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Sixteen(2)★
――どのくらい犯されているのかすらもうわからなくなってきた。体の感覚がない。前とは逆に頭だけはクリアで、冷静に考えられる思考が戻ってきた。
ソファーの上で乱暴に犯されるだけではなく、いつのまにか質のよい赤い布が敷かれた祭壇のような場所に移動させられていたようだ。もう抵抗するそぶりがないと思われているのか、手を拘束していたものが外されている。代わりに足を拘束され、暴れられないように両足とも革ベルトで捕らえられたまま、自分が中に出したものがこぼれてくるのを何度も何度も押し込んでいるようだ。足元から歓喜の声が聞こえる。
「きみは知っているか、アマーリア。イル・セーラは堕胎を許されていない。それは同族を殺すことにつながるからだ。だから犯され、孕んだとしても、産まなければならないんだよ。それが、どれだけ苦痛なことか、きみにわかるか?」
ユーリは眉根を寄せた。意識が戻るまでの声色とは明らかに違う。猟奇じみた雰囲気はそのままだが、嗚咽が聞こえてくる。泣いているのだろうか。そう思ったが、ウィルはユーリの浅いところに精液を塗り込むように動かしていた指を、また感じる場所を刺激するように動き出した。突然の刺激にユーリの腰が浮く。ウィルが開かされたままのユーリの脚の間に割り入ってきて、猛った熱をそこに押し当てた。ぐぷりと音がしそうなほど弛緩しきったそこに熱が割り込んでくる。引き攣ったような声が上がる。
刺激と体に掛けられる重みのせいで自然と漏れ出る声以外を噛み殺そうと唇を噛む。犬歯が食い込みくぼみを作る場所にウィルの舌がべろりと這った。
「ダメじゃないか、大事な顔に傷を付けたら」
ウィルの指が口の中に割り込んでくる。それに噛み付いて抵抗を示したものの、ウィルはなんの反応も示さずにただ薄気味悪く笑うだけだ。
「アハハ! 俺に傷を付けたということは、やはりきみも俺にずっと抱かれたかったということだろう? イル・セーラは伴侶以外傷を付けないと聞いている」
いや、違うだろと心の中で突っ込んだが、もうなにを言っても無駄だと悟る。面倒くさくなってきた。そも、なにが目的なのかわかりもしない。ユーリは拘束されたままの膝でウィルの腰をすりすりと擦った。
「ねえ、もっと孕める方法、知りたくない?」
ウィルが顔をあげ、分からないという顔をする。
「もしここに『レスティティレ』って薬品があったら、飲ませてよ。たぶんいまの薬効のままじゃ時間がかかる」
「へえ、それをどのくらい使うんだ?」
「そうね、適量の1/2くらいで大丈夫と思う。適量知ってる?」
だいたい1.0ccくらいなんだけどと言うと、ウィルはなにも言わずにユーリの後孔から猛ったペニスを抜き去った。そのままの状態で薬品や遮光瓶が無造作に並べられた場所に行くと、どこだったかなと言いながら探っている。絶対にあると思った。レスティティレは単体で使うとただの媚薬だけれど、それに自分に仕込んだ薬と混ざると薬効が変わる。ただ犯されるのもいい加減飽きてきた。
やがてウィルがスポイト瓶と共に戻ってきた。ユーリの後孔に猛った熱を宛がい、侵入させる。突き上げるように入れられ、んっと鼻にかかったような声が上がった。少し腰を引き、ウィルがスポイド瓶のキャップを開けてレスティティレをスポイトで自分の熱に落とし、それに塗れた熱をユーリの中に侵入させる。想定内だ。すぐさまスポイトでレスティティレを吸い上げると、今度はユーリに口を開けるよう指示した。
