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午後0時のサボタージュ(7)

 一ヶ月後―― 「ゴルァ神崎!」  今日の戦場も、騒がしかった。 「ゲッ、三枝!」  カルボナーラを受け取った理人さんが、そそくさと去っていこうとする――のを、三枝さんが両手を広げて阻む。 「健康診断の最終日だ。今日こそ受診しやがれッ!」 「ちゃんと先週受けただろ!」 「ああ、そうだな。採血以外は、な!」  う……と理人さんが言葉に詰まったその隙を待っていたかのように、三枝さんの右腕が理人さんの肩に巻きついた。 「な、なにすんだよ! 離せ!」 「誰が離すか! おら、行くぞ! 今の時間は十五階の会議室だ!」 「お、俺は健康だ! 血液検査なんて要らない!」 「そういうやつが急にぶっ倒れたりしないように検査するんだろうが! 自覚があるやつらは、普段から気を付けてんだよ!」 「ま、まだ三十代っ……」 「もう三十代だバカたれ!」 「やっ、嫌だ!」 「じゃねえッ!」  ぎゃあぎゃあ。  わあわあ。  きゃんきゃん。  わんわん。  まるで子犬の喧嘩のように大人げなく大騒ぎしながら、ズルズルと引きずり引きずられ、ふたりの背中が遠ざかって――あ。 「あ、おい、この! 待ちやがれ、神崎ッ!」 「誰が待つかよ!」  ビュンッ……と細長いシルエットが目の前を通り過ぎたかと思うと、バタバタッと乱雑な足音が続いていく。  ああ、このペースだと三枝さんまた理人さんを取り逃がしちゃうなあ……。 「やれやれ」  しょうがない。  ここはこの俺がもう一肌脱いでやるしかないか。  そんな風にかっこつけながら、スマホを取り出し耳に当てる。  鳴り響くかと思ったコール音は、案外すぐに途切れた。 「あ、兄貴? また行っていい?」  fin

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