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第11話
「話は後で聞くね。終わったらまた来るから、それまで一人で平気?」
「うん……。ごめんなさい……」
「律は悪くないだろ。悪いのはアイツらだ」
保健室に連れてこられ、ベッドの上に座らされる。保健室の先生も身体測定で居ないみたいで、僕一人だった。
有馬先生の声がいつもより低くて、怒っているんだと思う。
僕が迷惑かけたから……。あの程度で泣いてちゃダメなのかな……。弱虫って思われるのかな。だけど、本当にショックだったんだ……。
先生が保健室から出て行き、本当に一人になってしまった。静かな空間で、さっきの事を思い出してしまう。ダメだ、思い出しちゃダメ! せっかく涙も止まってきたのに!
寝たら考えなくて済む。寝ればいいんだ!
ベッドに丸まり、布団を頭まで被りこんでダンゴムシのようになる。昨日たくさん寝たから眠くないな……。それに、昨日みたいに安心して眠れない。なんでだろう。
枕が違うと寝られない人がいると聞くし、僕もそうなのかも。だけどホテルのベッドではちゃんと眠れたし、親戚の家でも眠れた。おかしいな……。
落ち着いてはきたし、暇だからスマホでも触っとこう……。なんか罪悪感がすごいけど、こうでもしないと時間潰せない。途中から参加してもいいのだが、正直戻りたくない。
しばらくネットサーフィンをしていると、チャイムが鳴った。すごく長かった。ゲームをしたりチャットアプリを見たりしていたが、どれも退屈に感じた。
廊下の方が騒がしくなってきて、終わって教室に戻っているんだと分かった。
そしていきなり保健室のドアが開いたと思えば、バタバタと走ってくる足音。
「律!大丈夫!?泣いてない!?」
「ふごっ!」
「須藤さん、走らない。少し静かにして」
思いきり僕のベッドにダイブしてきたのは当然千花ちゃん。これ病人だったら気絶してるんじゃないか?良かった、元気で。
「千花ちゃん、重いよ……」
「軽いの間違いでしょ!」
「いいから早く……」
もう、と千花ちゃんが僕の上から退いてくれた。ふぅ、軽くなった。たぶん女の子の中では軽い方なんだろうけど、僕は力もないしヒョロいから重く感じた。
僕らのやり取りを苦笑いで見つめる有馬先生。勘違いしないで欲しい!僕と千花ちゃんは友達同士なのだ!
「付き合ってるの?」
「「付き合ってません!」」
またもやその質問に、僕と千花ちゃんの声が重なった。たぶんお互いに、付き合いたいとかそういう気は一切ないと思う。男女の友情も成立するのだよ。
「律は女の子みたいな感じだし、異性として見れないって言うかー。なんか男って感じがなくて良いんだよね」
「分かる。普通に仲のいい友達だよね」
「ねー!」
僕の好きな人は、目の前にいる貴方なんですけどね。
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