「こっちのほうがお好みだろう?」
「容量多いと逆効果だったりすんだけど」
「試してみよう。そのほうがきみと何度でもセックスできる」
口の中にレスティティレを流し込まれる。まあいいかとそれを飲み下し、口を開いて見せる。ウィルは楽しそうに目を細めてスポイト瓶を乱暴に棚の上に置いた。レスティティレの効果でじわじわと熱が帯びてくる。おおっと感動した声を上げ、ウィルが祭壇の上に乗ってきた。パンと音が鳴るほど腰を打ち付けられ、ユーリから苦痛とは違う声が上がるのを聞いて、ウィルが不気味に口を横に開く。
「アマーリア、そういえばきみの子どもはどうした?」
ユーリが眉間を歪ませる。
「どういう意味?」
とぼけるなよとウィルの腰の動きが激しくなる。薬の効果か、演技もつかない甘い声を上げながら腰を捩るユーリを見て、満足そうにウィルが目を細める。肌が爆ぜる音と共にぐちゅぐちゅと粘度の高い液体が弾ける音が大きくなっていく。ガタガタと祭壇が揺れる。
「ああっ、すごい! すごいよ、アマーリ! うねってっ、っ」
興奮したように腰を振るウィルとは裏腹に、ユーリは眉を寄せてその痛みに耐えた。
効かねえじゃねえか! と口の中で呟き、出掛けに二コラとキスをしたことを心底後悔する。なんで自分はあの男に甘いんだと心の中でぼやきながら両手で顔を覆った。一応は感じている演技をして見せるが、痛みが強く思ったように喘げない。
いつだったか、アレクシスが言っていた。“慣れ”なんてものは所詮自分自身への言い聞かせと刷り込みでしかない。そういう状況から離れたら、『なにもされないのが当たり前』になる。本当にそうだと思う。
あそこから離れて、二コラに抱かれたときに、薬物の効果ではない快楽に襲われた。いや、包まれたといった表現法が正しいかもしれない。甘やかすような抱き方をしてくるゲストもいたけれど、なんとも思わなかったのに、二コラは違った。チェリオも、ドン・クリステンも自分勝手な抱き方をしているつもりでも、そうではないのがよくわかった。
でも、この男は違う。ただ自分の欲望と腹の奥のなにかをぶつけるような、それでいてその奥のどす黒い感情を解消するかのような動きだ。その臓腑を抉りそうなほどの凶悪な黒さに飲み込まれそうになる。
とはいえ、抱かれ慣れた身体が反射でうねり、いいところを突かれるたびに鼻にかかった声が漏れる。こんなことを思ったこともなかったけれど、もしもこれが二コラだったら、――。後ろでウィルが愉悦を吐き出すように震えた。体の中に熱が放たれ、自然と体に痺れのような震えが走る。
「素晴らしいよ。俺に絡みついてくる様はさっきとはまた違う」
言いながら、ウィルが顔を覆っているユーリの両手を無理やりはがし、顔の横に片手で押し付けられる。すごい力だ。びくともしない。猟奇じみたウィルの顔が近寄って来る。目が血走り、征服せんとする顔だ。
「アマーリ、“ユーリ”は知っていたのか?」
空いた手で腹を撫でられ、まだウィルのものが埋まっているところを押される。んっと声が上がるのを聞いて、ひゃはっと楽しげな声がした。
「最初の子どもは、“ユーリ”の子じゃないだろう。俺が殺してやったが、たしか、オレガノから来た男との間の子どもだったな」
ユーリの眉間が歪む。聞いたことがない。
「なに、それ」
「とぼけるなよ、俺が指示したんだ。俺は見たぞ、きみが犯され、“ユーリ”に助けを呼ぶさまを」
