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第9話
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大音量で鳴り響くアラームを眠気眼で止めて、再び眠りにつこうとしているとユサユサと体を揺さぶられた。
僕は一人で寝ていたはずなのに、誰が僕を揺さぶっているの? まだ眠い。止めて、と丸まって背中を向けると布団を引っペがされた。
「早く起きなよ」
「はぇ!?」
「もう7時だけど。 俺はもう行くね!朝ごはんはテーブルの上に置いてる。玄関に鍵が置いてあるから、鍵かけたら持っといて」
「は、はーい!」
そうだった……!もう一人じゃないんだ!起こしてくれる人が居る事に嬉しさを感じた。
家を出るまであと一時間はあるが余裕を持って準備したいので、この時間に起こして貰えて良かった。
眠気眼で洗面所に足を向けるが、その前に。
かっこよくスーツを着こなし、靴を履いて家を出ようとする朔夜さんのいる玄関まで行ってお見送りをする。学校に行っても会えるんだけど、学校では『有馬先生』と会うんだ。『朔夜さん』と会えるのはこの時だけ。
「お見送りしてくれるの?学校でも会えるのに」
「うん。いってらっしゃい、朔夜さん」
「ふふ。行ってきます、律」
にっこりと優しい笑みを向けられ、胸がキュンとした。パタンとドアが閉まった瞬間、はーっ!と床に崩れ落ちた。
カッコよすぎかよっ!!
寝起きの朔夜さんを見れなかったのがちょっと残念だな。
てか、僕の寝顔を見られたのだろうか……!?ヨダレ垂らしてだらしない顔で寝ているのに!?それを見られたとか恥ずかしくて死ぬ!!!
とりあえず学校へ行く準備をしないといけない。
顔を洗って、髪を整える。ちょっと寝癖付いてるけど、すぐに直るか!
用意してくれていたご飯を食べて、食器は水に付けておいた。これで合ってるのかな?
歯を磨いて、制服に着替え、リュックと体操服をもって家を出た。
「おはよー!律!」
「あ、おはよう!千花ちゃん!」
登校していると後ろから体当たりされた。この声と、こんな事する友達は一人しかいない。
昨日友達になったばかりの千花ちゃん。すっかり仲良くなって、昨日はハンバーグも食べに行ったし、もちろん連絡先も交換した。高校に入って初めての友達。
「律は歩いて来てるの?」
「うん。すぐそこのマンションだから」
「へぇ!私は電車なんだー!隣町から来てるの!」
「あ、そうなんだ!電車通学って憧れだよね。なんか大人って感じする」
「えー、そんな事ないよ?満員電車に揺られながら通学とか嫌すぎるもん」
実は僕、あまり電車に乗ったことがないのだ。ここら辺の駅ってよく分からなくて、バスがあればバスで移動する。
だから毎朝電車通学している千花ちゃんはすごいと思う。同い年なのに大人だなぁ。
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