89 / 122

第89話 黒みつ

 カメラのシャッター音って……なんか良いですね。レンズ越しに見つめられるのが最近では快感です。  「将生、可愛い」  あれ?今のってオミさんの声ですよね? 声は本当に同じなんですね。他のつくりも同じなのでしょうか。  ベッドに腰掛けていたら、ついうとうととしてしまいました。何か今日すごく疲れました。このまま眠ってしまえば気持ちよさそう。瞼がだんだん重たくなってしまって、くっつきそうです。  「ま…さ…」  遠くで誰かに呼ばれたような気もしていますが……。少しだけ、少しだけ仮眠させて下さい。ちょっとゆっくりしたいです。  うとうとしていたら、何だかキモチイイ……です。  「んっ。あぁ。」  つるって…んわっ?  なぜかシャッター音もしなければ、照明が仄暗くなっています。肌をつるつると滑る手が中心に向かって動いていいます。手?誰の手ですか?  漂う甘い匂いがします。何でしょうこれ?  突然、脇腹をざらりとした感覚が走ってびっくりしました。  「甘くて美味しい。」  あれ?香月さんの声ですね。ん?オミさん?どっち?  「んん。んっ」  とろとろと、粘度のある液体が身体に垂らされています。その身体にまとわりつくその液体を指先で肌に伸ばされているようです。  「香月さ…ん?」  「ん?将生、美味しいよ」  美味しいよ?何の話でしょう。寝ぼけた頭で考えます。これって?どう言う状況なのでしょうか。誰かの手が……あれ?手って一、二、三...三本っ?  慌てて飛び起きました。目の前には同じ顔が二つ。身体はなぜかベトベト。  「香月さんっ!何してるんですか?」  「「え?」」  はい、お約束通り同時に二人答えますね。でも二人とも何やってるんですか?  「いや、あんまり気持ちよさそうで……。起こすのも可哀想かなと。監督が差し入れにバニラアイスを買って来てくれたから、ユズに頼んで黒みつを買ってきてもらったんだよ。将生も食べる?」  いえ、その説明は求めていません。身体中がベトベト、ぬるぬるの説明を求めています。  「将生、美味しそうだなって言われて、つい..…」  ついかけませんよ。人に黒みつは。  「ねえ、もう汚れついてだよね。ちょっと遊んでみない?」  そ、それってどういう事ですか。香月さん!目がいつもの妖しい色をおびています。  「シェアはしないって言いましたよね?しないんですよね!」  「うーん。シェアはしないけど、ちょっと味見くらいなら、良いかなって。自慢したいじゃない?将生のこと。」  写真撮影用のスタジオじゃないのですか、ここは。そんな用途に使っていいのでしょうか。  そして、なんで香月さんが二乗になっているのでしょうか。味見って、何を味見するのですか。そりゃ、ここまで来たらナニするのでしょうけれど。  誰か助けてください。もう....アウトですよね。

ともだちにシェアしよう!