですか?  ど、どうしましよう。これはきっぱり断るべきですね。振り返るとオミさんが全力で俺に甘い笑顔を向けて来ます。あの顔は香月さんです。ああ、もう何がなんだかわかりません。  「将生、おいで。こっちのベッドに来て」  大変です、どうしたら良いのでしょう。あの笑顔は同じですが別物ですよね。言われた通り、ベッドに腰掛けながらどう反応していいのかおろおろしてしまいます。  「さっきみたいな、甘えた顔。溶けそうな顔見せてくれる?その顔でカメラ見上げてみようか」  「えっ?写真撮るんですか?」  「もちろん……ん?あれ?将生、何か違う事期待してたの。へえ、そうなのか。じゃあ後でね」  「ち、違いますっ!」  「真っ赤になって可愛いね、将生って甘いハチミツ入りのホットミルクみたいだよ。後で味見させてもらうからね」  軽く頬に口づけられました。そんなオミさんのキスも少し甘いのですね。

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