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Twelve(6)★
――水曜日、中間報告の日だ。なんの成果もない。ようやく吐き気が治まって、体調もまだ万全ではないというのに。今日はもうそんな気にもなれず、自分で解しもしていない。ベッドに横たわったまま、息が整わない状態で目を閉じていると、足音が近付いてきた。ジジがのそりと起き上がり、部屋のドアへと近づいて行く。ドアを開け、くんくんと鼻を動かした。ユーリへと振り返り、ステラ語で外にいると告げる。ユーリは返事をしなかった。
「調子が悪いと聞いたが、やめておくかね?」
部屋のドアのかぎを掛ける音がして、ドン・クリステンが近付いてくる。そのままベッドに座ったかと思うと、汗で額に張り付いた前髪をさらりと梳かれた。
「顔色が悪いな」
言いながらも、ドン・クリステンの指がするするとローブの襟元をはだけさせる。胸を舐められ、ふっと鼻に抜けるような声が上がり、ユーリが眉を顰めた。
「相変わらずドSかよ」
「きみは俺に飼われると言った。俺が抱きたいときに抱くことを了承したも同然だ」
何度も胸ばかりを責められ、びくびくと体が震える。指でかりかりと擦ったり、吸われたりと、胸だけでイカせようとしているんじゃないかと思うほどにそこしか攻めてこない。濡れた音が上がり、ユーリは息を詰めて口元を押さえた。
しつこいくらいに胸をいじられ、ずきずきとそこが脈打っているかのような感覚さえする。つんと立ったそれを指で擦りあげるように扱かれ、吐息に甘い声が混じり始める。ドン・クリステンの身体が自分の足の間に割り入ってくるが、下着を脱がそうともせず猛ったものを擦りつけられるたびに艶めかしい声が上がるが、その声はベッドが軋む音で掻き消されるほどささやかなものだ。
「演技をする余裕もないほど消耗しているのか。これはこれで意外な一面を見られていいかもしれないな」
ドン・クリステンの声が今日ほど嗜虐的に聞こえたことはない。ユーリは恨めしそうにドン・クリステンを上目遣いに睨んで、「ちゃんと入れて」と声を震わせた。ふふっと胸元で笑われた。尖ったそこに息がかかる感覚ですら腹の奥が疼く。腰をくねらせ、はあと艶めいた息を吐いたユーリの身体をするするとドン・クリステンの指が這い、触れてほしかった部分を親指の腹で軽く押された。解しもしていないそこはやや抵抗を見せるが、正直受け入れ慣れているためにすぐに解れる。
触れられると思ったものの、ドン・クリステンの指はすぐに胸元に戻った。不満げにドン・クリステンの腰を膝で擦った。
「胸ばっかり、やだ」
ナカでイカせてと、ドン・クリステンの熱に自らの腰を揺すって擦り付ける。
「おや、これはあくまでも配慮のつもりだったのだがね」
つんと尖った胸を甘噛みされる。びりっと電気が走ったかのような感覚が走り、腰が浮く。変な焦らされ方をしているせいか、既に膨らみつつある箇所には一切手を触れず、あくまでも胸だけでイカせる算段のようだ。ローブをはだけさせられているせいで薄い下着だけしか防備するものがない個所に、厚い生地が擦れて刺激を生む。胸への直接的な刺激と、下着越しの緩やかな刺激とが相まって、イキそうになる。既に先走りで濡れて下着が張り付いているのが分かるほどで、自分の高ぶりの形があらわになっているように思えて顔が熱くなる。そこを刺激するようにドン・クリステンが何度も腰を擦りつけながら胸を啄む。びくんと体がしなると同時に、甘い声が上がった。
「ぁ、っ、んんっ」
身体が震える。自ら胸を突き出すような形になり、わざと音を立てて吸われる。耳まで犯されるような感覚に腰が熱くなり、ユーリは腕で顔を覆い隠した。
