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第100話 スーツ

 今朝は一体何があったのでしょうか?扉が開くと同時に会ったこともない、見知らぬ男性が突然入ってきました。  「あれ?先客か?」  先客?あ、この学生さんですね、お客様ではありませんが。  ところで、あなたはどちら様でしょうか。明らかにこのアパートには似つかわしくない高そうなスーツを着たビジネスマンです。  「へえ、本当に普段は余り目立たない容姿なんだね。噂は間違ってなかったな」  確かに目立ちませんよ。それが、どうかしましたか?あなたとは違いますが、そんな事を言われる筋合いはございません。そもそも誰なのでしょうか。  「僕が先ですから、出てってくださいよ」  うーん、ややこしくなってきました。何をこの大学生は言っているのでしょう。先?って何の話でしょうか。  「どっちにするのか、それを選ぶのは彼だろう」  そのビジネスマンは、僕を指さして微笑みました。  「ねえ、このガキと俺どっちがいい?」  選択肢の意味がわかりません、何を選ぶんでしょう。薄々気がついてはいますが、認めたくありません。あのDVDをお持ちということは、つまりそちら側が対象の方々ですよね。。  「すみません、どちらも無しです。お帰りください」  「ちょっと待って!出会いサイトの板見てちゃんと来たんだぞ」  「そうですよ。僕だって、一睡もせずに始発で来たんですから!」  同時に二人で大きな声を出されても言われている事がまだ見えてこないのですが。  「出会い系サイト?何の話ですか?」  「つまり、君は俺たちが好みではないから、断ろうというんだね。そんな詭弁は許さないよ」  詭弁も何もありません、だって身に覚えのないことで詰められているのですから。  「ですから、出会いサイトなんて知りません!お二人共お帰りください」  「ちょっと待ってください。僕の携帯、これ見てくださいよ」  ”お相手を探しています、寂しいです。どなたか温めてください。いつでも大歓迎!〇〇区〇〇町xxxです。僕はアパートで独りぼっちです。二階の203号にいます。あなたの素敵なコスプレ姿を期待しています。一番お似合いの格好でぜひいらしてくださいネッ?”  とんでもない恥ずかしいメッセージ付きで、僕の住所と僕のDVDの写真がいくつか貼られていました。ぼ、僕じゃないです。そもそもこんな言葉遣いしません。  だれがこんな書き込みをしたんのでしょう……僕の住所を知っていて、出演作品を知っている人なんて限られています。  まさか、香月さんが一緒に暮らすために?いやいや、それはあり得ません。頭を抱えて悩んでいたら、ぐいっとそのビジネスマンに引き寄せられました。  「このメッセージ見たから、俺は一番のお気に入りのスーツで来たんだよ。掲示板は大騒ぎになってたよ、本物かどうかって。俺は思い切って来て良かったと思っているよ」  「ですから、僕じゃないです」  「でも、本当にここに居るじゃないか。これを見た他のやつが来る前にさっさと取り掛からない?別に俺はそこのガキとで3人でも構わないけど、これ以上増えるのはちょっとな」  「僕じゃないです、これ書き込んだの。絶対に!」  「何を今更言っているんですか。僕も大学には一応行きたいんですから早めにお願いしたいです。ドキドキして眠れなくなったんですから、責任とってくださいね」  責任も何も、これを書いたのは僕ではないことそれだけは間違いありません。ずいっと、近寄ってくる二人に貞操の危機を覚えた時に、またインターフォンがなりました。  「チッ、誰かまた来たのか」  ビジネスマンさん、口悪いですよ。......え?誰かまた来たって?どう言うことですか。  「鍵、かけてなかったか?失敗したな」  この先の展開を誰か教えてください!

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