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Two.(2)
エリゼが診療所にやってきてしばらくたったころ、表が騒がしいのに気付いた。元々喧騒の絶えない場所ではあるが、やけに騒がしい。様子がおかしいと感じたのはエリゼもまたおなじだったようだ。
「Sig.オルヴェはここに。俺が様子を見てきます」
「ユーリでいい。そういうかしこまった呼ばれ方は好みじゃない」
エリゼは意想外な顔をしたが、すぐに人懐っこい笑みを浮かべた。はいと素直に返事をして席を立った。そしてふと思い立ったかのように500ラレ硬貨大(500円通貨と同等)の厚みのあるバッジをテーブルに置いた。
「それは?」
「何事かあった時に“言い逃れのできない状況”を作るのは、正当防衛の一環ですよ」
エリゼに言われてピンときた。南側への行き方の情報をチェリオが持ってきた際に言っていた、小型の無線機のことだろう。ユーリがそれを手に取りデニムのポケットに忍ばせると、エリゼは笑みを深めて『深追いはしないように』と言い残し、診療所の外に出て行った。
気のせいだといいが、なんだか嫌な予感がする。ユーリのこういう予感はよく当たるのだ。
診療所のカギだけはしめておこうと入り口に向かう。なんだか緊迫した空気感が伝わってくる。おもむろにカーテンをめくり表の様子をうかがうと、少年が一人診療所に向かって走ってくるのが見えた。
勢いよく診療所のドアが開かれる。はあはあと息を弾ませ少年が崩れ落ちた。
この子どもの風貌には見覚えがあった。母親の薬を求めてやってきた東側の地下街に住んでいる少年――ロッカだ。
「大丈夫か?」
声も出せないほど息を切らせている。血と煙硝のにおいがする。ロッカを抱き起して様子をうかがうと、左腕から血が滴っているのが見えた。
「その傷はどうした?」
「ピエタの奴らがいきなり襲ってきたんだ。指定なんとか違反だって」
息を弾ませところどころ詰まりながらロッカが訴えてくる。ユーリはあからさまに舌打ちをした。ロッカが言っているのは指定外薬物所持違反のことだ。ピエタたちはユーリがロッカの母親に渡した風邪薬を指定外薬物だといちゃもんをつけてきたのだ。
「あいつらはどこに?」
ロッカに尋ねるよりも先に複数の足音が近づいてくるのに気付いた。まずい。鍵を閉めようとドアに手を伸ばした矢先、乱暴にドアが開かれ武器を構えたピエタが複数人押し入ってきた。
ガラの悪い大柄な男たちがぞろぞろと診療所に入ってくる。先陣を切って入ってきた男はアサルトライフルを構えており、屈強そうな出で立ちはロッカを恐怖にいざなう。ガタガタと震え後ろに隠れるロッカを庇うように抱きしめた。
「そのガキを渡せ」
屈強な男が居丈高な態度で言う。ユーリも長身のほうだが、診療所に入ってきた男たちはみなユーリよりも背が高くガタイがいい。入り口を見張っている小柄な男も数に入れると8名もいる。暴れて無事で済む状況ではない。双頭のレオの腕章をつけてはいるものの、旧軍部で構成されているピエタの一員とは思えないほど粗野なのは態度でわかる。
スキンヘッドの男がユーリたちを威嚇をするかのようにロビーフロアの椅子を蹴り飛ばした。ロッカが全身を竦ませてしがみついてくる。状況は非常にまずいが、ユーリはこの程度で怯むような繊細さを持ち合わせていない。
「彼の引き渡しを要求するなら令状を見せてほしい」
「緊急時には令状を持ち合わせていなくても確保だけは可能だ。貴様には応じる義務がある」
「緊急時っていうのは、指定外薬物所持違反のことか?
