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第93話 スキニーパンツ
「無理です……こんな格好では戻れません」
たとえ隣でも嫌です。こんな格好で外に出るのは無理でしょう。夜風に吹かれただけでも泣いてしまいそうです。
「そうかな?うーん、可愛いと思うけれどね。仕方ない、ユズに服を持って来るように電話すればいいか」
あ、えっとそれは危険です。この格好でオミさんの家にいるという事実が……何かいろいろと地雷を踏みそうです。けれどもこの格好で帰るのは更に危険な気がします。
「オミさん、何でも良いので下に履くものを貸してください」
「そう?やっぱり必要かな、少し待っていてくれる?」
ハーフパンツとか誰でも1枚くらいは持っているはずです。そう思って待っていました。すぐにオミさんはクローゼットから黒いパンツを出してきてくれました。
「これロールアップして履いて」
「ありがとうございます」
やはり優しいところは同じですねと感心しながら、受け取りましたが。
「これスキニーパンツですよね?」
細くてぴったりしたシルエット、さらに素材はナイロンです。これを素肌に?こんな細いシルエットのパンツを下着もつけずに履くなんて無理です。
「あの……さすがに、下着は貸してはいただけないですよね」
声がだんだん小さく力なくなるのは何故でしょう。
「さあ?新しいのあったかなあ?」
くすくす笑いがずっと聞こえています。ああ、からかわれています。その時、インターフォンが鳴りました。これは絶対に香月さんです。「お醤油を借りて来るように」と言われてからもう時間が経ちすぎていますから。
「はい?あ、ユズかな」
ええええっ。先に玄関へ行くのですか?そちらですか?先に僕の下着を、せめて何か下に履かないととんでもない絵面です!
「お、オミさんっ。先に下着っ!下着をくださいっ!」
「どうしようっかなあ……ユズに見られるの嫌?」
「嫌です!」
「じゃあ仕方ない、少し待っていて」
僕の手を引いて寝室のドアを開けると、下着と僕を中に隠してくれました。良かったです!オミさんも優しいところがあるのですね。ほっとしました。
手探りで壁のライトのスイッチを探してつけました。
あれ、この部屋のライトは淡いピンク色ですね。ふと見るとベットシーツが紫、紫色です。ご兄弟そろって趣味は他のかたと一線を画していませんか。いえ、気にしてはいけませんね。僕には関係ありませんから。そんなことより早く下着を身につけなくてはいけません。袋から新しい下着を取り出しました。部屋の外からは複数の足音がします。
「将生!大丈夫か?どこだ?どこに居る?」
今、まだ返事はきませんっ!
「兄貴、将生をどこへやった?」
「さあ?どこだろうねぇ?」
ガタガタと音がします。早く履かなきゃ。慌てて下着を身につけました。
「ええっ??」
思わず大きな声が出てしまいました。
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