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第103話 ナース服
「大丈夫だよ、心配しなくてもきちんと将生のコスチュームもあるから」
……え?そこ、そこはいりません。嬉しそうな翔太さんが取り出したのはまたまた白衣です。
「ね?ナース服!いいでしょう?俺とお揃いみたいで」
いいでしょうとはどういう意味ですか?何故に僕が喜ぶと思ったのでしょうか。
「着ませんよ」
思わず遠い目になってしまいます。
「え?ピンクの方が良かった?最後まで悩んだんだよねえ。やっぱりピンクだったか」
違う、違う、違います。色の話ではありません。この人たちは本当に僕と同じ言語で話しているのでしょうか。通じる気がしません。
「そうですよ、ピンクの方が似合いますね。僕はそう思います」
「お、学生さんわかっているね。俺もそう思うわ」
「学生って名前じゃ無いです、高原です」
「柳田です、初めまして」
とうとう名刺取り出して、挨拶始めてしまいました。大丈夫なのですかビジネスマンさん。
「あらぁ、お話に入れて」
軍人さんすっかりキャラが崩壊しています。みんなが互いに親交を深めているこの隙にと思ったのですが、腕はしっかりと翔太さんに掴まれていました。
この人は必要のないところは抜けていません。
「とりあえず、今日は白でも仕方がないのでは無いですか?」
高原君、偉そうに言っていますが僕は着ませんからね。
「そうだね。将生、着替えさせてあげるよ」
Tシャツを引っ張ると伸びます。安いものですが、お気に入りですやめて下さい。
「そんなものは、着ません!」
「え?いきなり裸なの?俺は良いけれど、脱がせる歓びも捨てがたいよなあ」
「そうですね」
そこの大学生!やたらと話に入ってくるのはやめなさい。さらにややこしくなります。四人に詰め寄られて身動きが取れません。
その時、玄関の扉がリズミカルにノックされました。
「すみません。お荷物をお届けにあがりました、宅急便です」
チャンスです!この機会を逃したらここからは、抜けられません。今、助け求めなければだめですね。このままでは餌食になってしまいます。
「はーい、今行きます」
ドアに向かって大きな声を出しました。
「翔太さん、手を放してください。宅急便を受け取らなくてはいけないのですから」
「ああ、そうか。俺、手を掴んでいたっけ?」
にやっと笑うと、やっと僕の手を開放してくれました。ハンコの代わりに携帯だけ掴んでドアへと急ぎます。
ドアに到着すると、ほぼ同時にドアが開きました。
「た、助けてくださいっ!」
半開きのドアの向こうの影に声を書けました。良かった、これで俺助かる......のかもしれません。
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