それなら風邪薬としてここで処方したものだし、証明書もある。盗みを働いたわけじゃない」
それは真実だがそんな理屈が通じる相手ではない。以前盗みを働いたといちゃもんをつけられてとっ捕まって、二コラやキアーラが無実を訴え出てくれたにも拘らず3日間も収監されたことがある。ピエタのなかには罪状をでっちあげる連中がいるが、彼らがそうなのだろう。
「事を荒立てたいわけではない。薬を調合した者を捜している」
そう言ったのは後ろに控えていた恰幅のいい男だ。一人だけスタイルの異なる制服を纏っている。見るからに質がよさそうなインディゴのミリタリージャケットに身を包んでおり、腰に下げたサーベルの鞘などスラム街を警邏するピエタたちとは異なり見るからに豪壮な装飾が施されている。彼が悪名高きスカリアなのだろうか。いつだったかロッカの母親からスカリアには気を付けるようにと忠告されたのを思い出した。
「薬の調合をしたのは俺だけど、別の栄位クラスの者と相談したものだ。証明書ならあるから、必要ならすぐにでも証拠として提出できる」
そんなものはどうでもいいと言いたげに恰幅のいい男が鼻で笑う。後ろの男たちに合図を送るように顎をしゃくった。屈強な男がアサルトライフルを構える。ロッカがユーリにしがみついて悲鳴を上げた。
「子どもの前でそういった武力行使に出るのは感心しないな。証明書は提出すると言ってるだろ」
「ガキを渡さないのなら貴様ごと逮捕しても構わんが」
言いながら恰幅のいい男が近づいてくる。でっちあげなどためらいもせずにやってのける男だ。罪状などあとからどうにでもできるのだろう。
「そちらが筋を通すなら引き渡しに応じるよ。だけど薬は本当にここで調合したものだし、学長からの許可も得ている。それにここは地下街を含むスラムの住人を守るための診療所だ」
冷静に対処しようとするユーリの腕を屈強な男が鷲掴みにし、アサルトライフルのストックで鳩尾を強かに殴打した。衝撃に呻き声があがる。床に崩れ落ちて咳き込むユーリをよそに別の男がロッカに近づいた。
「ガキ、素直にこちらに来ないのなら、こいつの命はないぞ」
恰幅のいい男や屈強な男とは別の野太い声だ。ロッカの喉が鳴る。ユーリは咳き込みながらロッカに近づく男の腕をつかんだ。
「よせ、相手はまだ子どもだぞ」
ロッカを掴んでいたのは背の高い男だった。目を眇めてユーリを見ると獲物を狙うような不気味な笑みを浮かべた。
こういう熱のこもった視線には覚えがある。収容所にいたときに、騒ぎを鎮圧して帰ってきた旧軍部の連中と同じものだ。期待に満ちているようにみえる。この男はイル・セーラの味を知っているのだろうか。それとも恰幅のいい男にそそのかされて期待を寄せているのだろうか。それならと、ユーリは口元を怪しくゆがめた。
「ロッカに風邪薬を渡したのはこちらの判断だ。母親への往診もした。それならロッカではなく、薬を調合し渡したこちらを裁くべきなのでは?」
冷静に考えてユーリが導き出した答えがこれだった。
エリゼがどこまで様子を見に行ったのかはわからないが、ナザリオの部下なら罠が仕掛けられていたとしてもやられることはないだろう。エリゼが戻ってきたときにこちらから仕掛けたとはいえ言い逃れのできない状況だったとしたら、取り調べだけで最低5日、情状酌量の余地はないとされた場合にこの男たちが大きな権力とつながっていなければ最低1か月は収監できる。
そう踏んでの苦肉の策だったが、ユーリの目論見通りに背の高い男がいやらしい笑みを浮かべた。
「ずいぶんと物わかりがいいな。そのぶんだとどう詫びればいいかもわかっているんだろう」
下卑を言うことは一人前だなとからかうように言うと、近づいてきた恰幅のいい男がユーリの長い髪を掴み、勢いよく引っ張った。よく見ると恰幅のいい男が付けている腕章の双頭のレオはやけに輝いて見えた。ほかの6人はピエタの制服を纏っているものの本当にそうなのかすら疑わしい。双頭のレオの紋章は歪で薄汚れている。卑金属で作られたものにシルバーのメッキを塗っただけの粗悪品だ。いままで見てきたピエタの隊員はどれだけ地位が低かろうが双頭のレオの紋章は入った腕章だけはきちんとしたものを装着していた。とすると、この男たちがピエタではない可能性が浮上する。
