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第12話
「良かった、ちょっと元気になって。須藤さん連れて来て正解だったな」
「えへへ、私の癒しパワーだね!」
「うん……。ありがとう、千花ちゃん、有馬先生」
確かにさっきまで悲しかったし、色々考えてモヤモヤしていたけど、千花ちゃんや先生とお話しているといつの間にか薄れていた。
「俺からもあいつらに注意しておいたから、もうする事はないと思うけど……」
「先生ちょー怖かったって半泣きで帰って来てたもん!」
泣きながら帰ってきたあの人達のことを思い出したのか、ぷぷっと笑いだした千花ちゃん。
泣くくらい怖いって、一体どんなだったんだろう……。優しい先生が怒るところは想像できないな。
「私たちと一緒に居れば安心だよ、きっと!女の子に囲まれてる律には近付けないもんね!」
「ご、ごめんね。気を遣わせちゃって……」
「ごめんじゃないでしょ!私も一緒に居たいから居るの!そこは、ありがとうでしょ!」
「あ、ありがとう!」
千花ちゃん、本当にありがとう。今の君はすごくかっこよく見えるよ。僕なんかよりずっとかっこよくて、強いんだな。
すっかり元気になり、千花ちゃんと二人で教室に戻る。すると、先ほどの男子生徒たちが近寄ってきて、頭を下げられた。なんだか怯えているようだったけど、先生一体どんな風に怒ったんだろうか……。
もうしない事を約束して許してあげた。
後ろに居た千花ちゃんが中指立てていることも知らずに。
「わー!律のお弁当美味しそう!」
「ほんとにね!」
本当に美味しそうだ!これ有馬先生が作ったんだぞ!いいだろう!誰かに自慢したい気持ちを抑えて笑って誤魔化しておいた。
そう言う千花ちゃんのお弁当も美味しそうじゃないか。タコさんウインナーとかも入ってるんだ。いいな、食べてみたい。
「千花ちゃんのお弁当も美味しそうだね」
「昨日の残り物と冷凍食品ばっかだよ? 律のお弁当すごく手が込んでると思うよ!卵焼きも入ってるし、何より彩りが凄くいい!誰が作ったの?お母さん?」
「え、えーと……」
言えない、先生と同居してるなんて、言えない!言ってしまうと先生にも迷惑がかかる!絶対に言わないぞ!
しかし言葉を濁す僕を怪しいと思ったのか、千花ちゃんがニヤリと笑う。
「ほーん?怪しいなー?彼女か?おぉん?」
「んな訳ないから!同居してる人に作って貰っただけ!」
先生の事は伏せて、同居人と言っておいた。千花ちゃんはそれにもびっくりして、根掘り葉掘り聞かれ、すごく疲れた。
ご飯食べたのに痩せた気がする……。
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