「待ってっ、ヘンなイキかたするっ」
またユーリの身体が跳ねた。ドン・クリステンがユーリの胸を親指と人差し指でぐりりとひねったのだ。
「んっ、ううんっ」
やだとドン・クリステンを押しのけようとしたが、重くてかなわない。それどころか快感のせいで胸を突き出すユーリの背中に手を差し入れて、じゅうじゅうと音が上がるほど強く吸いながら先端を舌で擽られる。胸だけではない。腹の奥が疼く。じわじわと熱が侵食してくるような快感が何度も襲ってきて、嬌声を上げながら体をしならせた。
イっているのは明白なのに、ドン・クリステンの愛撫が止まない。むしろもう片方の胸も指で押しつぶすようにしつこく弄られ、甘い声を上げながら快感から逃れようと身体を動かすが、ドン・クリステンに自らこすりつけているかのような動きになる。下着の中が気持ちが悪い。胸を吸われ、指で弾かれるたびにとぷとぷと漏れだすのを感じながらも、声を上げまいと口を噤むが、酸素を取り込もうとするタイミングで刺激をされるために鼻にかかる声が漏れる。
「んんぅっ、っ、ぅ、っん」
「もうイッたのか? 前回は可愛がってやれなかったからな」
ふふっとドン・クリステンが笑う。前回? と心の中で反芻し、ドン・クリステンに視線をやる。反射的に目を見開くと同時に、威圧感に身体が震えた。楽しそうに目を細めているものの、オーラが明らかにいつもと違う。甘い快感の痺れのせいでうまく頭が回らない。
するするとドン・クリステンの手が身体を這いながら降りてくる。下着のゴムを指で引っ張られ、ぬとぬとになったそれを解放されたかと思うと、大きな手で握りこまれた。フニフニと感触を確かめるように触れられたあとで、先走りと精液に濡れたそれをリズミカルに扱かれる。
さすがに要領を得ているせいかすぐに硬くなったそこを、ドン・クリステンの指が這いまわり、射精を誘う。切なげな声を上げてよがるユーリの胸を愛撫していたドン・クリステンの舌が、腹、へそ、下腹部を愛撫しながら降りてくる。なにをしようとしているのかに気付き、ユーリは慌ててドン・クリステンの髪を掴んだ。
「ちょっと待って、それヤダって!」
やめてと震える声で制止をしたが、ドン・クリステンの舌がユーリの熱を捉えた。
「んんっ!」
ヤダともう一度訴えたが、今度はその熱を頬張られた。あまり経験したことのない感触に、ユーリが切なげに眉を顰めて悶えた。
「んっ、っふ、っぁ」
濁った水音がドン・クリステンのくちびるから漏れ始める。自分の顔が燃えるほど熱くなっているのを感じて、ユーリは両手で顔を覆い隠した。
「それ、ほんとにっ」
やめてという声は、ドン・クリステンから与えられる刺激のせいで出ていかなかった。亀頭の先端を肉厚な舌でざらりと舐められたせいでびくんと腰が跳ねた。元々濡れているそれを舐めとるように舌がうごめき、ユーリから否定とも快感から漏れる声ともつかない甘ったるい声が上がる。猛ったペニスだけが飛び出ているような中途半端な状態で脱がされている下着の隙間にドン・クリステンの指が入って行く。解してもいないそこに指が触れられたかと思うと、ペニスを咥えたままドン・クリステンが笑った。
自分が来るまでに解しておくようにと言いつけられている。解してもいないことを咎めるわけでもなく、そこを指でくるくると刺激される。通常はそういう機能ではない場所だが、甘い快感を断続的に味わわされているせいで、いやでも快感を拾ってしまう。
つぷりと、野太い指が自分が出したもので濡れた普段は閉じている場所に割り込んでくる。解しもしていないが、ドン・クリステンに触れられるイコール快感を与えられると刷り込まれているせいか、本来解さなければ緩むはずのない場所だというのに、簡単に指を飲み込んでいく。添えられた中指一本を簡単に飲み込んだそこは、さらなる刺激を求めてうねり、ユーリの呼吸とともにその太い指を締め付ける。
