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第108話 ロングアイランドアイスティー
「はい、これ」
香月さんがグラスに入った飲み物を持ってきました。紅茶……アイスティーなのかな?これなら飲んでも大丈夫かもしれません。お酒には弱くて、いつも意識が無くなるから飲まないようにしていますから。アルコールはだめです。
「ありがとうございます、いただきます。って、どうやって飲むんですか?香月さん、何とかしてくださいっ。」
「んー、どうしようかなあ。外しても逃げない?」
え……逃げない?今さら貴方が言う事でしょうか。驚いてしまいます。
「逃げてどこへ行けるんですか?」
香月さんは、んー?んー?と繰り返しています。あれ?やっぱり酔っているのでしょうか?
「よし、こうしよう」
ストローをさしてこっちへ持ってきましたね。自由にしてくれるつもりはさらさらないようです。
「喉乾いたでしょ、飲んで」
そっちじゃなくて、とりあえず外しましょうよこれ。でも本当に喉が乾いていて一気に飲み干してしまいました。……あらっ…あれ……。
今飲んだのって……?
「カクテルの一気飲みって初めて見た。」
香月さん、楽しそうに笑い出してしまいました。なぜか、ぐるぐると景色が廻っています。
「かくて……る?」
「ロングアイランドアイスティー、別名レディキラーと呼ばれるお酒だよね。将生、アルコール強いの?」
えっと、前回飲んだ時は前後不覚に陥って翌日ひどい目にあいましたね。でもまだカクテル一杯だけですから、平気なはずです。
うん……大丈夫。
「こうっ…づきっ、にゃっ」
え?今のは何でしょうか、「にゃって」にゃって……る?
ああ、もう男の子でも人間でもなくなってしまったようです。でも気持ちいいです。ふわふわと浮いています。うん、宙に浮いています。これはこれで良いのでしょうか、え?本当にいいのでしょうか。
「将生、ところで……それ、そろそろ外したら?」
外したらって、これつけたの香月さんですよね。自分で外せない状況だということをわかっているのでしょうか。
「それ、おもちゃだし。鍵かかってないから引っ張れば外れるでしょ?」
え?ええっ?それ今言うものでしょうか。今までの努力は何だったのでしょう。
また僕は騙されたのですね、安定してますこの立ち位置。
そのうちに人間不信に陥ると思います。というより既に誰も信じちゃ駄目だと学ばなきゃいけないのかも知れません。
「そろそろ始める?」
香月さんは少し酔っていて楽しそうで。
始めるって、やっぱり宴会じゃないですよね。まあ、もう慣れました。
え?慣れてしまって良いのでしょうか……。
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