ぞわりとする。頭が混乱する。どういうこと? と尋ねるわけにもいかず、ただ揺さぶられながらその言葉を聞いた。
「きみには悪いことをした。ただの俺の好奇心と、復讐心だったんだ。どうせならあの男にも味わわせてやろうと思った」
「んぐっ、っ、っぅ。なに、言って」
「忘れたのか?」
ぐっと腹を押さえられたかと思うと、爪が食い込むほど強く指を押し付けられる。痛みで呻くユーリの耳にはウィルの愉悦に塗れた声だけが届く。
「あのあとも犯してやったじゃないか、きみを犯しながらこの腹を裂いて、“ユーリ”に見せつけてやっただろう」
ガタンと音がするほど強く腰を打ち付けられ、ユーリの背中がしなった。おおっとウィルが歓喜の声を上げて、腰が浮くほど身体を丸めさせて上から打ち付けるような動きに変わる。
「いや、それはおかしいな。腹を裂いたのなら、きみがここにいるはずがない」
ウィルの声色が変わる。僅かだが呂律が戻り、震えるような不気味な声に自分の意思が戻ってきたかのようなものになる。必死に腰を振ってユーリの中にありったけの熱を流し込まんとするように動くが、はてと考えるようにユーリを覗き込む。
「おや……きみはもしかして、俺が殺したガキのほうだったか?」
言ったあとで、殺したのならいるわけがないかとぶつぶつ言い始める。
「なんだったかな、アマーリア……いや……エリオ」
その名前を聞いた途端、細胞がすべて恐怖に支配されるかのような悪寒が走った。体の変化に気が付いたのか、ウィルが鼻先が触れんばかりに顔を近付けて、口が裂けているのではないかと思うほどに不気味な笑みを浮かべた。
「そうだ、エリオだ。あいつが隠した、“奇跡の子ども”。ああ、また逢えると思わなかったよ、殺したつもりだったんだ、それなのに死ななかったんだね」
おかしいなと言いながらウィルがユーリの喉元に手を掛ける。
「覚えているわけがないか、俺はきみに毒を飲ませた。俺からすべてを奪ったあの男に復讐をするために、まずはレオナときみを襲ったんだ」
「レオナ?」
「ははは、知るはずもないか、それはそうだよなあ。きみたちはまだ子どもだったんだ」
ぐっと喉を押し付けられる。苦しさに呻き声が上がるが、ウィルは楽しそうに喉を締め付けながら腰を振る。
「第二王族には欠点がある。血が濃すぎるせいで定期的に第一王族の血を入れなければ『欠陥品』が産まれる。レオナがそうだ。まだ子どもなのに心臓が悪く、あの日は“ユーリ”に手術のための依頼に訪れていた」
喉を締め付けれているせいで声が出ない。まるで酸欠に陥ったようにふわふわとした感覚に苛まれる。
「エリオ、きみはレオナのために死ぬはずだった。あいつらがフォルスにいた理由は、オレガノ王家を陰で支え時々腹を貸すためだ。つまり、いまの第二王族のガキのどれかはきみと同腹子のはずだぞ。いま生きているガキは、なんだったかなあ……レミエラは俺が殺したから、たしか……」
そこまで言って、ウィルが首を振った。
「だめだ、思い出せない。オレガノのガードが固くて、あのあとに生まれた三人のガキは顔も名前もわからなかった」
まあいいと、ウィルが笑う。
「それで、その毒の効果からきみはどうやって救われた? 考えられるのはあいつがよく使っていた『カナップの蒸留水』か、それとも、レスティティレだったかな」
思わず舌打ちをする。すぐにウィルが笑う声がした。
「俺がなにも知らないとでも思っていたのか、バカだな! おまえたち一族のやり方は頭に入っている! 何度も、何度もシミュレーションをして、確実におまえを孕ませるために実験を重ねてきたんだ!