「んんっ、っ」
上擦った声で悶えるユーリをよそに、ドン・クリステンがペニスを刺激しながらつぽつぽといやらしい音を立ててユーリの中を割り開いていく。中を掻き回される感覚に甘い声が漏れ、ゆらゆらと腰が揺れる。声を殺すために口元を手で覆ったが、中を犯す指が増やされ、その先に待ち受ける快感への期待で背筋が震えた。
射精を促すように刺激を与えられていたペニスを解放される。しっかりと育て上げられ、ドン・クリステンの唾液で既に射精したかと見紛うほどてらてらと濡れている。そこを解放し、鼠径部を、下腹部を愛撫するように舐められて堪らず指を締め付けた。
「こら、締めるな」
意地悪く笑いながらドン・クリステンが言う。腿を甘噛みされ、舌の先で舐められる。高身長の男性の手の割にはしなやかで節くれだっていないものの、長く器用に動き回るその指を簡単に三本も飲み込んだ。まるでなにかを探るように動く指が、腹側のしこりを押しつぶす。同時に会陰を親指でぐりりと押し上げられ、視界が明滅した。込み上げる射精感に腰を引こうとしたが、ドン・クリステンの指が追いかけてくる。
「んんっ、ァ、あああっ!」
腰を反らせて逃げるように引きながらよがり声をあげるユーリのしこりを、ドン・クリステンの指がしつこく刺激する。さほど時間をかけていないけれど体が反応して蕩けたそこは、与えられる刺激を受け入れユーリに快感を齎す。びくびくと体が跳ねるたびにあえかな嬌声が漏れ、ユーリが首を振って嫌がった。
ドン・クリステンとのセックスは淡白ではない。奴隷だった頃には相手のペースで揺さぶられ、さして愛撫もされずにただ犯されるだけだったが、こうして快感を与えられ、愛でるように抱かれるのはユーリにとって吝かである。抱かれたあとの余韻が残るのが嫌なのだ。腰を反らし、快感から逃げようとするが、ドン・クリステンの指が逃がさずに的確にそこを捉え、押しつぶす。指で挟むようにして刺激を与えながらも会陰を押し込むように愛撫され、腹の奥がずんと疼くのを感じる。甘い声が抑えきれず、開きっぱなしの口から唾液が筋を引く。
「も、いいからっ」
いれてと訴えるが、ドン・クリステンの指が止まらない。愛でるようにそこを愛撫される。耳を塞ぎたくなるようないやらしい音が響くのは、ドン・クリステンの愛撫で快感が高められていることを嫌でも知らしめられるかのようだ。
もう少しでイキそうというところで、ドン・クリステンの指が抜けていく。熱を追いかけるように粘膜がうねる。長い指が抜けたが、時間をかけて愛撫されたそこはぽかりと開き、次に与えられる刺激を待ちわびているようにひくひくとうごめいている。長い間腰を浮かせていたせいで、ようやく柔らかなベッドに身体を沈めることができた。胸が上下するほど煽られ、恨めしそうにドン・クリステンを睨む。
「今日はもうやめておこう」
言って、ドン・クリステンが体を起こそうとする。ユーリはとっさに腕を掴んだ。どうした? と、不敵な笑みを浮かべる。
「俺は解しておけと言ったはずだが、きみはそうしていなかった。俺に抱かれる気がなかった、ということだろう?」
本当に質がわるい。文句は飲み込んだ。快感に震える体を起こし、ドン・クリステンのベルトに手を掛ける。無言のままそこを寛げ、ズボンのトップボタンを外してファスナーの持ち手に指を掛ける。既に膨らんでいるそこは歪に変化しているが、質がよく滑らかに動くそれは難なくおりていった。生地を掻き分けて、相変わらず高級そうで肌触りの良い下着の中から既に質量の増したペニスを露出させる。
