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第8話

夕飯を食べ終え、お風呂にも入って、今はソファに座ってテレビを見ている。あまりテレビを見た事がなかったから、最近の芸能情報には疎いのだ。友達の話題に付いていけなかったらどうしようと不安になる。 今見ているのは、タイトルは分からないが恋愛ドラマだ。しかもドロドロの三角関係。主演の女優さんも、相手役の俳優さんもさっぱり分からない。 「何見てるの? って、これ結構濃厚なシーンが多いって話題のドラマじゃん。タイトル何だっけな」 「そうなの?」 濃厚なシーンってなんだろう。濃厚?濃厚ってなに? 『濃厚なシーン』の意味が全く分からなくて特に気にしていなかったが、CMがあけると同時にテレビに映し出されたのは、ベッドの上で男女が絡み合いながらキスをしているシーンだった。 「!?」 「うわー、本当だ。これこの時間帯に放送して大丈夫なのかな」 僕は顔を真っ赤にして今にも顔から火が出そうになっているというのに、朔夜さんは平然としている。 恥ずかしくないの!?気まづくないの!?と問いたい。 こんな世界知らなくて、僕にとって衝撃だった。 すごくショックだった……。何がと問われれば何てないのだが、とにかくこれが『大人』なんだ……。 「……もう寝る……」 「そう? おやすみ」 「……おやすみ」 ショックすぎて続きはとてもじゃないけど見れなかった。と言うかもう見たくない。 僕も大人になったらあんな事をするのだろうか……。アレは何をしていたんだろう。キスは分かるが、半裸で体をクネクネさせていて……。タコみたいだった。 ベッドの上で死んだように固まっていると、ギシッとベッドが軋んだ。 「ふふ、大丈夫?」 「……うん」 「そんなに衝撃的だった?」 「……うん」 素直に答えると、クスクスと笑う声が上から降ってきた。 思いっきり笑ってんじゃん。 僕をバカにして! でも朔夜さんだから許す。 「大人になったんだよ」 「……そーかな……」 「そうだよ。きっとね」 優しく髪を梳いてくれて、その指が心地いい。僕を抱き込むように朔夜さんが寝転んだ。大きな腕の中で、胸に頭を引っ付けるようにして眠ったのだった。

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