99 / 122
第99話 学ラン
褌事件で、すっかりしょげてしまった僕をなだめようと香月さんが僕のアパートに送り届けてくれました。お試し同棲を諦めてくれたのでしょうか。服をとっていろいろと処分しておいでと言われたのは聞かなかったことにしましょう。
平穏な日々が戻って来ました。そして翌々日、そうたった二日後の事です。嵐がやってきました。
眠っていたら遠くで音がします。ドアが勢いよく叩かれてますが、いったい何時なのでしょうか。寝ぼけまなこで枕元の携帯を確認しました。朝の六時前です、こんな時間に誰でしょうか。まさか香月さんなのですか!?
慌ててドアを確認もせずに開けると、詰襟の高校生が満面の笑みをたたえて立っていました。
「あの、どちら様ですか?」
「初めまして、僕は高原と言います」
「タカハラさん?何のご用ですか?」
「これは、あなたですよね?」
その手にしっかりと握られていたのは、紛れもなく僕の悲しいデビュー作品です。
「え、なぜそれを?と言うよりなぜここに?」
「やっぱり本当だったのですね!じゃあ入らせてもらっても良いですか?」
話が見えません、何のことでしょう。まさか僕は高校生に脅されるのでしょうか。
「へえ、意外と質素な部屋ですね。稼いでらっしゃるからもっと贅沢をしているのかなと思っていました」
「何の話ですか?と言うより、何のご要件ですか?」
「分かってるでしょう?僕、ちゃんと掲示板見てきたんですよ。他の人に抜け駆けされないようにわざわざ朝早くに来たんですから」
話が全く見えません。掲示板って何の事でしょう。まさか?まさかの香月さんフアンの襲来でしょうか!?
「あの話が見えていないのですが、香月さんでしたらここにはいませんよ?」
「香月さん?ああ、この男優さんのことですか。その界隈では有名ですよね。最近、あの人モデル業もやってますよね。僕は苦手ですよあの人。綺麗すぎて、人間味がないですから」
という事は香月さんのファンではないですね。では、何の用でしょう。
「あの、何をしにここへ?」
「え?もちろん、あなたにお相手を願いたいと思ってですよ?」
お相手?僕が、この高校生の何の相手をするのでしょう。
「あの、僕は香月さんじゃないので」
「知ってますよ、僕の好みはあなたですから」
えっと、状況がのみ込めません。僕が良いと言われても、何を求められているのか理解できません。
「あの?何の話なのか、全くついていけていませんが」
「とりあえず、抱かせてください」
え?えええっ!
こ、高校生?ですよね。
「こ、高校生だよね」
「え?大学生ですよ。これは去年まで来ていたものです。この後大学行きますから、急いでます。ということで、お願いしますね」
何がどうしてこうったのでしょう。それよりこの可愛い顔した幼い男の子から出てくる言葉とはとても思えません。
そばににじり寄ってくる男の子はあどけない顔した可愛い子なのです。
「ちょっと、待って!待ってください。僕は、香月さん以外無理ですから」
その時、アパートの扉が突然ガチャっと開きました。誰か助けてくれる人?香月さんなのでしょうか?
ともだちにシェアしよう!