さっきのレスティティレの正体を教えてやろう、『ルナツィオ』という媚薬だ」
ざわりと腹の奥が熱くなるのを感じて、ユーリは眉を顰めた。馬鹿はどっちだと心の中で詰りながらも、冷静に考える。もう子どもじゃないから、こういう時にどう対処すればいいかは分かっている。わかっているけれど、頭の先から足の先まで氷のように冷たくなっていく。まるでいまから踏み潰す虫けらを見ているかのように猟奇的なウィルの瞳に、引きつった自分の顔が映っていた。
「いい顔だ。きみはずいぶんと意志強いのか、それとも中和剤かなにかを仕込んでいたのか、飛ぶまでには至らなかったようだ。きみがそのつもりなら俺も最高の嫌がらせをしてあげよう」
ウィルのペニスが入口をこじ開けてくる。
「ふふ、そんなに顔をこわばらせて。そんな顔をするから、増々興奮するじゃないか」
質量が増すと同時にねじ込まれる感覚。息がつまる。無遠慮にユーリの中に割り入ってくると、ウィルはリズムを変えてユーリを煽った。痛い。苦しい。ボロボロと涙がこぼれるのが分かる。ウィルの不気味な笑い声が耳に響く。
「ああ、きつい。きみの処女を奪った時のようだ。きみがノルマに恐怖心を懐くのは、俺とヴェロネージできみを犯したからだ。ああ、マリスもいたか。覚えていないだろう。
俺は優しいから、セレスティーナには見せていない。あれは俺の部下に弄ばれていたからね。恨むなら“ユーリ”を恨め。すべて”ユーリ”が悪い」
奥を突かれて息をつく暇すらない。引きつった声が上がる。痛みと苦しさのせいでユーリのペニスはすっかり萎えている。ウィルがあざ笑うように言う。
「萎えてはいるが、ここを刺激されると堪らないだろう。ほら、垂れてきた」
射精感がほぼない状態なのにだらだらと精液がこぼれる。伊達に開発されてないわと詰ってやりたいが、そんな余裕がない。ぱんぱんと肉が爆ぜる音が響く。動きが激しすぎて背中が痛い。
「はあっ、あっ、はっ、んんんっ!」
ぐんと奥を突かれ、体がのけぞった。びくびくと痙攣し、自然と腰がくねる。何度もイッているのに解放されない。ウィルはユーリの乳首をピンと指で跳ねた。
「っ!」
二度目の熱が放たれた。びくびくと震え、喉の奥で唸る。ウィルの服で乳首がこすれる。それだけで快感と受け取るほど敏感になってしまったそこがつきつきと痛む。
「さて、乳首だけでもいけるきみの為にサービスだ」
ウィルがユーリに覆いかぶさってくる。熱い布地が乳首を擦った。
「んっ、んうっ!」
「さあ、きみは意識を保っていられるかな」
ウィルの動きが激しくなる。敏感になった乳首とペニスと後ろを同時に攻められたら意識なんて保っていられるはずがない。
「はあっ、あっ、ぁあっ!」
聞いたことがないほど甲高い声が上がる。自分でももう限界なのだろう。力が入らない。これはまずい。
「んんっ、んあっ、あっ!」
どすどすと音がしそうなほど激しく奥を突かれ、目の前がちかちかとハレーションを起こす。暗明する意識と視界をなんとか保とうとするが、ウィルの猛攻に耐えられず声が上がる。
「俺にすらよがるのか、“ユーリ”がいたら嘆くだろうなあ。きみはいずれオレガノに差し出され、生贄にされるはずだった大事な身体だ。それを俺に犯され、様々なノルマに嬲られるなど、想像もしていなかっただろう」
ウィルが快感に震える表情で形容しがたい不気味さを孕んだ笑みを浮かべた。
「ああっ、もっ、やめっ!」
「はは、可愛いな。さあ、イケ」
「っや、やっ、ああああっ!」
体全体がおかしくなったんじゃないかと思うほど痙攣した。ウィルの熱がゴリゴリと奥を突いた瞬間に背中が弓なりにしなった。
数秒、いや、数十秒意識を飛ばしていたと思う。ウィルがいいところをしつこく穿つ感覚で引き戻された。ユーリが目を覚ましたことに気付いたのか、ウィルが笑いながらずるりと熱を抜き去っていく。ユーリの前で手を翳し、ひらひらと振る。眼振が起き視線が定まらないことを確かめたうえで、また気味の悪い笑みを浮かべた。
「きみはいまから俺が出したものを自分で掻き出すんだ。俺に縋れ。強請り、入れてくれとせがめ」
身体とは違って、頭の中は冷静だ。妙な感覚で、気分が悪い。命令するような口調は、きっとさっきの薬物の薬効を知っているからだろう。文字通り「洗脳」と「傀儡」使う。