「最近は目障りな野郎が邪魔をしてくれるおかげでどうも気が高ぶっていかん」
恰幅のいい男は後ろにいた小太りの男に指示をすると、男は不承不承と言った様子で診療所のドアを閉めた。なにをするつもりなのかぴんと来る。同時に嗤笑が漏れた。
「せめて子どもの目に触れないところでやろうとかいう配慮はないわけ? ああ、見られてたほうが燃える質?」
この状況下でもなお軽口をたたき、怯んでいるそぶりを見せないよう心掛ける。少しでも弱みを見せたら付け込まれるからだ。
「そのガキもどうせ将来色を売って生きていく以外価値がないんだ。おまえがしっかり指導してやればそのおかげで生き延びることができるかもしれないぞ」
あからさまに地下街の住人を見下したこの態度はこの国の腐敗を如実に表していると思う。この男のような下種でも立場のある存在がこうなのだ。民衆もまた自分たちが被差別的な立場に置かれない限り理解を示そうともしない。ユーリの勘だが、おそらく恰幅のいい男以外は西側か東側のディエチ地区(スラム内で最も治安の悪い地区)から連れてこられた無頼漢だ。もしもエリゼやナザリオが駆け付けたとしても、自分だけは逃れられるようにと連れてきたに違いない。
それならとユーリは恰幅のいい男に挑戦的な視線を向けた。
「堂々と売春あっせんの話かよ。あんたらが言ってた小うるさい目障りな野郎に聞かれてたらまずいんじゃねえの?」
「それは貴様の周りをうろついている優男のことかね?」
「それ以外に誰がいんのよ?」
恰幅のいい男は笑った。企みを押し隠している胡散臭さを孕んだそれは不快感を抱かせる。ユーリは反射的に鼻で笑った。嫌いな表情だ。どうせろくでもないことを企んでいる。
「提案しよう。あの優男ではなくスカリア隊を警備につけろ。俺が一声上げればマフィアどもも貴様に危害を加えることはなくなるだろう」
ずいぶんと簡単に吐いてくれるものだ。スカリア隊とマフィアにつながりがあることはチェリオを通じて聞いていたが、まさかスカリア隊直々に聞けるとは思わなかった。ユーリは挑発的に恰幅のいい男を見上げた。
「対価は? 言っておくけど体で払えなんてのは無しだ」
恰幅のいい男がユーリに対して熱を帯びた視線を向けているのを知りながらも牽制する。
「それには及ばんよ。まだ捕まりたくないのでな。
貴様はずいぶん薬学について明るいと見える。合成麻薬の生成を手伝え」
それは犯罪だ。それをこの場で言ってのけるということはよほどユーリの首を縦に振らせる自信があるか、断られた場合ロッカもユーリも殺すつもりなのかのどちらかに絞られる。緊張感が高まるなか、ユーリは少しでも気を紛らわせるために乾いた唇をなめた。
「合成麻薬を生成していたチームの一員が精神喪失により罷免されたそうだ。そのせいで困っている」
「そんなもの郊外に自生している薬草を乾燥させれば簡単に作れる。あんたらは旧軍部様なんだから、それなりに学があるだろう」
すべてを言い終えるよりも早く恰幅のいい男に髪を引っ張り上げられた。頭皮が剥けるような痛みにうめき声が上がる。
「どうでもいいけど離してくれよ。こういう圧迫されたなかで話し合いをすんのは趣味じゃないんだ」
「過程はどうでもいい。やるのかやらないのかだけ答えろ」
恰幅のいい男はユーリを解放する気などなさそうだ。長髪はこういうときに不便だ。傷みもあるし街に戻ったらバッサリ切るかなどとよそ事を考えながら鼻で笑った。
「筋の通らないことが嫌いな質でね。事を詳らかにしないなら協力なんてしない」
「そうか、残念だ」
