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4話

 幼い頃、神坂明は家族と一緒に暮らしていた。けれども、両親が不仲になり離婚した時に、父親に引き取られた。父親は新たな女性と再婚した。けれど、明は再婚した女性との仲は上手くいかず、父親からも冷たくされて過ごしていた。居た堪れなくなってしまった明は、父方の祖母の所に引き取ってもらう事になった。優しい祖母は快く幼い明の事を受け入れてくれた。  祖母が住んでいた場所は、古びた教会だった。神坂家は代々神父の家系で(父は神父の職が嫌で家を出てしまった)、ずっと受け継がれてきた大事な教会だそうだ。そんな大切にしていた教会を、祖父を亡くした身体の弱い祖母が一人で、ずっと管理し続けてきたのだった。祖母は年金と教会の裏で耕していた畑で、幼い明の事を養って育ててくれていた。お世辞には裕福とは言えずに、貧しい暮らしをしていた。それでも、祖母は幼い明に対してたくさんの愛情を与えた。幼い明も祖母の事が大好きで、勉強しながらも祖母の為にいろいろと手伝った。毎日、古びた教会の掃除をしては、一生懸命に畑仕事も手伝った。  そして、祖母は幼い明に対して遠い昔話を聞かせたのだった。この世界は【人間】の他に【天使】と【悪魔】の三つの種族に分かれて一緒の世界で暮らしていた。けれどある日、人間達と悪魔達が争いを始めてしまった。天使達は中立に回り争いを止めようとした。けれども、人間達は天使達を狩って天使の羽を捥ぎ、悪魔達は天使達を捕まえて天使を身籠らせた。そんな天使達を守る為に【神】は三つの世界に分けて、それ以来、人間も天使も悪魔もお互いに干渉しなくなってしまったという遠い昔話だった。  幼い明は特に天使の話を熱心に聞いていた。天使と言うのは人間と違い、頭の上に天使の輪っかがあり、何よりも背中には純白の鳥類の羽を生やしている。天使の羽は、とても綺麗に輝いて美しいのだと言い伝えられているらしい。明はそんな天使の話を祖母から聞いた時に、一目見てみたいと幼心に思った。  慎ましやかに暮らしていたが、明と祖母の暮らしは貧しくなる一方で厳しかった。ある日、身体の弱い祖母は無理をしてしまったせいで、倒れてしまったのだった。寝たきりになった祖母を看病しながらも、明は中学を卒業してすぐに肉体労働をして働いて金を稼いだ。それでも金は足りず毎日、厳しい生活を強いられていた。そして、ついに祖母はこの世を去ってしまった。いつもの様に明が夜遅くまで働きに出掛けていた時の事だった。祖母の葬式がしめやかに行われた。  その日の夜、明は一人だけで古びた教会の中で、静かに涙を流していた。それは、悔し涙だった。大切な祖母を一人だけで家に置いてしまい、寂しい想いをさせてしまった事に対する後悔。あまりにも無力過ぎて、弱くて何も出来なかった自分に対する悔し涙。 「お金さえあれば、おばあちゃんに不自由な暮らしをさせずにすんだのに」  明は自分自身のことを一人で責めて、力無くしゃがみ込みながら静かに涙を流す。その時、誰かに背後からふわりと抱きしめられた。それは、温かくて優しい抱擁だった。ふと、明は顔を上げると雪の様に純白な鳥類の羽が見えたのだった。祖母の話で聞いていた天使の羽だと明は初めて気付いた。 (綺麗だ……)  教会の大きなステンドグラスから射し込まれる満月の光を浴びて、天使の羽はより美しく輝きを放っていた。それは、綺麗な星空が広がる夜の事だった。  そうして、人間の明は優しく抱きしめてくれた天使に恋い焦がれた。 *****  大きく成長した明は、祖母が守り続けた教会の神父になっていた。その間、金を稼ぐ為ならば、犯罪行為にならない程度の事までやって、莫大な金を稼ぎあげた。その金を使用して、古びた教会を改装して、綺麗にして管理しながら過ごし続けた。  明はあの日、悔し涙を流していた時に、そっと優しく抱きしめてくれた天使の事を、恋い焦がれた天使の事を、ずっと探し続けていた。そして、その天使を手に入れたい、自分のものだけにしてしまいたいという醜い欲望が、心の中に渦巻いたのだった。その為には、幼い頃に祖母が読み聞かせてくれた古い書物をたくさん読み漁って、天使について研究した。  とある古い書物には、遠い昔に人間が天使を狩った時に使用した魔術など、必要な情報がいろいろと記載されていた。 (これを使用すれば捕まえられる)  天使を捕らえる為の魔術を覚えて、教会の中に魔方陣を描いて待ち続けたのだった。また天使が教会に現れる日を、明はずっと待ち続けた。  そして、星空が瞬く満月の夜に、白薔薇が咲き乱れる教会に、天使は舞い降りたのだった。魔方陣のせいで捕らえられてしまい、身動きの出来ない天使の姿を明は初めて見る事が出来た。金色の柔らかな髪に、サファイアブルー色の瞳。白色のキトンを身に纏い、頭の上には天使の輪っか。そして、雪よりも白い鳥類の羽が背中に生えていた。その天使を見た瞬間、過去に優しく抱きしめてくれた天使だと、明はすぐに確信したのだった。 (やっと、見つけた)  歓喜に満ち溢れる感情を理性で抑えながら、驚きに戸惑う天使にゆっくりと近付いて、愛しそうに頬に触れて撫でる。そうして、明は恋い焦がれた天使を自分のものにする為に、天使の純潔を奪い身体を暴いた。満月の光が差し込む教会の中で、与えられた強い快楽に耐え切れずに、サファイアブルー色の瞳を閉じて、眠りに着いてしまった天使のエルを、明は愛おしそうに見つめる。服を肌蹴られて裸体になったエルの肌は白いが、所々、淫らな紅い花が咲き乱れている。エルの腹には真っ白な淫紋が刻まれていて、後孔からは注いだ欲が漏れだして卑猥に魅せた。  愛おしそうに、大事そうに横抱きしながら、明はエルを教会の傍にある自宅へ連れていく。ずっと、恋い焦がれ続けていた天使を手に入れた神父は、これからの生活に想いを馳せるのだった。

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