ユーリの痴態を見てそれを手に入れんとする欲望の証なのか、ドン・クリステンの熱は亀頭から雫を垂らして凶悪に濡れた凹凸を卑猥に光らせている。これがいまから自分にどのような熱と快楽を与えるのか。口の中につばが溢れてくる。期待と共にそれを飲み込んで、ドン・クリステンの長い足の間に身体を埋め、ためらいなく咥えた。
濡れた音を掻き立てて情欲を煽る。口の中でどんどんと質量を増すそれを角度を変えて咥えたり、舐めたりして十分に硬くさせ、ユーリはその熱に手を添えて自ら跨った。ドン・クリステンが不敵に笑い、ユーリの喉元を指で撫でる。
「ようやくその気になったか?」
「んっ、っ。ここまで、しておいてっ」
疼くに決まっていると文句を言いながら、その熱を受け入れる。張った亀頭が埋まる感覚に、鼻に抜ける声が漏れる。ごりごりと粘膜を擦られ、自分の重さでかんたんに奥まで埋まっていくそれが、ドン・クリステンに煽られ固くなったしこりに引っかき、ユーリはあられもない声を上げた。
「アァ……っ、っァっ」
びくんと身体が跳ね、ドン・クリステンの服に白濁が引っ掛かる。二度、三度と勢いなく漏れ出るその感覚すら刺激になり、ユーリがドン・クリステンの上で悶え、震える。
「やれやれ、汚すならせめて脱がしてくれればいいものを」
ずいぶんとせっかちだなと笑われ、その刺激にすら悶えるユーリの腰をドン・クリステンの手が撫でる。細く、小ぶりなそこに似つかわしくないほど野太いものが埋まっていて、ドン・クリステンはわざとユーリの尻朶を両手で開くように揉みしだいた。
「ほら、それでは俺がイケないだろう」
さっさと動けと意地悪く笑う。ユーリは焦らされたせいか腰を揺するものの甘くよがりながら震えている。はっはっとスパンの短い息遣いの中にすら微かな婀娜めいた声が混じり、ドン・クリステンが嗜虐的に笑う。
「仕方のない奴だ」
言うが早いか、パンと音がするほど腰を打ち付けられた。衝撃でぞくぞくと快感が身体の奥底から迫りあがる。びゅっと押し出されるように精液が漏れ出る感覚さえ頭の先まで痺れるような快感に変わり、ドン・クリステンにしがみ付いた。自重でドン・クリステンのたくましいペニスが埋まる。まだ奥まで入りきっていないというのに、妙な快感に支配されてよがり声が止まらない。
ドン・クリステンはユーリが淫らに鳴く奥のしこりを狙って角度を変え、何度もごりごりと刺激をする。浅いところを一番太い幹でせせるように動かされたかと思うと奥まで暴かれる。ただ抽挿されるだけではなく、ユーリから甘い声を引き出すように動きに変化をつけられる。散々焦らされたせいか、それとも一週間ぶりだからなのか、どんな刺激でも快感として受け取ってしまう淫らな自分に愕然としながらも、必死に熱を欲するように腰を振った。
包皮の皺までもリアルに感じてしまうほど敏感だ。あの薬は自分の感覚すら鈍麻させてしまうようなものだったのだろうかと、抱かれながら思案する。ふいにガツンと奥を突かれ、ユーリが甲高い声を上げた。
「ああっ、っ、ふっ、ァ」
「セックスの最中に他所事を考えるな」
ドン・クリステンの動きが性急になり、中をこじ開けるように質量が増して膨らんでいく。中に出されることを期待して粘膜がをドン・クリステンを包み込み逃がすまいと食らいつくが、ユーリがよく反応する部分を引っ掻くようにして熱を抜かれた。卑猥な声が上がると同時にドン・クリステンの熱が抜け、ユーリの身体に断続的に熱が降りかかる。不敵に笑う声がした。
「このくらいは配慮してやらないでもない」
本当に体調が悪いのだろうと言われ、ユーリは快楽のせいか酸欠のせいかくらくらするのを感じながらベッドに横たわった。はあはあと息を荒らげるユーリに、ドン・クリステンの視線が注がれる。いつもなら続きをせがむように挑発して見せるが、その気力がない。ドン・クリステンが薄く笑った。
