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後日談(2-1)
「かんぱーい!」
「かんぱーい!」
「か、かんぱーい……?」
「……かんぱい」
生ビールのジョッキ三つと、ウーロン茶のグラスがひとつ、硬い音を立てた。
『ゴルゥアァ今年も散々手間かけさせやがって反省してんのかしてんなら俺を労わりやがれ(by三枝 さん)の会』の始まりだ。
「プ、ッハー! ん、最高。すみませーん、生おかわりくださーい!」
「はーい、よろこんでー!」
あっという間にジョッキを空にし二杯目を注文する藤野 さんの隣で、三枝さんがぐいぐいと俺にメニュー表を押し付けてくる。
「さあ、佐藤くん! 食べたいもの、なんでも頼んじゃって!」
「あ、あの、ほんとにいいんですか?」
「いいのいいの! 今夜は神崎 の奢りだから!」
困って隣を見ると、唇で綺麗なへの字を描いていた理人 さんが、そのしかめっ面をいくらか和らげた。
「いいよ。迷惑かけたのはほんとだし」
「なんだよ、珍しく素直じゃん? あ、佐藤くんの前だからか!」
「……」
「図星だな?」
じとーっと粘っこい視線をものともせず、どんどん出来上がっていく三枝さんが、品のない笑顔と言葉で理人さんをイジりまくっている。
諦めたのか、それとも二人にとってはこれが日常なのかは分からないけれど、理人さんは、あー、とか、うん、とか適当すぎる相槌に徹しながら、次々と運ばれてくる一品料理を楽しんでいた。
「あ、理人さん、この海老マヨ美味いですよ」
「え……」
「はい、どうぞ」
「……ありがとう」
小皿に取り分け手渡すと、理人さんのアーモンド・アイが蕩けた。
うーん、かわいい……とそんな理人さんを堪能する暇もないくらいに、向かい側の酔っ払いが俺と理人さんの関係を掘り下げようとしてくる。
カフェで偶然相席になったのがきっかけで仲良くなったのだと伝えると、ふたりは感心したように息を吐いた。
「おっかしーと思ったんだよな。飲み会来ねーのはいつものことだけど、週末も急に予定あるとか言うようになって、ああついに彼女ができたのかと……」
「そういうのじゃないって最初から言ってただろ」
「普通嘘だと思うじゃん?」
「なんでだよ……」
「三枝くんは神崎くんのこと大好きだから。うざいくらいに」
「ちょ、ひどいッスよ先輩!」
三枝さんが大袈裟に嘆き、俺たちは揃って笑った。
理人さんも呆れたような視線を送りつつ、でも口角は両方とも上がっている。
楽しいんだろうなあ。
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