いうや否や勢いよく頭を床にたたきつけられた。派手な音が上がる。みしりと骨がきしんだ気がした。痛みにうめくと恰幅のいい男が悦に入ったように笑う声がした。
「ほお、普通は意識を失いそうなものだがさすがに頑丈にできているな」
「ゆ、ユーリに、乱暴するな!」
ロッカが震える声で男に言う。地下街出身者のほとんどはピエタに対して恐怖心しか抱いていない。ガチガチと歯が鳴るほど震えているのが見なくてもわかる。
「お、俺がこのことしゃべったら、おまえらは豚箱行きだぞ」
ロッカを制止しようと声を出したがすぐに分厚い手のひらで口をふさがれた。
「それで?」
ひっとロッカののどが鳴る。
「我々を嚇そうなどと考えるなよ、ガキ。“目撃者などいなかった”と仕立て上げることもできるのだ」
後ろに控えていた背の高い男の手がロッカに伸びる。ユーリはもがいて恰幅のいい男の手のひらから逃れると、かすれた声でロッカを呼んだ。
「いいから、黙ってみてろ」
「でもっ」
「大丈夫だ。いう通りにしろ」
恰幅のいい男が笑う。嘲笑だ。さぞかし下種な顔をしていることだろう。絶対に目に物見せてやると喉の奥でつぶやいて力を抜いた。
「そいつもそう言っていることだ。今後のためによく見ておけ」
恰幅のいい男が部下に合図をすると、背の高い男がユーリの背後から羽交い絞めに拘束した。高みの見物と言わんばかりにその場を離れ、待合室の椅子にどっかりと腰を下ろす。アサルトライフルを装備しているというだけでも分が悪いというのに、犯罪のでっちあげなどお構いなしにやってのける性質の悪い警護隊が相手だ。おまけにロッカという保護対象までいる。おとなしく暴行を受けてもいいが二コラにどやされるだろうし、かといってこの人数を相手に暴れたら軽傷では済まないしロッカを守り切れるとも限らない。
「ああ、忘れるところだった。そいつの往生際の悪さは筋金入りだぞ。さっき地下街の売人から押収したものの効果でも見てみるか」
言いながら男が胸ポケットから遮光性のアンプル瓶を取り出し、スキンヘッドに手渡した。スキンヘッドがニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてそれを見る。思わずぎょっとする。アンプル瓶は開封されている様子がない。遮光性のアンプル瓶に入った液体の薬物で、地下街に出回るほど安価でやりとりされるものといえは数種類に限られる。
軽快な音を立てて封が切られた。ゴムがこすれる音のあとにツンと鼻を衝く刺激臭が続く。この独特な臭気は直訳で落ちるという名がつくほど強力な鎮静剤――カデーレだ。ユーリは体質的にこの薬物との相性が悪く、使われたら数日動けなくなる。それにこれは合成麻薬の一種で、所持および使用は収監対象なのだ。
「暴行した挙句違法薬物の使用はさすがにやばいんじゃねえの? そんなもの使わなくても、ここにはいくつもの合法薬物がある」
「ほお。しかし管理は徹底しているはずだろう」
「違法薬物をかがされて不法所持をでっち上げられるより、大学側から合法薬物を買い取るほうがマシだね」
むしろそれでもおつりがくるくらいだと揶揄するように言ってやる。
「薬物を使うのは少しでも痛みがないようにという温情のつもりだったのだが、それが嫌なら仕方がない。彼は痛めつけられるのがお望みのようだ、やれ」
指示された男がユーリの体や足を押さえつけ、別の手がベルトを寛げ始めた。さすがにスカリアは引っ掛からなかったかと内心して別の手を模索する。ユーリの往生際の悪さを知っているということは、以前収監されたときに散々抵抗したのを見ていたのだろう。
ユーリの右腿に着けられたレッグホルスターを外そうと手が伸びてくる。カデーレの臭気に当てられたのかスキンヘッドの手は震え、興奮状態にあるようだ。うまくベルトを緩められないようで乱暴に引っ張られる。
「おい、なにをやっている。早くしろ」
