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第120話 看病
「将生、今日出かけるのは無理だね」
心配そうに頭を撫でられて申し訳なくなりました。行きたがっていた舞台のチケット、無理を言って臣人さんに手に入れてもらったというのに。
「すみません、熱が下がれば行けるかもしれません」
「無理でしょ、知恵熱にしちゃ高いよね」
知恵熱!?今さらっと余計な事を織り込みましたね。僕だっていつまでも成長しないわけじゃありません。
「香月さんせっかくのチケット……良かったら臣人さんと一緒に行って来てください。僕は一人でも大丈夫ですから」
「なに?俺に将生を一人置いて出かけろと言うの?」
そんなことを言われてたら嬉しくて舞い上がってしまいます。久々の休日なのに出かけることも出来ないなんて、申し訳ないと思っていましたが、なんだか嬉しい結果になりそうです。
「なんだか……愛されているって嬉しいですね」
きっとこのくらいデレても許されるでしょう。
「もちろん、こんなチャンス逃したら、もったいないでしょう?」
え、今香月さん今何と仰いましたか?チャンスと聞こえましたが空耳でしょうか。これはまたいつものあのパターンですか?
「僕は、あの熱が……」
「ねえ、将生これ覚えてる?」
嬉しそうな香月さんが取り出したのは出会った日のあの日着ていた白衣。本当だ懐かしい……、違う!しっかりしろ自分!何でそんな物騒なものが、なぜここにこのタイミングで出てくるのですか。
「お、おぼえては……いますけど」
「今日は僕が医者として、将生の面倒を見てあげる」
「えっと、香月さん?医師免許持っているなんて、わけないですよね?」
「斎藤将生さんですね、熱を測りましょう。おや?かなり熱が高いようですね。解熱用の座薬を処方しましょう」
かさかさと紙袋から座薬が……え!?
「ええええっ!なんでそんなものまで用意してあるんですか?」
「君、医者の言う事は聞くもんだよ。はい横になって!」
「こ、こうづきさんっ!」
すっかりお医者さんごっこのスイッチの入った香月さんは譲る気はないようです。ぐいと身体をベッドに倒されました。
「はい、身体を横にして!」
ずりっとパジャマの下を引き下ろされました。
いえ、最近はもう出入口ですし、慣れてますけどね。けど、これは違う意味で恥ずかしいプレイになっていませんか?
「はい、力抜いててくださいね、大丈夫ですよ。熱はすぐに下がりますから」
つぷっと何か、入って。あ、指そんな奥まで入れるなんて聞いていません。
「は、はぁ……んっ」
「将生、なんて声出してんの?駄目じゃん、今は患者と医者なんだからさあ。大人しくしててよ。他にもいろいろと用意したのに……」
他にも?いろいろと?どういうことでしょうか。気が付いたらカメラがまわってるなんてことなのでしょうか?
よく見ると医療現場でしか見ない器具のようなものが並んでいます。
そして……そこに置いてある箱はご愛用のローションとゴムですね。ええ、それは病院で使う器具ではありませんよ。
「駄目だなあ、今日は優しくしてあげようと思っていたのに。将生が悪いんだよ、そんなに色っぽい目をして。熱下がるの待てなくなっちゃった」
香月さんこれは涙目と言います、ご存知ですか?ああ、熱がさらに上がりそうです。でも惚れた相手が香月さんじゃ仕方ないのもよくわかっています。
「せんせぃ、僕の熱注射して直してくださいね。でも少しだけ優しくしてくださいね」
やっぱりいつものパターンでした、完全にこれはアウトでしょう。
【完】
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