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第101話 軍服

  扉の所に立っていたのは、軍人さん?でしょうか。何故か軍服を着たいかつい顔の男性がいます。  「あの、どういうご用件か聞きたくはないのですが。一応、お伺いいたします」  「もちろんです、お相手を探していらっしゃるとのこと」  予想通りの低い声で、淡々と話し始めまして。これは最後まで聞いても面倒なだけですね。慌ててその人の言葉を遮りました。  「だとしたら、もう充分に事態は込み合っていますので、ご遠慮くださいませんか」  怖いですからおずおずと小さい声で、でもきっぱりと言いました。  そのいかつい顔の軍人さんは、一瞬固まると......。  「えーーー、んもう何よぉもう今日は締切なのぉ?」  ん???あれ、この方はもしや。何故か、急に動きが変です。姿かたちとは似つかわしくない、声のトーンになりました。  「やだあ、私ったら遅かったのかしら。じゃあ、順番待っているから、とっとと済ましてちょうだいね」  とっとと済ますのですか?何を?  「あの、帰ってくださいとお願いしているのですが」  玄関で押し問答をしているのが待ちきれなくなったのか、奥から二人が出てきました。  「何してるんですか?僕、大学へ行くので最初にお願いしますね」  「え、今度はレイヤーさん来たの?」  件の学生もビジネスマンも余計な口をはさんできます。  「え?もう先に二人も来てるのね。あなた方、どのくらいかかるかしら?」  時間の問題ではなくて、根本的な問題が違っています。  「あの、みなさん勝手に話を進めるのやめてください。僕はそもそも出会い系の掲示板なんかに書き込みはしていませんから」  これ言っても無駄ですよね、多分無駄です。だって、僕の周りに集まる人って、いつも僕の都合は最後に考える人ばかりですから。  「え?でも、もうここまで来ちゃったんですから、僕としてはどうしてもお相手をお願いしたいですね」  やっぱり、そうですよね。誰も聞いてくれないですよね僕の都合は。それより学生さんこんなところで寄り道は駄目でしょう。まっすぐ大学へ行ってくださいねと心の中で思いました。  ビジネスマンがまるで素晴らしいアイデアを思いついたかのように手をぽんと打つと目を輝かせました。  「そうだ、アミダくじで順番を決めましょう!」  いえいえ、ですから、順番の問題ではありません。帰ってくださいと言っています。誰が掲示板に俺の個人情報を載せたでしょうか。思い当たるのは、香月さんと......後は......僕の内緒のアルバイトとここの住所両方にリーチ出来る人は翔太さんだけです。  玄関に勝手にアミダくじを始めた三人を残して、部屋に戻りました。携帯を探して、連絡しようとしましたが、僕は翔太さんの連絡先なんて知らないことを思い出しました。  ええ、そうでした必要ないと思っていましたし、実際必要なかったですし。香月さんに聞くべきですか?でもそれって更に事態を悪くしそうです。あ、監督ですね!  「もしもし?将生です......はい、そうです斎藤です。至急教えていただきたいことが......」  これで事態は本当に打開できるのでしょうか?

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