恰幅のいい男が強い口調で言う。その威圧がスキンヘッドを委縮させたのか、更に手元がおぼつかなくなった。もたもたとベルトを緩めようとしていたがままならない。屈強な男からナイフを手渡され、レッグホルスターとジョガーパンツの間にナイフを差し込んでいく。ぶつりと音を立ててレッグホルスターが引き切られる。
「あーあァ、買ったばっかなのに」
まるで他人事のように恨みがましく言うユーリをよそに、スキンヘッドがユーリの下着ごとジョガーパンツをずり下げた。背の高い男がひゅうと口笛を吹く。無理やりブーツを脱がされ、ジョガーパンツをはぎ取られる。下着だけが辛うじて残っている状態のまま、スキンヘッドがユーリの両足を広げさせた。後ろから背の高い男に羽交い絞めにされているため身動きが取れない。それをいいことに、まるで後ろに控えている恰幅のいいところに見せつけるかのように足を開かされる。
「すげえ」
期待を膨らませた声色で、スキンヘッドがごくりと音を立ててつばを飲み込む。
「今回の功労者はおまえだ。好きなように犯せ」
恰幅のいい男が言うなり、背の高い男の手が伸びてきた。両側にぐいと引っ張られ、後孔を暴かれる。スキンヘッドの男が興奮の声を上げた。
「ひゃはっ、マジかよ!」
言葉と同時に口の中に指をねじ込まれた。舌を挟まれ愛撫される。ぐちゅぐちゅと濡れた音が鳴る。そのさなかにも後ろにいる背の高い男がユーリの後孔を指の腹で撫で、ほぐすようにマッサージしている。
「んっ、んうっ」
ぶちゅぶちゅと男のものを咥えさせているかのように指を前後され、息苦しさに声が漏れる。飲み込めない泡立った唾液が口の端から零れ落ちる。後ろの男がそれを野太い指でからめとり、ユーリの後孔にぬるりと撫でつけた。鼻に抜けた甘い声が上がる。ユーリの背中には既にガチガチになった背の高い男のペニスが当たっている。
無遠慮に指をねじ込まれ、ユーリが身を捩らせた。傷みと違和感しかない。収容所にいたころだって一応は丁寧に解してから抱かれていた。希少価値のある商品だったからだ。けれどいまはただ興奮を発散させるためのものでしかない。ユーリの口からスキンヘッドの指が引き抜かれる。てらてらと濡れそぼったそれを無遠慮に後孔に押し込まれる。後ろの男の指とは別に指を動かされ、快楽とは程遠いもののまるで男たちを煽るようにユーリが腰を動かす。その狙いは覿面だったようだ。スキンヘッドの指の動きは単調だが、背の高い男は確実にユーリを喘がせるように指を動かす。ぐねぐねと奥に入り込んできて、いいところを探るように指の腹を粘膜に押し付けられる。
「んっ、ん、はっ、あっ」
違和感と息苦しさに眉を顰め、少しでもそれから逃れるように声を上げる。それは男たちを煽るための甘い声で、あたりは興奮に包まれていた。背の高い男の指がユーリのいいところをかすめた。がくんとユーリの背中が反る。男たちがおおっと歓喜の声を上げた。
「あっ、ぁっ、やっ」
少し俯いていやいやと首を横に振る。そのしぐさに興奮したのか、スキンヘッドの男が空いた手でユーリの顔を掴んで上を向かせた。ユーリの目は涙に濡れている。それを見た途端男の喉が派手に鳴った。
「モルテードさん、本当に犯していいんです?」
スキンヘッドが恰幅のいい男に向けて言う。スカリア隊と言っていたが、彼は所属しているというだけで、スカリア本人ではないようだ。モルテードは舌打ちをして先ほどのカデーレを投げてよこした。スキンヘッドがそれを受け取る。
「構わん。タレコミが気になるならそれを使え。軍部にバレたらそいつも収監対象だ。それなら下手に騒がんだろう」
ユーリの後孔から指を抜き、スキンヘッドがアンプル瓶の封を切った。独特の臭気が鼻を衝く。スキンヘッドは背の高い男の指越しにカデーレを少しずつ垂らした。粘度のあるそれが背の高い男の指に絡み、指を出し入れするたびにぷちゅぷちゅと弾ける音が上がる。わざと淫らに喘ぎながらも、ユーリは内心ほくそ笑んだ。
じわじわと後ろが熱くなってくる。さすがに違法薬物ともなると効きが早い。詰めたような息を吐き、腰をもじもじと動かすと、スキンヘッドがユーリのペニスを掴んだ。
