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第4話

この学校には3つ建物があって、1号館、2号館、3号館と順に回っていく。 1号館は1、2年生の教室があり、2号館には職員室や図書館、その他の教室が並んでいた。 3号館は3年生の教室があるみたいだ。 食堂は別の建物であるらしい。ここの食堂の親子丼が美味しいと聞いた事がある。機会があれば食べてみたい。 そんなことを思っていると、お腹がグーと鳴った。 「お腹空いたぁ。帰りどっか寄ってこうよ」 「いいね!私あれ食べたい!ファミレスのハンバーグセット!」 「あ、ハンバーグ食べたい!じゃあそれで決まり!」 いつの間にかすっかり千花ちゃんと仲良くなっていた。なんだろう、すごく話しやすいというか、親しみやすいというか。これは彼女の武器なのだろうな。 学校を出る前に千花ちゃんがトイレに行くと言うので、廊下で待っているとポンと後ろから誰かに触れられた。 びっくりして振り返ると、そこには。 「あ、ごめん。驚かせちゃったね」 「有馬、先生……!?」 「うん、今朝の子だよね。大丈夫だった?俺も急いでたから安否確認せずに行っちゃったからすごく心配で」 有馬先生が僕を心配……!なんて優しい人なのだろう。見ず知らずの僕を助けてくれて、心配までしてくれるなんて! 「だ、大丈夫でした!あの、助けて頂きありがとうございました!ちゃんとお礼が言えなかったので、僕もモヤモヤしてて……!」 「丁寧な子だなぁ。再会できたのも何かの縁だし、また困ったことがあったら言ってね。力になるからさ」 ニコッと微笑まれ、これで落ちない人はいないんじゃないか? 現に僕はノックアウトされた。 先生、素敵すぎます。 「あー!!!」 完全に先生にノックアウトされていると、甲高い叫び声が聞こえてきた。千花ちゃんがトイレから戻ってきたみたいだ。 ズンズンズンと歩いてきて、僕と有馬先生の間を割って入る。 「律だけズルい!私も先生とお話したかったのに!」 「いや、たまたま会っただけだし!」 「仲良いんだね。付き合ってるの?」 「「付き合ってません!」」 僕たちの言い合いを見て、先生がまた可笑しそうに微笑む。それには声を合わせて否定した。千花ちゃんは可愛いし、もし彼女ならって考えたらそりゃあ嬉しいけれど、僕は有馬先生がいい! 「私は有馬先生の方がタイプです!律は弱っちいから!」 「なっ!弱っちくない!」 「うん、そうだね。春海くんはもう少し肉付きが良くても良いかも。細くて折れちゃいそうだ」 弱っちい、は僕にとって禁句なのだ。 しかし、今日は許す。 だって、有馬先生が僕の手を握ってきたから! 思わず「ひぇ……」とバカみたいな声を出してしまって卒倒するかと思った。卒倒しては勿体ないと思い、しっかり足を踏ん張って耐えた。 せ、先生の手大きい……! 「ほら、俺の手と比べるとすごく細い。ちゃんと食べてる?」 「た、たべ、て、ます……」 だ、だめだ、これ以上一緒にいると無理!爆発しそう!心臓が! 「先生、私たちこれからハンバーグ食べに行くの!だからもう行くね!律、行くよー!」 「あ、そうなんだ。いいなぁ。楽しんでおいで。また明日ね」 千花ちゃんが僕を引っ張って歩き、小声で「一つ貸しね」と笑っていた。 ち、千花ちゃん……!

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