足を拘束しているベルトを外され、ようやく自由の身になった。弛緩しているそこからはこぽこぽとウィルの精液が垂れてくる。気持ち悪い。膝を立て、そこから精液を掻きだす。ウィルを煽るように声を出してみたが、挑発には乗ってこない。まるで汚物を見るような目でユーリを見ると、フォルスの国境警備隊の男が吸っていたものと同じにおいがする煙草をふかし始めた。
まるで変態みたいだ。紫煙をくゆらせるウィルの前で、しどけなく足を開いて精液を掻きだすなんて、いままでならありえない。二コラもドン・クリステンも意外にもそのあたりは紳士で、どんなに時間がない時でも中出しした後はきちんと後処理をしてくれていた。そのせいで妙な気分になってくる。自白剤と媚薬の中和剤、そして念のために仕込んでおいたもののおかげで意識だけは保っている。ウィルが使った薬物はかなり強い。腹の中が熱い。遅行性だったのか、それとも煙草のにおいに反応しているのか。
ウィルを甘えたように呼んだが、ウィルは嗜虐的な目でユーリを見下ろし、口をすぼめて煙を吐きながら濡れた熱を扱く。
ぐちゅぐちゅとわざと音を立てる。精液を掻きだすだけならたやすいが、腸壁から吸収されたコンフェジオンがそうたやすく抜けてくれるはずなんてない。自分の指の動きにも反応するほど熱を欲している。こんなことなんて慣れているはずなのに、触ってほしくて仕方がない。奥が疼いて堪らない。薬が効いていると演技をするしかない。そう判断して、震える指を奥に差し入れた。
精液を掻きだしているだけなのに、腹の奥が熱い。いれて欲しい。うつ伏せになって尻を高く上げ、ウィルを呼んだ。挑発に乗ってくれればいいとわずかな希望を抱いていたがユーリに視線を向けたまま紫煙を吐き出す。これじゃあまるでウィルにお預けを食らってひとりで盛っているだけみたいじゃないか。はあはあと息を荒らげながらいいところを指で撫でる。もっと奥。奥に刺激が欲しい。腿がぶるぶると痙攣する。腰が反り、爪先から頭の先まで電気が走った。
「んんんんっ!!」
ぱたぱたと精液がこぼれる。膝を立てていられなくて、床に崩れ落ちた。自然と体がくねり、足腰が妙な痙攣を起こしている。頭の中が真っ白だ。なにも考えられない。必死にウィルを呼ぶけれど手を差し伸べてこない。
何度目かの絶頂を迎えたころ、ようやくウィルがユーリに近付いてきた。何度も放った精液のせいで下半身はべとべとだ。ウィルの精液なんてもうとっくに残っていない。ようやく好機が訪れると思ったが、ウィルは煙草をふかしながら自らの熱を扱き、触れては来ない。
「すごい格好だな。台の上も尻もべとべとじゃないか」
随分気持ちよさそうに泣いていたなと、ウィルが笑う。
「俺のではなく、自分の指だけでそこまで善がれるとは知らなかった」
「んっ、うっ」
ユーリの目の前にはウィルの股間がある。痴態に反応したのか、反りあがり、脈打っているごくりと喉が鳴ったのを見てウィルが喉の奥で笑う。
「いれてっ」
自然と腰が揺れる。奥に欲しい。訴えたが、ウィルはユーリに触れることなく眼前にペニスを突きつける。
「名前を呼べよ。誰を欲しているのか、自覚させてやる」
目の前にある昂りはえぐいほど反り立ち、血管が浮き出てとくとくと脈打つのがわかるほど張りつめている。正直嫌悪感しかないが、ドン・クリステンの薬のおかげか、腹の奥からせりあがってくる嘔気は訪れない。
「んっ、んんっ」
足が震えて姿勢を維持することすらできないほど煽られているというのに、ウィルは一向に手を出そうとしない。腰が揺れる。自分の尻を抉る指がすべるほど汗だくになっているのに、ウィルは涼しい顔をして半開きのユーリの口元にペニスを押し付け、唇に亀頭を引っかけるようにして遊んでいる。
「ウィルっ、もう……むりっ」
耳を塞ぎたくなるほど卑猥な音を掻きたてても、ウィルは指一本触れてこない。まるでポルノ映画のワンシーンでも楽しんでいるかのような熱を孕んだ視線だけをユーリに向けている。冷静でいてくれるならまだいい。そうじゃないのに何故触れてこないのか。ウィルに塗りたくられた薬物がヘンなふうに作用しているせいなのか、いつもの強気な態度に出ることもできず、もうプライドすら保てる余裕がなかった。
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