「おいガキ、よく見ておけ」
スキンヘッドがロッカを呼ぶ。ロッカはびくりと体を震わせた。ユーリの痴態のせいか、布越しにわかるほどはっきりと勃起している。スキンヘッドがいやらしく笑う。
「っ、ふ、んっ、んんっ」
ロッカをあざ笑うスキンヘッドをよそに、背の高い男がユーリの後孔を長い指で刺激する。程よい粘度がユーリの快感を高め、甘い声を押さえきれない様子のユーリを見て、スキンヘッドが舌打ちをした。
「俺が先だ、ドナ」
「ふあっ!」
不意に野太い指でいいところをかすめられ、ユーリがのけぞった。ひくひくと体が震えユーリのペニスからとろりと白濁が滴る。体が弛緩して力が入らない。背の高い男をドナと呼んだスキンヘッドが、小刻みに体を震わせるユーリの体を背の高い男に預けた。薄汚れたカーゴパンツの前を寛げ、すでに興奮状態のペニスを露出させる。勢いよく飛び出たそれは野太く、えらの張った凶悪なものだ。カデーレの臭気に当てられているのかいまにも果てそうなほどびくびくと動いている。ユーリはそれが目に入った途端、いやいやと首を横に振った。
「む、りっ、はいらないっ」
男たちの嘲笑が上がる。
「嘘つけ、収容所にいたころに1日に何人もの男に抱かれてたんだろ? いまさらカマトトぶるなよ」
スキンヘッドが反り立ったペニスにカデーレを塗り付ける。ぐちゅぐちゅと馴染ませ、ユーリの腕を掴んだ。
「さて、楽しませてくれよ」
弛緩したユーリの自分の体に預けさせ、ドナがユーリの尻の肉を両側から掴んで開かせる。綻び始めたそこはユーリが呼吸をするたびに誘うようにひくひくと動いている。ごくりとつばを飲む音がする。ユーリの後孔にスキンヘッドのものが宛がわれる。熱い。ぬるりとした感触と共に、熱く滾ったペニスが潜り込んできた。
「ンんっ!」
ユーリがのけぞる。十分に解されてはいないものの、カデーレの効果で弛緩し敏感になったそこに触れるには強すぎる刺激だ。腰が引いて逃げようとするユーリの身体が二人がかりで押さえつけられる。スキンヘッドの怒張がユーリのいいところをかすめた。
声をかみ殺したが、生理的な涙がぽろぽろと零れ落ちる。はくはくと金魚のように口を開けて酸素を取り込もうとするユーリをよそに、スキンヘッドがばちゅばちゅと音がしそうなほど腰を打ち付けた。
「んっ、んうっ、っ!」
必死に声を押さえようとするが、カデーレの効果はしっかりと表れていて、ユーリ自身もすっかり立ち上がっている。ドナは笑いながらくたびれたデニムをずりおろして反り立ったペニスを露出させると、尾骨あたりにペニスをこすりつけながら、ユーリのペニスを扱き始めた。
「っ!」
びくんと大げさなほどユーリが跳ねた。やめろとばかりに手を伸ばしたが、その手は後ろの背の高い男に捕らわれた。
「ああ、いいぜ。よく締まる。オラ、あとがつかえてんだ、全員が満足するまで付き合えよ」
「っ、ぁ、ァ…っ!」
ユーリが首を横に振っていやがるが、ドナの手の動きが激しくなる。ぐちゅぐちゅと濡れた音が上がり、武骨で骨ばった手に扱かれながら、ユーリはあっという間にイッた。
「ンんっ! んっ」
スキンヘッドの恍惚とした声が上がる。ユーリが締め付けるたびに男の吐息が漏れ、腰の動きが激しさを増した。
肉がぶつかる音と粘着質な音。かすかに上がるユーリの掠れた喘ぎ声のせいで周りの男たちに興奮が伝染する。1人、また1人とベルトを寛げ、ペニスを露出させる。
「ああ、すげえっ」
背後から腰を動かされ、足を浮かされているせいで快楽の逃しようがない。少しでも逃れられるように体を捩るが、それはまるで男を誘うかのような淫らな腰の動きで、スキンヘッドの腰の動きに合わせてより深くいいところにあたるようにと腰を振っているようにしか見えなかった。
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