「西側の土壌調査の件だが」
そう言われて、ユーリはぼやけた視界のままでドン・クリステンに視線をやった。くっくっと色っぽく笑われたかと思うと、目じりに溜まった涙を長い指で拭われた。
「誘っているのか?」
呼吸のリズムがばらばらで、ろくに息を吸えていない。ドン・クリステンはニヒルに笑ってベッドに腰を下ろした。とんとんと自分の股間を指さす。まるでいざなわれるようにユーリがその場所に顔を寄せ、まだ少し硬いそれを頬張った。
「団長は装備さえ万全ならば調査の価値はあるのではないかと言っている。ただ、政府が及び腰でね。彼らを動かすためにもう少しなにかのデータが欲しいところだが」
言いながらユーリの中にドン・クリステンの指が侵入してくる。熱を帯びたそれが粘膜を引っ掻き、ユーリの腰が上がる。
「政府の要人はどうやらきみに興味を持っているようだ。抱かせてやったら案外言うことを聞くかもしれないな」
冗談だろうという意味を込めてドン・クリステンを睨んだが、含みのある笑みはそれが冗談ではないことを物語っている。ドン・クリステンのペニスを解放し、ごろりとベッドに横になる。
「ミクシアに行けってこと?」
「ここに連れてくるわけにもいかないだろう」
「複数は嫌」
「及び腰なのはドン・コヴェリだ。なにか弱みでも握っていないか?」
ドン・コヴェリと聞いて、ユーリはにいっと口元を持ち上げた。
「あるよ、『ヴェリタ』って言ってみて。絶対に言うこと聞くから」
侮蔑のなかに楽しみを見出したかのような挑戦的な表情だ。ドン・クリステンはなにかを悟ったかのように眉を下げて、ユーリの中を犯す指を増やした。
「なるほど、既に手を付けられたあとか」
それはそれでとぼやき、ユーリが鳴き声をあげるような動きを繰り返す。自分の指の熱を粘膜に刷り込むように指の腹で解し、奥のしこりを何度も押し上げる。掠れた声でよがりながら、ユーリがドン・クリステンのペニスを扱く。
「あいつ、ヴェリタっていう薬物を俺に吸わせて抱くのが好きだった」
ドン・クリステンが含み笑いをする。
「やれやれ、知りたくもない情報だ」
「あと、ドン・コヴェリは収容所が閉鎖される際、当時の看守長に賄賂を渡して自分がイル・セーラを買っていた情報を抹消させている。あいつがのうのうと政府側にいるのがいい証拠だ」
「ではヴェリタの件で攻めてみよう。効果がなければきみがあちらに赴いて誘惑しろ」
ユーリが鼻で笑う。
「自分の所有物がほかの男に抱かれてもいいって、なかなかに背徳的な性癖の持ち主だなァ」
「使えるものはなんでも使うと言ったのはきみだ」
そうだけどと震える声で言いながら、ドン・クリステンのペニスを扱く。そのまままた入れられるのかと思ったが、ドン・クリステンから口でイカせるよう指示される。いわれたとおりに猛った熱を口に含み、喉を開いて奥に迎え入れた。溜まっているのかすぐに熱が口の中に吹き出てくる。それを飲み下し、尿管に溜まったものを吸いだすようにしながら亀頭を唇で挟み刺激をすると、喉の奥で笑われた。
「まあ、ドン・コヴェリに触れられるようなことがあれば、そのまえにもう嫌だと泣き喚くまで抱いてから差し出すがね」
「うわ、最低。じゃあもうひとつだけ」
ユーリが悪戯っぽく目を細くしてみせる。
「彼、ユリウスとかなり懇意なんだ。俺は直接見たわけじゃないけど、ユリウスが診療医としてやってくる日にはよくドン・コヴェリがやってきていた。
あの人たちがどんな関係なのかは知らないけれど、「ユリウスの具合はどうだった?」とか、「フィッチの“リーゼル卿”とは付き合いが長いのか」とでも聞けば、動揺するんじゃない?」
「リーゼル卿とは?」
