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第5話
それから千花ちゃんとハンバーグを食べて、楽しい時間を過ごして解散となった。
千花ちゃんと話すのが楽しくてつい忘れてしまっていたけど、僕には一つ悩みがあったのだった。
それは、今から会う同居人のこと。
どんな人かも分からないし、母とその人が知り合いなだけで僕は一度も会ったことがなかった。
僕は一人暮らしでもいいと言ったのに、母はどうしても心配だったらしい。
言われていたマンションの前に着いてしまった……。
うぅ、帰りたい……。
いや、これからここが僕の帰る場所になるのか……。なんか複雑だな……。
意を決して、インターホンを鳴らすと直ぐに若い男の人の声が聞こえてきた。
声は優しそうな感じで良かった。でもまだ分からないぞ。油断するなよ僕!いざとなったら逃げれるように距離を取っておこう。
「はい」
「こ、こんにち……は……!?」
中から出てきた人に心臓が飛び出るかと思った。な、なんで……!?
同居人は「やっぱりか」と苦笑いを浮かべている。
「なん、で……有馬先生……!?」
「あはは……。すっごい偶然だね」
同居人……いや、有馬先生は「とりあえず入れば?」と僕を中に入るよう施した。
いや、ちょっと待って!?僕これから有馬先生と一緒に生活するってこと!?嘘!無理!!死んじゃう!!!
「?入んないの?」
「や、心の準備が……」
「寒いから早く入って欲しいな」
「ですよね!!」
しまった、寒いのにずっとドア開けっ放しだった……!僕のバカ!さっさと入れば良かったものを!これで先生が風邪引いたらどうするんだ!!
リビングに通され、ソファに座るよう施される。暖房が効いていて暖かい。あまり物は置いていなくて、シンプルな部屋だなと思った。
「はい、温かいお茶。火傷しないように気を付けてね」
「は、はい!」
「これから一緒に暮らすのに、敬語だと堅苦しいよね。敬語は使わなくていいか。あと俺の事は先生じゃなくて『朔夜』って呼んで」
「は、……分かった、……えっと、朔夜、さん?」
距離縮まりすぎじゃない?僕明日死ぬの?だからこんなに偶然が重なってるの?
さっきから胸のドキドキが止まらないんだけど。
こんな僕が先生のこと名前で呼んじゃっていいのだろうか……!内心すっごい喜んでるけどね!でも恥ずかしいからあまり呼べないかもな……。
「なんかさ、名簿見た時からあれ?って思ってたんだ。こんな事ってあるんだね」
「いやー、ははっ……。本当にびっくり.......」
やばい、長時間(まだ数分程度だが)先生と話した事によって心臓が破裂しそうだ。
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