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第104話 宅配便

 そこに立っていたのは宅配便業者の制服を着た香月さんです!ああ、助かりました。けれど何故宅配業者のコスプレなのでしょうか?  今はそんな事より、この場から逃げるのが先決です。  「香月さん!助けてください!僕、襲われそうなんです」  「将生、こっちに来て」  香月さんは僕をドアの外に引っ張りだしドアを閉めると、ドアノブと真横にある窓の外柵に手錠を二つつなげてかけました。  えっ?て、手錠ですか?  一体、何に使うつもりでこんなものを持ち歩いてるのでしょうか。大騒ぎになっている部屋を後にして、急いでアパートの階段を降りました。  そこに停まっていたのはあの黒いバンです。監督でしょうか?  「斉藤ちゃーん、どうした?やっぱり大騒ぎかあ」  「ありがとうございます!香月さん連れてきてくれたの監督なんですね、助かりました!」  「とりあえず監督、スタジオに」  香月さんが監督に言います。スタジオ?あれ、結局撮影なのでしょうか。監督は車を出しなから面白そうに笑っていますし。  「電話もらって、何があったのかとネット調べたら面白い事になってるからさあ」  「面白くないです、大変でしたよ。香月さんが来てくれなければ大変なことになるところでした」  「そう?丁度スタジオに来ていてさ、コスプレやってみたいとか斎藤ちゃんをヒーローみたいに助けに行きたいって言うし、でも車持っていないから乗せてってくれって言われてね」  えっ?!車持っていますよね?あの赤いスポーツカー?  ……まさか僕は大変な勘違いをしているのでしょうか?  「あの……まさかとは思いますが、柚人さんですよね?」  「え?俺とユズってやっぱり区別つかない?」  制帽を脱いで、メガネをかけると……ああああ、オミさんです。  「あの、香月さんは……」  「あのね、俺も香月だから」  そうでした、いつも困った時にヒーローのように助けてくれるのは弟さんの予定なのです。  「あの、柚人さんは?」  「ああ、あいつなら昨日から撮影で帰ってきていないよ」  だから独りでアパートにいてもそっとしておいてくれたのですね。お仕事でしたか、でも撮影って、他の監督さんの作品にも出てるのでしょうか?  「撮影ですか?」  「最近はモデルの仕事の方が忙しくなってるからね。昨日からは雑誌の撮影だよ」  「雑誌って」  「あ、普通の女性向けのファッション誌、ユズはもてるから気を付けないと盗られちゃうかもね」  にやにやと嬉しそうに笑うなんて、オミさん人が悪いです。  「オミさんだって同じ顔なんですし、モデルのお仕事されたらいいんじゃないですか。きっとモテますよ」  「俺は昔から写真撮られるより撮るほうが好きなの。でもね将生とならユズの代わりもいいかなと思ってさ」  「え?どういうことですか?」  「あ、香月ちゃん忙しくなっちゃったからさあ、次のやつどうしようかと困ってたのよ。そしたら斎藤ちゃんの相手ならってオミ君引き受けてくれたから今日打ち合わせしてたんだよね」  「え、えええっ?いえ、それ駄目な奴です。本当に無理です!」  香月さんに殺されてしまいます。一難去って、また一難です。僕に平穏な日々が戻って来ることはあるのでしょうか。

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