「俺も詳しくは知らないけど、調書にミクシア外から来た客も取っていたって伝えたよね。それがリーゼル卿。フィッチの人じゃないかっていうのは、ドン・ナズマからアレティア語の辞書を借りて言語の癖を調べてから勝手にこっちが思っていることなんだけど、ところどころ不自然な訛りがあるような発音になっていたのは、アレティア語にはノルマ語にある音がないものがある」
ドン・クリステンがどこか居た堪れないような顔をして、ふうと息を吐く。「イル・セーラの扱いなど、出身地関係なくこんなものだ」と言ってのけると、ドン・クリステンの眉間が不快そうに歪んだ。
「なるほど、だからオレガノ軍との共同調査を嫌ったのか。フィッチとの関りがあったことも、ユリウスのことも、ぼろが出ると収監対象だ」
それは有用な情報だと言いながら、ドン・クリステンがユーリの身体を仰向けに寝かせる。ユーリはセックスの最中には普段見せないほど冷めた視線をドン・クリステンに向けて、自分が出したものと、ドン・クリステンの冷めた熱とで濡れた腹の上を擦った。
「今日はもうダメ」
あいつの名前を聞いたら萎えたと、拗ねたように唇を尖らせる。ドン・クリステンがくっくっと笑いながらユーリの足の間に身体を割り込ませ、細い足を掴んで身体を引き寄せた。ユーリがあからさまに嫌そうな溜息を吐く。
「はいはい、俺はあんたの所有物ですから」
ドン・クリステンが行為をやめるつもりがないことを、ユーリは知っている。ユーリが硬度を高めたそれを、自分が解した場所にぴたりと宛がう。先だけを出し入れするような意地の悪い責め方をするのを冷めた目で見ながら、ユーリはだらりと体の力を抜いた。
「ずいぶんとやる気のない姿を見せるものだな」
「萎えたって言った。あんた、ヴェリタの副作用しらんだろ」
空嘔吐するまで吐き、そのあとに喉の粘膜が張り付けられたかのように息もままならないような異様なまでの口喝が訪れる。プレイの最中にそれが訪れるものだから、解消するには嫌でも彼の身体から水分を欲するしかないが、人体から摂取できる水分など限られていると、ユーリが感情のない冷めた口調で言ってのける。ドン・クリステンはユーリのそこに亀頭を埋めた状態で、嫌悪と呆れの入り混じった複雑そうな表情を浮かべた。
「それは、いますべき話か?」
「あんたも萎えるかなって」
そう言ったが、ドン・クリステンの張った亀頭がぐぷりと潜り込んでくる。んっと息を詰め、眉を顰めた。
「はは、最低。そういう人だよなァ、あんたって」
先ほどよりも微妙に硬度が増している気がして、ユーリが揶揄するように笑う。自分はなにもするつもりがないと言わんばかりに四肢を投げ出し無抵抗の状態でいる。ドン・クリステンはそれを咎めることもなく、ユーリの足を抱え上げてその中心を熱で穿った。
一つ一つのストロークが重く、肌が爆ぜる音と共にその激しさにベッドが軋む。スプリングが鳴くだけではなく、シーツなどのリネン類と比較するとやや簡素なベッドの脚がふたりの重みを支えきれずに揺れるせいでサイドテーブルとぶつかりガタガタと音を立てる。ユーリはもう敢えて淫らに鳴くことはせず、ドン・クリステンから与えられる刺激で自然と漏れ出るあえかなよがり声をあげるだけだった。それでも十分に色を孕み、ドン・クリステンの欲望を溢れさせる。
「口を開けろ」
言われたとおりに口を開いて舌を突き出すと、ドン・クリステンの肉厚なそれで絡めとられた。これをされると鼻で息をする以外酸素を取り込む方法がないほどに責められる。わかっていても止めるすべもなく、ユーリはドン・クリステンから与えられる甘い快楽を受け入れた。
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